2019.10.05 Saturday
学校で「探究」めざされる
写真作者:yamauchi
一世代前、つまり30年ほど前の学校教育ではあまり聞かれなかったものの、近ごろはとても聞かれるようになったことばに「探究」があります。学校で、生徒たちが「探究」するようになることが、とてもめざされているようです。
たとえば、高校では2019年度の1年生から「総合的な探究の時間」という科目が始まりました。これは、いままでの「総合的な学習の時間」に代わるものです。
また、2022年度からは、「理数探究」や「理数探究基礎」とよばれる科目が新たに始まります。
これらの新科目を待たずとも、いまも学校では「探究」の大切さがいわれています。学校や先生のなかには、この「探究」を意識して教育や授業に臨んでいるということもあるでしょう。
一般的な「探究」の語感は、「ものごとの真相や価値などを深く考え、そして明らかにしていく」といったところでしょうか。「探って、究める」わけです。
学校の現場でめざされる「探究」は、この一般的な語感よりも、さらに細分化された多くの段階を踏んだものであるようです。たとえば、「総合的な探究の時間」では、生徒がつぎのように学んでいくことがめざされています。下記は、文部科学省の学習指導要領の解説からです。
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1 日常生活や社会に目を向けたときわきあがってくる疑問や関心に基づいて、みずから課題を見つける。
2 そこにある具体的な問題について情報を収集する。
3 その情報を整理・分析したり、知識や技能に結びつけたり、考えを出しあったりしながら問題の解決にとりくむ。
4 明らかになった考えや意見などをまとめ、表現し、そこからまた新たな課題を見つけ、さらなる問題の解決を始める。
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一般的な「探究」とのちがいとして特筆すべきは「4」の「表現し」や「新たな課題を見つけ、さらなる問題の解決を始める」の部分です。明らかにしたら、究めたらおしまいでなく、それを人に伝えること、さらに、つぎの課題発見につなげることまで求められているわけです。自分が明らかにしたことを人に伝えたくなるのも、そこから新たな謎が浮かぶのも、どちらも当然の流れといえばそうですが、文部科学省はこれらのことも明文化して、生徒におこなわせることを強調しています。
また、「理数探究」や「理数探究基礎」については、これらの科目の「基本原理」の案が、おなじく文部科学省から示されています。つぎのようなもの。
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1 さまざまな事象に対して知的好奇心をもつとともに、教科・科目の枠にとらわれない多角的、複合的な視点で事象を捉える。つまり「総合性」。
2 科学的な見方・考え方や数学的な見方・考え方を豊かな発想で活用したり、くみあわせたりする。つまり「融合性」。
3 そうしながら、探究的な学習をおこなう。これは「手立て」。
4 これらを通じて、新たな価値の創造に向けて粘りづよく挑戦する力の基礎を培う。つまり得るべきは「挑戦性やアイデア創発」の力。
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この「基本原理」からは、これまでの教科や科目ごとに区切られてきた学びからたからの脱却がめざされていることがうかがえます。また、「4」の培うべきもの、つまり「新たな価値の創造に向けて粘りづよく挑戦する力」は、よくいえば崇高な、べつのいい方をすれば高望みな理想ではないでしょうか。
生徒のなかには、こうした意味での「探究」のしかたを、自分の生き方や学び方を通して身につけている人もいるでしょう。しかし、それはごく一握りにすぎないもの。となると、学校の先生たちがいかに、生徒に「探究の型」のようなものを身につけさせるかが大切になってきそうです。
参考資料
文部科学省 2018年7月「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/28/1407196_21_1_1_1.pdf
文部科学省 教育課程部会高等学校の数学・理科にわたる 探究的科目の在り方に関する特別チーム 2016年4月13日「理数探究(仮称)に関する資料」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/060/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/12/1370460_12.pdf