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「お出かけ日和」の使いかた、変わってくるかも


気象情報などでは、「お出かけ日和」「行楽日和」などのように「日和(ひより)」ということばがよく使われていました。「日和」は、穏やかな天候のことや、そのことをするのに都合のよい天候のことをさします。

「日和」の由来はやや変わっているようです。

歌人の柿本人麻呂(660頃-724頃)が、「飼飯の海の庭(にわ)好くあらし刈薦の乱れ出づ見ゆ海人の釣船」という歌を詠みました。『万葉集』巻三(二五六)に収められています。

この歌にある「庭」は「広い海原」を意味します。この「庭」に、「日和」という字が当てられ、さらに「日が和らいだ」という意味にとられ、穏やかな天候をさして「日和」とよぶようになったとされます。

「お出かけ日和」や「行楽日和」といえば、たいていの場合、最高気温が20度から25度ほどで、晴れていて、湿度がさほど高くない日のことをさして使われていました。

しかし、このところ直射日光から紫外線がからだに降りそそぐのを避けようとする人びとが多くなってきています。紫外線で肌を傷つけないようにといった美容目的が大きいのでしょう。

また、花粉症の人は、花粉が飛びやすい気候かどうかも気になるところです。花粉の飛ぶ量は一般的に、気温が上がる、雨あがりの翌日で晴れている、乾燥しているといったことなどが重なると増えるとされます。

さらに、一般的にウイルスは乾燥しているときに空気中に漂って運ばれやすいともいわれます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19:COronaVIrus Disease 2019)の流行もあって、ウイルスが広がりやすい気候かどうかにも、人びとの関心が寄せられるようになりそうです。

こうなってくると、気温が上がり、晴れていて、湿度がさほど高くないといった日は、もはや「お出かけ日和」とよびがたい状況になってきているのかもしれません。気温は上がらず、雨は降らないまでも曇りがちで、湿度は高いような日のほうが、人びとが自分の体のことをいたわらずに出かけることができるからです。

そもそも、COVID-19により不要不急のお出かけに対する自粛の雰囲気があるかぎり、気象情報などで「お出かけ日和」や「行楽日和」の出番もないのかもしれません。

参考資料
大辞林第三版「日和」
https://kotobank.jp/word/日和-613687
万葉集入門「飼飯(けひ)の海(うみ)の庭好(にはよ)くあらし刈薦(かりこも)の乱(みだ)れ出(い)づ見ゆ海人(あま)の釣船」
http://manyou.plabot.michikusa.jp/manyousyu3_256.html
New意味ブロ「日和の意味」
http://imiburo.com/kannji/2319/
エンジョイ!マガジン 2013年1月29日付「花粉が飛びやすい気象条件と、2013年の花粉飛散予測」
https://enjoy.sso.biglobe.ne.jp/archives/kafun_2013/
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