科学技術のアネクドート

アナウンサーも日常的に「やつ」

写真作者:Renée Johnson

ラジオやテレビの放送を聴いていると、日常的に「やつ」ということばが使われています。

「いま2枚の写真を見ていますが、右のやつは5年前に撮ったんですね」
「高価なやつが出まわっていましたが、ついにこの値段になりましたか」
「スーツはやっぱり、黒いやつを一着、もっていますよ」

このような具合です。

「やつ」は、漢字で表すと「奴」。国語辞典には、意味のひとつとして「『こと』『もの』の意をくだけていう語」とあります。放送で聞かれる「やつ」はたいてい「もの」と置きかえられそうです。

「いま2枚の写真を見ていますが、右のものは5年前に撮ったんですね」
「高価なものが出まわっていましたが、ついにこの値段になりましたか」
「スーツはやっぱり、黒いものを一着、もっていますよ」

もともと「奴」は「やつこ」、漢字を入れると「家つ子」とからきていることばで、その意味は「最下級の奴隷」「家来」「とりこ」「人などをののしっていう語」また「自分をへりくだっていう語」などとあります。これらの意味からは、「卑しい人、もの」といった語感があったとうかがえます。

そして「やつこ」が略されて「やつ」になったとも。略されたとはいえ、やはり「やつ」にも俗っぽい表現といった感覚はつきまとうものです。

放送での人びとの発することばに着目していると、「やつ」を使う人は広くいるもよう。なかでもアナウンサーが平気で使っているときもあります。もちろんニュース原稿を読むときは「やつ」でなく「もの」と書かれてあり、それを読んでいるようですが、原稿のない自由な会話では、むしろ「もの」を使うより「やつ」を使うアナウンサーのほうが多いのではないでしょうか。

なかにはアナウンサーが「やつ」を口にしている場面に遭って、「伝達の職業とする人が『やつ』を口にするとは」と不快な思いをする人もいるのかもしれません。

しかし、アナウンスの規則などで「『やつ』は使わず『もの』を使うように」などと書かれていなければ、あるいは書かれているとしても、アナウンサーでさえ多くの人が「やつ」を使っている実状があります。

それほど、「やつ」というやつは口に出しやすいことばなのでしょう。「自分は使っていない」と思っている人も、自分で気づかないだけで使っているのかもしれません。

参考資料
Yahoo!知恵袋「言葉遣いで気になっているのですが……」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1241572007
デジタル大辞泉「やつ」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/222093/meaning/m0u/やつ/
デジタル大辞泉「やつこ」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/222134/meaning/m0u/やつこ/
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