科学技術のアネクドート

これまでは「東海林」でも、買いかえ直後は「庄司」
自分の使うコンピュータを買いかえるとき、すこし気がかりになるのが「データをうまく移せるか」ではないでしょうか。

アップルのMacOSのコンピュータには、新旧の2台を線か無線でつないでデータを自動的に移す「移行アシスタント」など、いくつかのデータ移行のしかたがあります。また、マイクロソフトのWindows OSのコンピュータでも同社の「ワンドライブ」というデータ保存クラウドサービスを使うなどして、データをなかば自動的に移す方法があります。

ただし、データがそっくりそのまま移るわけではありません。そのため、古いコンピュータでいままであたりまえのようにしていた作業を、新しいコンピューターでもそのままあたりまえのようにすると、思わぬ痛い目にあうこともあります。

ひとつの例は、ひらがなの文字を漢字に換えてくれる「漢字変換」についてのものです。

近ごろの漢字変換ソフトウェアには、コンピュータの使い主の漢字変換のしかたを学習し、最適な変換候補を予測するといった技術が入っています。たとえば「きょうと」と打つ人が、よく「京都」と変換していれば「今日と」や「教徒」よりも「京都」が上にくるようになるといったもの。

しかし、データを移しかえたあとの漢字変換ソフトでは、多くの場合、その学習内容までは移されていないようです。古いコンピュータを使っていたとき、変換で上にきていた漢字の語が、新しいコンピュータではかならずしも上にくるわけではありません。

コンピュータを買いかえたという、ある人物は「こんな痛い目に遭いました」とみずからの経験を話します。

「とてもお世話になっている、東海林(しょうじ)先生という方がいましてね。『しょうじせんせい』と打てば『東海林先生』がいちばん上にきていました」

「ところが、パソコンを買いかえて、はじめて先生にメールを出したときのこと。先生からのご返事で『私は庄司ではなく、東海林ですよ』とご指摘をいただいてしまったんです」



その漢字変換ソフトでは、初期には「東海林」よりも「庄司」のほうが上にくるため、買いかえた直後のコンピュータでも「庄司」と変換されてしまったもよう。しかし、その人は「『しょうじ』と打てば『東海林』と出る」ことにあまり慣れてしまっていたため、「庄司」と変換されていたことに気づかず、東海林先生にメールを送信してしまったというわけです。

「古いコンピュータでは自動変換されていた。頭のなかでも自動変換されていた。新しいコンピュータだけは自動変換されていなかったわけです」

だれかにむけてなにかを書くときには、いつも初心に返ることができればよいもの。実際はなかなかそうもいきません。けれども、買いかえた直後のコンピュータを使うときにはとくに注意が必要といえます。
| - | 19:02 | comments(0) | trackbacks(0)
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
2425262728  
<< February 2019 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE