2018.05.14 Monday
「科学ジャーナリスト賞2018」特別賞の森裕美子さん「科学コミュニケーションをする人は、まちがえているときがあるのでは」
「科学ジャーナリスト賞2018」では、「特別賞」が、「理科ハウス」の館長をつとめる森裕美子さんに贈られました。“世界一小さな科学館”の設立・運営に対してです。同賞で特別賞が贈られるのは、2015年に東京理科大学近代科学資料館代表の大石和江さんに贈られて以来、2度目のこと。
理科ハウスは、神奈川県逗子市にある私設の科学館。館長の森さんと、学芸員の山浦安曇のふたりで運営しています。贈呈式では、ふたりが壇上にあがり、スピーチと実演をしました。下記はその一部抜粋です。
山浦さんと森さん
「きょうはどうもありがとうございました」
「来週(2018年5月)16日、理科ハウスは創立10周年を迎えます。こんなよいタイミングでこの賞をいただけるのは、ほんとうにうれしいことです。理科ハウスを始めたときの目標が『10年続ける』だったので、目標が達成されてよかったなと思いましたが、この賞をいただいて『(運営を)やめるわけにはいかない。続けていかなければ』と思っています」
「理科ハウスでやっている展示を持ってきましたので、みなさんいっしょにどうぞ」
「丸い箱に、ピンポン玉が、白いのとオレンジ色のが合わせて10個、入っています。オレンジ色の球が何個あるかを当ててください」
「方法は、箱から1個とりだして、色を確認したら、箱にまた戻し、これを10回やるというものです。白いのが何回、オレンジ色のが何回出たかで、オレンジ色の球の数を予想するのです」
「ひとりだと、なかなか当たる確率がすくないものです。家族や親子など3人ぐらいでやると、ちょっと正解に近づくかなと」
「たとえば、3人でやって、つぎのような結果になったとします。Aさんは白いのが6個、オレンジは4個。Bさんは白8個、オレンジ2個。Cさんは白6個、オレンジ4個。全員あわせると白が20個で、オレンジが10個。オレンジは何個、入っていると考えたらよいですか」
「3個だと思う人、手をあげてください。では、4個だと思う人、手をあげてください。それ以外と思う人、手をあげてください……」
「私は、平均値を計算する練習いこれはいいかなと思って、『3個と答えてくれるだろう』と思ってやっていました。そうしたら、来館者の人ほとんどが『3個』とは言わないんですね。普通に計算すれば『3個』なのに。『どうして(3個ではないの)』と聞くと、『取るときに偏って取ったから』とか『(出題するのは)理科の人たちだからなにかあるにちがいない』とか、すごくいろいろな理由を言います」
「私はびっくりしました。人は、科学的なスイッチが入って科学的に答えてくれるものだと思っていましたが、ぜんぜんちがったのです。『科学的なスイッチが入るということはないのだ。科学コミュニケーションをする人は、まちがえているときがあるのでは』と自分自身、反省しました。『これはいかん。みんなの意見を聞かないと。答を先に言ってはいけない』と思ったのです」
「理科ハウスのだいたいの展示には答が書かれていません。さきに来館者の意見をどんどん聞くようにしていますが、そういう形での展示がほとんどです。科学的な考え方をいつもみんながやっているわけではないというのを、逆に私が教えてもらいました」
「(このピンポン玉の展示を)やっているときに、STAP細胞のニュースがありました。(展示を使って)『科学的な考え方とはこういうこと』と説明できたのでばっちりでした」
「理科ハウスは、お客さんとのやりとりのなかで展示が進化していきます。私たちも勉強させてもらい、変化していく、おもしろい場です」
「理科ハウス」のホームページはこちらです。
http://licahouse.com
日本科学技術ジャーナリスト会議「『科学ジャーナリスト賞2018』が決まりました」のお知らせはこちらです。
https://jastj.jp/info/20180425/
大賞、賞、特別賞それぞれの受賞者みなさん、おめでとうございます。
理科ハウスは、神奈川県逗子市にある私設の科学館。館長の森さんと、学芸員の山浦安曇のふたりで運営しています。贈呈式では、ふたりが壇上にあがり、スピーチと実演をしました。下記はその一部抜粋です。
山浦さんと森さん
「きょうはどうもありがとうございました」
「来週(2018年5月)16日、理科ハウスは創立10周年を迎えます。こんなよいタイミングでこの賞をいただけるのは、ほんとうにうれしいことです。理科ハウスを始めたときの目標が『10年続ける』だったので、目標が達成されてよかったなと思いましたが、この賞をいただいて『(運営を)やめるわけにはいかない。続けていかなければ』と思っています」
「理科ハウスでやっている展示を持ってきましたので、みなさんいっしょにどうぞ」
「丸い箱に、ピンポン玉が、白いのとオレンジ色のが合わせて10個、入っています。オレンジ色の球が何個あるかを当ててください」
「方法は、箱から1個とりだして、色を確認したら、箱にまた戻し、これを10回やるというものです。白いのが何回、オレンジ色のが何回出たかで、オレンジ色の球の数を予想するのです」
「ひとりだと、なかなか当たる確率がすくないものです。家族や親子など3人ぐらいでやると、ちょっと正解に近づくかなと」
「たとえば、3人でやって、つぎのような結果になったとします。Aさんは白いのが6個、オレンジは4個。Bさんは白8個、オレンジ2個。Cさんは白6個、オレンジ4個。全員あわせると白が20個で、オレンジが10個。オレンジは何個、入っていると考えたらよいですか」
「3個だと思う人、手をあげてください。では、4個だと思う人、手をあげてください。それ以外と思う人、手をあげてください……」
「私は、平均値を計算する練習いこれはいいかなと思って、『3個と答えてくれるだろう』と思ってやっていました。そうしたら、来館者の人ほとんどが『3個』とは言わないんですね。普通に計算すれば『3個』なのに。『どうして(3個ではないの)』と聞くと、『取るときに偏って取ったから』とか『(出題するのは)理科の人たちだからなにかあるにちがいない』とか、すごくいろいろな理由を言います」
「私はびっくりしました。人は、科学的なスイッチが入って科学的に答えてくれるものだと思っていましたが、ぜんぜんちがったのです。『科学的なスイッチが入るということはないのだ。科学コミュニケーションをする人は、まちがえているときがあるのでは』と自分自身、反省しました。『これはいかん。みんなの意見を聞かないと。答を先に言ってはいけない』と思ったのです」
「理科ハウスのだいたいの展示には答が書かれていません。さきに来館者の意見をどんどん聞くようにしていますが、そういう形での展示がほとんどです。科学的な考え方をいつもみんながやっているわけではないというのを、逆に私が教えてもらいました」
「(このピンポン玉の展示を)やっているときに、STAP細胞のニュースがありました。(展示を使って)『科学的な考え方とはこういうこと』と説明できたのでばっちりでした」
「理科ハウスは、お客さんとのやりとりのなかで展示が進化していきます。私たちも勉強させてもらい、変化していく、おもしろい場です」
「理科ハウス」のホームページはこちらです。
http://licahouse.com
日本科学技術ジャーナリスト会議「『科学ジャーナリスト賞2018』が決まりました」のお知らせはこちらです。
https://jastj.jp/info/20180425/
大賞、賞、特別賞それぞれの受賞者みなさん、おめでとうございます。