科学技術のアネクドート

「いぬ」か「けん」か、音読み・訓読みの原則も

写真作者:bryan...

動物を、地域の名まえをつけてよぶことがあります。たとえば、フィギュアスケートのアリーナ・ザキトワ選手に贈られた犬は「秋田犬」。サントリーのラグビー選手たちが神戸製鋼戦を前に食べた牛肉は「神戸牛」です(負けてしまいましたが)。

「秋田犬」の読みは「あきたけん」でしょうか、「あきたいぬ」でしょうか。「神戸牛」は「こうべぎゅう」と「こうべうし」どちらでしょうか。

2000年前後からでしょうか、世のなかの向きとしては、「犬」や「牛」を「何々いぬ」や「何々うし」と訓読みでよぶ大まかな流れがあるようです。その流れに乗ると「秋田犬」は「あきたいぬ」、「神戸牛」は「こうべうし」となります。

ただし、「何々いぬ」や「何々うし」に違和感を覚える人もいるようではあります。理由はさまざまあるようですが。

ひとつの落としどころとしては「冠する地域名が訓読みであれば、動物名も訓読み」という方法は考えられます。

たとえば、「秋田」は「秋(あき)」も「田(た)」も訓読み。よって、「犬」も「いぬ」とするほうが自然とも考えられます。「訓訓訓(くんくんくん)」というわけです。

いっぽう、「神戸」は「神(こう)」も「戸(べ)」も音読み。すると「牛」も「ぎゅう」とするほうが自然とも考えられます。よって、音読み・訓読みの原則からすると「こうべぎゅう」がふさわしいよびかたに。「こうべうし」だと、いわゆる湯桶読みになってしまいます。

この音読み・訓読みの原則からすると「柴犬」は「しばいぬ」、「土佐犬」は「とさけん」、「松阪牛」は「まつさかうし」となりそうです。近ごろの放送広告では「和豚」のことを指して「『わぶた』じゃないよ『わとん』だよ」と歌うものがありますが、これも音読み・訓読みの原則に合っています。

しかし、原則はあくまで原則。地元などで伝統的に使われてきたよびかたでよぶのがふさわしいという考えかたももちろんあります。

日本放送協会(NHK)では「地元の保存会など関係団体が用いている呼称と一般の慣用を考慮したうえで、それぞれの読み方を決めています」としています。たとえば「秋田犬」については、伝統的によばれて、保存会もよんでいる「あきたいぬ」を使っているもよう。しかし、調査で大多数の人が「あきたけん」と読むと答えたことから「あきたけん」と読んでもよいことにしたとのこと。

訓読みと音読み、どちらで読んでも、もはや誤りを指摘されるようなものではないといえます。

参考資料
デイリースポーツ 2018年12月15日付「サントリー 打倒神鋼へ神戸牛食った フッカー中村『脂の乗ったガチなヤツ』」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181215-00000021-dal-spo
NHK放送文化研究所 2001年5月1日付「『○○犬』の読み方は『〜イヌ』?『〜ケン』?」
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/079.html
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