2018.05.19 Saturday
寺の境内に神輿
東京・浅草の界隈で「三社祭」がおこなわれています。2018年は、5月17日(木)から始まって、20日(日)の夜までくりひろげられます。
数々の神輿が街をめぐったあと雷門の前へ。それぞれの神輿のまわりでは三々五々に三本締めの乾いた音が空に響き、そして、すべての神輿で一斉に三本締め。そして、天井に上げられて傘の短くなった大提灯の下を通り、仲見世通りを進んでいきます。このまま進んで浅草寺境内へ。
こうした風景は、いかにも日本の祭という印象をあたえます。しかし、よくよく考えると、「あれ、ちょっと不思議だな」と感じる人もなかにはいるかもしれません。
浅草寺は「寺」です。ご本尊は、聖観世音菩薩。つまり観音様。仏教の世界で存在の欠かせない菩薩です。いっぽう、御輿を担いでの祭というものは、一般的に神様を奉るもの。広い意味での神話の世界での神々が主役となるはずです。
三社祭では、仏教の寺の境内で、神を奉る神輿が進んでいくわけです。
では、三社祭で奉られる神々は、どこの神々なのか。三社祭で担がれる主となる神輿は「浅草神社」に奉納されているもの。浅草神社は、浅草寺のすぐ北東にあります。
では、浅草寺と浅草神社の関係はどうなのかというと、1400年ほど前、海から漁師たちが引きあげた観音像を奉ったのが浅草寺とされます。そして、その観音像を引きあげた3人の漁師を神として建立された神社が、浅草神社であるとのこと。
「三社祭」の「三社」は、この3人の神、つまり漁師たちに由来するものとされます。
三社祭の主催者は浅草神社。しかし、浅草神社と浅草寺はほど近く、浅草寺の境内は浅草を象徴する“広場”のひとつ。浅草寺の境内に神輿を入れることなく三社祭をおこなうことは、むしろおかしなことになるのかもしれません。
しかし、浅草寺は、あくまで三社祭を“協力”する立場。「祭の場所を貸してあげている」
という見方もできます。実際、浅草寺側は、三社祭に対して、境内を出ていく「宮出し」の時刻について、早めてもらうよう要求を出しているという報道もあります。
ともあれ、「寺に神輿」の組みあわせに不思議さを感じるような人はあまりいないのかもしれません。日本人にとって、仏様と神様の区別はかなり曖昧なものです。
参考資料
浅草神社「三社祭とは」
https://www.asakusajinja.jp/sanjamatsuri/about/
ウィキペディア「浅草神社」
https://ja.wikipedia.org/wiki/浅草神社
Newsポストセブン 2018年5月16日付「浅草の三社祭が『今年で最後』の危機 浅草寺が時間と場所を制限」
https://www.news-postseven.com/archives/20180516_675056.html