科学技術のアネクドート

どちらも「オーケーです」の意味でも出どころは別々


メールなどの返事に「オーケーです」といった意味あいを伝えるとき、どのように伝えるでしょうか。たとえば、自分のほうからA案とB案を示して、相手から「B案のほうで進めたいのですが」とメールがきたとき、どう返事するでしょうか。

「B案で構いません」。あるいは「B案で結構です」。

こうした返事をする人はいるでしょう。

「構いません」のほうがやや愛想がなく、とくに目上の人には使うべきではないともされます。

ただ、そうした敬いの度はおいておいて「B案で構いません」でも「B案で結構です」でも、「B案でオーケーです」といった意味で伝わりはします。

そもそも、おなじ「構」の字が入っていながらも、「構わない」のほうは否定の意味の「ない」がつづくのに対し、「結構です」のほうは否定の意味の字がふくまれません。それでいて、「構わない」も「結構です」も「オーケーです」の意味になるわけです。奥ぶかい、というか複雑です。

「構いません」は、「気にかけて規制された状態になる」といった語感の「構う」を「ない」で打ちけすので、「構わない」は「私が気にかけるようなことはありませんよ。オーケーです」といった語感になりそうです。

いっぽう「結構」は、もともと漢語では、建てものを組みたてたり、文を構えたりするといった語感からきているといいます。「組み立て。構え。構成」といった意味を第一義にしている国語辞典もあります。

そして、そうした語感をもつ「結構」が、日本に入って「計画」や「準備」といった語感の名詞となったとのこと。

さらに、その「計画」や「準備」について、日本人は「立派だ」「よろしい」といった語感を抱くようになったといいます。「計画だ」が「立派だ」になったことに飛躍も感じられそうですが。

こうしたことで、「組みたて」や「構え」からはじまった「結構」が、「よろしい。オーケーです」といった語感にまでなったわけです。

おなじ「構」の字が入っていて、ともに「オーケーです」の意味で通じても、「構いません」と「結構です」はなりたちが大きくちがうのですね。

なお、深掘りすれば、「B案で結構です」という返事は、自分が出した案について「立派です」と言っているようなことになります。ことばにものすごく厳密で敏感な人は、「B案で結構です」と返事がきたら「この人、自画自賛してるわ」と反応するでしょうか……。

参考資料
デジタル大辞泉「かま・う」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/44521/meaning/m0u/
デジタル大辞泉「結構」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/68255/meaning/m0u/結構/
語源由来辞典「結構」
http://gogen-allguide.com/ke/kekkou.html
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