写真作者:ETC-USC
電気総合製造業パナソニックの社長が、(2019年)1月、米国ラスベガスで開催された家電・技術見本市で、報道各局の取材に応じ、8Kテレビの発売に前向きでない意向を伝えたとされます。
報道の見出しには、「8Kはニッチ、あまり意味はない」(朝日新聞)のように、社長が発言したであろうことばが入っています。
はじめ、この社長の発言を引いたニュースの見出しでは「あまり」が入っておらず、「8Kはニッチ、意味ないでしょ」という表現で伝えられていたようです。インターネットで「“8Kはニッチ、意味ない”」と検索すると、一次情報源のニュースの見出しが「8Kはニッチ、意味ないでしょ」となっているのが確かめられます。これをクリックすると「8Kはニッチ、あまり意味ない」という表現の見出しの記事が見られます。
見出しの「8Kはニッチ、意味ないでしょ」が、「8Kはニッチ、あまり意味はない」になったわけです。
「意味ないでしょ」と「あまり意味はない」では、意味するところが大きくちがいます。「意味ないでしょ」は「意味がない」と全否定する印象をあたえますが、「あまり意味はない」は「ちょっとは意味があるかもしれんが」という意味を残すことになるからです。
実際、パナソニックの社長が、どのように述べたのかは、動画がないためなんともいえません。「今は意味がないと考えており、様子見の状況です」と報じる媒体もありますが。
パナソニックの社長が述べた「意味」とは、なにを指しているものでしょうか。発言を詳しく載せているC-NET Japanの13日(日)付の記事を見てみると、つぎのような発言内容になっています。
「8Kは大画面で、多くの人が見られる点にメリットがあると考えています。ここにおけるパナソニックの強みは、高輝度プロジェクター。高輝度プロジェクターの8K対応をしていくことは重要視しています。東京オリンピック、パラリンピックのパブリックビューイングなどでの活用が想定され、パナソニックは、がんばる領域に位置づけています。8Kそのものは使い方によっては、いい技術になると考えています」
「一方で、8Kテレビは、パネルを買ってきて、回路をつければ製品化できますが、放送のソースが限られているなかで、そのソースだけで商売をすることはできない。今は意味がないと考えており、様子見の状況です」
つまり、8Kは、見る人にとっては「メリット」があると考えているわけです。いっぽうで、自社の製品として8Kテレビを出すことについては「今は意味がない」と考えていることがわかります。
パナソニックの社長が8Kテレビについて「意味ないでしょ」と発言したと聞くと、人によっては「テレビを8Kで見ることに意味はないのだな」と思ってしまうもの。ここに見出しのつけかたのむずかしさがあります。
なお、「8Kはニッチ、意味ないでしょ」から「8Kはニッチ、あまり意味ない」になったことで、この見出しでつづく「パナ社長がバッサリ」のバッサリ感はあまりなくなりました。
参考資料
朝日新聞 2019年1月9日付「『8Kはニッチ、あまり意味ない』パナ社長がバッサリ」
Cnet Japan 2019年1月13日付「パナソニック津賀社長が話す2030年に生き残る戦略『くらしアップデート業』がもたらすもの(前編)」
https://japan.cnet.com/article/35131214/
2019.01.13 Sunday
「意味ない」と「あまり意味ない」では意味がちがう
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