2018.07.04 Wednesday
子どもたちの学習、「問題解き」から「問題解決」へ
写真作者:tacac0
受験戦争が激しかったころの子どもたちは、入学試験などで出される「問題を解く」ための学びをしてきました。いっぽう、いまの時代を過ごしている子どもたちは、世の中に現れうる「問題を解決する」ための学びをしているといいます。
文部科学省の初等中等教育局は、小学生の問題解決能力育成などのための有識者会議の趣旨説明で、子どもの問題解決能力を育てることの大切さをつぎのように述べています。
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とりわけ最近では、「第4次産業革命」ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会の在り方を大きく変えていくとの予測がなされているところである。教育界には、そのような社会的変化の中でも、子供たちが自信を持って自分の人生を切り拓き、よりよい社会を創り出していくことができるよう、必要な資質・能力を しっかりと育んでいくことが求められている。
そうした資質・能力として、読解力、論理的思考力、創造性、問題解決能力などは、時代を超えて常にその重要性が指摘されてきており、これからの時代においてもその重要性が変わることはない。これらに加えて、情報や情報技術を問題の発見・解決に活用していく力(情報活用能力)の重要性も高まっている。学校教育は、こうした資質・能力の育成に向けて充実を図らなければならない。
(「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成と プログラミング教育に関する有識者会議」趣旨より)
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つまり、問題解決力は、自信をもって人生を送るための糧となるし、とくにこれからの情報社会では情報や情報技術の活用をともなう重要な力となると言っているわけです。
では、学校の授業のなかで、子どもたちに問題解決力を養わせるには、どのようにすればよいのでしょうか。
小学校や中学校の教諭たちはさまざまな模索や試行錯誤をしているようです。教諭たちのなかで「問題解決学習の基本型」を示す人もいます。
たとえば、栃木県の公立中学校の教諭は、「問題把握」「問題追究」「問題解決」という過程を経て、子どもたちの問題解決力を養っていくと説いています。
「問題把握」の過程とは、子どもが疑問を見つけ、それを共通の問題にする過程だといいます。また「問題追求」の過程とは、仮設を立てたりして実験などによる試行錯誤や話しあいをくりかえす過程だといいます。そして「問題解決」の過程は、実験結果や考察などをもとに問題を解決する過程だといいます。
かんたんにいえば、「なぜ。どうして」から、「試してみよう」を経て、「こういうわけだ」を分かちあうといったことになるでしょうか。
おとなたちにおける「問題解決」は、かならずしも「なぜ。どうして」から始まるものではありません。「なんとかしなければ」という焦りや「上司からやれと言われて」という義務感から始まる問題解決もあります。しかし、試してみて、解決のしかたを得る、という過程は、おとなにとっての問題解決にも合いつうじるといえそうです。
社会を見渡せば、あっちもこっちも問題だらけですから、「こうすれば問題を解決できる」という方法を身につけておくことが、役立たないことはありません。
入試などの「問題解き」ばかりさせられておとなになった世代は、これから社会にも通用する「問題解決」の方法を身につけておとなになっていく次世代を、どう迎えるでしょうか。
参考資料
文部科学省 2016年4月19日 初等中等教育局長決定「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/__icsFiles/afieldfile/2016/05/06/1370404_1.pdf
栃木県市貝町立市貝中学校 市村政幸「理科の授業における問題解決学習の工夫」
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-kadaiscie/0504/index.htm