2018.07.05 Thursday
「地方創生」は政府のとりくみ
都会に住む人が都会から離れた地域へ行ったとき、人のすくない農山村地域などに住む人が都会へ行ったとき、「自分のまちとはこんなにちがうのか」と驚く人も多いことでしょう。
都会の人からすれば、行った先の地で、電車が1日数本しか走らなかったり、20時ごろにはどの店も閉まってしまったりすることに驚くでしょう。農山村地域に住む人からすれば、行った先の地で、2、3分おきに電車がきたり、24時間営業の店がそこいらじゅうにあることに驚くでしょう。
それだけ、自分の暮らしている以外の地域のありのままのようすは感じづらいものかもしれません。では、どちらからのほうが、より“標準”と評価されているかといえば、「都会に見られるような地域のありかたが標準」と考えられている節はあるのではないでしょうか。この節は、政策でもうかがうことができます。
「地方創生」という政策があります。政府のなかでもとりわけ推しすすめている内閣官房・内閣府は、「人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生すること」としています。
「地方」は「国」の一部ですから、政府が「地方」を「創生」するというのは筋の通らない話ではありません。ただし、国が「地方創生」にとりくむとなると、地方のありかたを国が決めて、整えていくような意味あいが強くなります。「創生」とは「つくりだすこと」なので「地方創生」には、「国が、地方を、つくりだす」といった主語・述語関係があるからです。
もし、「地方」を主語、つまり、とりくみの主体とするのであれば「地方活性化」や「地方躍動」や「地方始動」といったことばになるはずです。
「政府が地方活性化を促したり支えたりする」というよりも「政府が地方創生にとりくむ」という姿勢が「地方創生」というよびかたには表れています。政府と自治体の立場関係をうかがうことができます。あるいは、政府の立場からすれば「地方の自治体がみずから活性化や躍動をとげることをなかなか期待できない」といった思いもあるのでしょうか。
参考資料
内閣官房・内閣府総合サイト「みんなで育てる地域のチカラ 地方創生」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/
首相官邸 2014年9月3日「安倍内閣総理大臣記者会見」
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0903kaiken.html
新時事用語辞典「地方創生」
https://www.weblio.jp/content/地方創生