体に生じる「異常」の多くは、人の感覚からいえば矛盾をともなっているものといえます。
たとえば、けがをしたり寝ちがえたりすると痛みを感じますが、多くの場合、痛みには「悪化しないよう、いまのうちに治療すべし」といった意味があります。また、風邪のとき出る高熱も、熱によって病原ウイルスのはたらきを抑えたり、白血球のはたらきをよくしたりといった意味があります。
肌にできるシミはどうでしょうか。
自分自身の美容を気づかう人は、「自分の肌に生じてはいけないもの」「ありえないもの」といった敵愾心をもつことでしょう。きれいでまっさらな肌こそが、めざすべきものだからです。
しかし、肌にシミができることにも、体の健康を保つうえでの意味があります。
肌にできるシミは、肌の表皮の底の部分あるメラノサイトとよばれる細胞のはたらきがもととなり生じるもの。メラノサイトは紫外線を浴びていると、メラニンとよばれる褐色または黒色の色素をつくりだします。
このメラニン、とくに黒色のメラニンは、紫外線から肌を守るはたらきをします。紫外線は高いエネルギーをもつため、細胞や遺伝子のつくりを壊し、がんなどを引きおこします。じつのところ、紫外線を浴びることは、血管病や骨のもろさを防ぐことにもつながるため、一長一短があると考えるべきですが、ここでは置いておきます。
表皮の底でできた黒色のメラニンは、だんだんと表皮の上のほうに押しやられていき、しまいには体の外へ排出されます。メラニンがつくられては体の外へ出ていく。このバランスがとれているうちは、シミはできません。
しかし、紫外線を浴びすぎたりすると、メラノサイトがメラニンを過剰につくりだしてしまいます。すると、つくることと出ていくことのバランスが崩れ、皮膚にシミとして残ります。
体からすれば「紫外線の悪さから自分自身を守らなきゃ」と、一生懸命メラニンをつくったわけです。しかし、その体に宿っている心はというと「げっ! やばっ! 肌にシミができてる。どーしよー……」と慌てふためいたり嘆いたりしているわけです。
もっとも、肌のシミがもとで皮膚がんが生じることもあるので、肌のシミができることのすべてが、体の健康にとってはよいこととはいえません。しかし、それにしても、体の反応と心の反応は正反対といってよいほど離ればなれです。
参考資料
テルモ体温研究所「発熱のメカニズム」
https://www.terumo-taion.jp/health/temperature/06.html#02
ハイチオール「シミができるメカニズム」
https://www.ssp.co.jp/hythiol/troublenavi/shimi/mechanism.html
2019.05.08 Wednesday
体「守らなきゃ」心「やべー!」
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