2019.01.20 Sunday
巻き波がほしければ海底の傾きのきつい海へ
波乗りをしたり、海で泳いだりしている人は、海岸あたりでの「波の砕けかた」にとくに関心が高いのではないでしょうか。海岸あたりの波は「磯波」ともよばれ、水深が深いところで風によって起きる「白波」と区別されます。磯波も白波も、波が砕けたとき、水に巻きこまれた空気が無数の気泡となることにより、白く見えます。
磯波は、いくつかの砕けかたを見せます。
ひとつは「崩れ砕波(さいは)」とよばれる波。これは前後対称に尖った形をしていて、前つまり海岸のほうで泡がたち、滑りおちて広がっていきます。
もうひとつは「巻き砕波」とよばれる波。よく波乗りが、波のトンネルの下をかいくぐっているようすが写真や映像で見られますが、あのような波です。波の先端は落下します。
そして「砕け寄せ波」もあります。波の前のほうが乱れて、全体的に白くなって寄せてくるような波です。
これらのうちどの波が起きるかは、「海底勾配」と「波形勾配」という二つの要素で決まるとされます。海底勾配とは、海底の傾き程度のこと。また波形勾配とは、波の険しさをあらわすもので、波長に対する波頭の高さで求められます。
海底勾配がおなじという条件では、波形勾配が大きいと「崩れ砕波」が生じ、中くらいだと「巻き砕波」となり、小さいと「砕け寄せ波」になるとされます。この傾向は、海底勾配がゆるくてもきつくても変わりません。
ただし、海底勾配がきつくなるほど、巻き砕波は生じやすくなり、その分、崩れ砕波は生じにくくなるようです。砕け寄せ波はさほど海底勾配には影響されませんが、海底勾配がほとんどないような海岸では生じにくいようです。
このことからいうと、巻き砕波のトンネルをくぐりたい波乗りは、海底勾配のきつい沿岸のある海岸に行くと、その波に出あいやすいということになります。
参考資料
大阪工業大学海岸水理研究室「波の波形」
http://www.oit.ac.jp/civil/~coast/coast/Diffract-Break.pdf
広島大学海岸工学研究室「海岸工学テキスト」
https://home.hiroshima-u.ac.jp/kiyosi/coastalEng.pdf
海の事典「波形勾配」
https://kotobank.jp/word/波形勾配-1141218
世界大百科事典「砕け寄せ波」の言及
https://kotobank.jp/word/砕け寄せ波-1304903