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空の“車検”、年一度の更新が不要になる場合も


写真作者:rurinoshima

自動車は、定期的に検査されなければなりません。その検査のことを「車検」といい、道路運送車両法という法律で定められています。車検の結果、その自動車が保安基準に適合したときは、「車検証」という証明書があたえられます。

自動車とおなじく、航空機も乗りものです。「車検」とおなじように、検査によって安全性を保つしくみがあります。これを「耐空証明」といいます。航空機に対して、安全性のほか、騒音や発動機からの排出物にかかわる基準に適合していることを、国土交通大臣が証明するのです。耐空証明があたえられない航空機を航空に使うことはできません。これらは「航空法」という法律で定められています。

自動車の車検では、車検証の有効期限は新車登録から2、3年ほどで、それ以降は2年となっています。いっぽう、飛行機の耐空証明の有効期限は、通常は1年と定められています。

ただし、耐空証明の有効期限については例外的な措置もあります。それは、「連続式耐空証明」とよばれるもの。

過去に国土交通省は、航空機安全課長から「航空運送事業の用に供する航空機の耐空証明の有効期間について」という通達を、航空業界に向けてしています。この通達に書かれているのは、航空機とそれを使う航空会社の整備体制が一定の基準を満たせば、耐空証明の有効期間を「航空運送事業者の整備規定の適用を受けている期間」と定める、というもの。この連続式耐空証明があたえられることにより、1年に一度、更新する必要がなくなるのです。

これは航空会社にとっては意味の大きなもの。通常どおり耐空証明を得るとなると、1機につき年間3日から4日、そのために航空機を飛ばせなくなるからです。

航空会社は、航空機を使えない期間をできるだけ短くすべく、連続式耐空証明を得ようとしてきました。従来、連続式耐空証明は大手の航空会社にあたえられるものでしたが、近ごろは大手だけでなく、格安航空会社や地方都市間航空会社なども連続式耐空証明を得ることに成功しています。

連続式耐空証明を得るということは、高い安全性などが認められたことも意味します。航空会社にとっては、年一度の更新をせずに済むし、整備面などでの安全性を高らかに宣伝できるし、よいことがたくさんあるわけです。

参考資料
国土交通省航空局航空機安全課 2008年4月「航空運送事業の用に供する航空機の耐空証明の有効期間に関する通達の改正について」
http://www.mlit.go.jp/common/000014143.pdf
フジドリームエアラインズ 2018年4月6日発表「独立系リージョナルエアラインとしては日本初となる連続式耐空証明の取得について」
http://www.fujidream.co.jp/company/press/doc/180406_new.pdf
トライシー 2015年10月23日付「ピーチ、連続式耐空証明を日本の航空会社として最速で取得 毎年の更新検査不要に」
https://www.traicy.com/20151023-17
ウィキペディア「耐空証明」
https://ja.wikipedia.org/wiki/耐空証明
JAFクルマ何でも質問箱「車検の有効期間は何年ですか?」
http://qa.jaf.or.jp/car/carinspection/01.htm

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