2018.07.11 Wednesday
「そんなこと言っても、しょうがないじゃないか」
写真作者:tedd okano
「近ごろの若い子たちは、何々ができなくなった」と口にする人がいます。「近ごろの若い子たちは、半田づけすることもできなくなった」「マッチで火をつけることもできなくなった」「きっぷを買うこともできなくなった」といった具合です。
こうしたことを口にする人には、「自分が若いころにはできたのに。若い子たちはこんなこともできなくなるなんて」といった思いがあるのかもしれません。
そういう発言をする人は、「そんなこと言っても、しょうがないじゃないか」といった反応にどのように応えかすでしょうか。
そんなこと言っても、しょうがないのです。半田づけできる若い人があまりいなくなったのであれば、それは社会のなかで半田づけをする機会が減ったからです。おなじように、マッチで火をつける機会や、券売機できっぷを買う機会も減ったのです。
もし「近ごろの若い子たちは……」と言っている人とおなじくらいの頻度で、若い人にもそれをする機会があるならば、半田づけや、マッチの着火や、きっぷ買いの能力で、若い人のほうが劣ってしまう根拠はあるでしょうか。
むしろ、「近ごろの若い子たち」は、そうした行為を上手におこなうための情報を手に入れて、初めておこなうときも器用にこなすかもしれません。そして、器用にその行為をくりかえせば、「近ごろの若い子たちは……」と言っている人たちに引けをとるようなこともないかもしれません。
「近ごろの若い子たちは、何々ができなくなった」という発言が、「時代は変わったものだ」とか「便利な技術が現れたものだ」といったことに感嘆してのことであれば、それは理屈に外れていません。ただし、そういうことを感嘆したいのであれば「時代は変わったね」とか「便利になったよね」とか言えばいいのです。
「近ごろの若い子たちは、何々ができなくなった」という発言が、「そうした技術はいまの若い子たちにも身につけておいてもらわないと困る」と嘆いてのことであれば、なぜ身につけておいてもらわないと困るのかを聞かれる可能性はあります。