2018.05.12 Saturday
「科学ジャーナリスト賞2018」川端裕人さん「アジアの人類進化、だれも書いたことがないから書いた」
日本科学技術ジャーナリスト会議主催の「科学ジャーナリスト賞2018」では、「賞」が、きのう(2018年)5月11日(金)付のこのブログで紹介した佐々木芽生さんのほか、文筆家の川端裕人さんに贈られました。川端さんが講談社ブルーバックスから上梓した著書『我々はなぜ我々だけなのか』に対してです。
この本は、アジアの人類に光を当てて、「我々」サピエンスだけが残った理由や経緯などに迫るもの。国立科学博物館人類研究部に所属する海部陽介さんが監修をつとめています。
下記は川端さんのスピーチの一部抜粋です。
川端裕人さん
「このたびは栄えある賞をいただき、戸惑いつつも大いに感動しています。プロの書き手として評価されたのは、かれこれ20何年(のキャリア)でたぶん初めてとなります。ありがとうございます」
「今回、監修の海部陽介さんと密に連絡をとりあってきたこともあり、僕のなかではこの本は『海部さん本』でした」
「僕の(著者としての)名前で、海部さんから聞いたというかたちで本として出ることは、日本ではめずらしくあります。僕の知っているサイエンスライターには、ゴーストライターが数々います。宇宙本などのハードなサイエンス本を出している有名な先生の下で、専門的な原稿を書いている人がけっこういます。聞き書きで書いているわけです」
「たとえば、田中太郎さんがライターだとして、『田中太郎“フィーチャリング”アルバート・アインシュタイン』といった著者名の本が出たら、みなさんどう感じるでしょうか。実際、よく売れる本のつくりかたの7割はそのようなつくりかでされています。『なんであの(ライターの)人の名前が出ないのか。実力者なのに』という人の顔が何人か浮かびます。そうしたことをなんとかするような環境は、こういうことから始まるのかなと思います」
「僕がこの本を書けたのは、海部さんが忙しかったからだろうと思います。海部さんの活動をすべて知っている人は極めてすくなく、僕は割と知っているほうですが、それでもまだ発見することが多々あります」
「(僕は)サイエンス・ジャーナリズムはやがて溶けてなくなればいい、つまり(サイエンス・ジャーナリズムが)特別なことでではないと思う人が増えればいいと思っていますが、海部さんはそれを体現するようなことをしており、壁を崩しつつあります。日本では、考古学と人類学は、かたや理系、かたや文系でトレーニングされた人が別々に学のルートをつくってきました」
「海部さんは、考古学者たちと人類学者たちがいっしょになってものごとをやるようなしくみを大きくつくっています。そういうエキサイティングなことを考えている人に取材させていただきました」
「今回は、アジアの人類進化というテーマにフォーカスして書かせていただきました。いまだにだれも書いたことがないからです。アジアの猿人、たとえば21世紀になってから見つかった『ホビット』つまりフローレス原人などについて、いちばんよく知っている人が日本にいたりするのです。そういうところからの情報がまとまっていない状況がありました」
「僕は『ナショナルジオグラフィック』でインタビュー記事を連載していますが、海部さんと何度かお会いするうちに『おもしろいネタがある。川端さん、書きませんか』と言われました。そう言われたら書くではないですか。幸運な仕事をさせていただきました」
講談社による『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』の紹介ページはこちらです。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784065020371
この本は、アジアの人類に光を当てて、「我々」サピエンスだけが残った理由や経緯などに迫るもの。国立科学博物館人類研究部に所属する海部陽介さんが監修をつとめています。
下記は川端さんのスピーチの一部抜粋です。
川端裕人さん
「このたびは栄えある賞をいただき、戸惑いつつも大いに感動しています。プロの書き手として評価されたのは、かれこれ20何年(のキャリア)でたぶん初めてとなります。ありがとうございます」
「今回、監修の海部陽介さんと密に連絡をとりあってきたこともあり、僕のなかではこの本は『海部さん本』でした」
「僕の(著者としての)名前で、海部さんから聞いたというかたちで本として出ることは、日本ではめずらしくあります。僕の知っているサイエンスライターには、ゴーストライターが数々います。宇宙本などのハードなサイエンス本を出している有名な先生の下で、専門的な原稿を書いている人がけっこういます。聞き書きで書いているわけです」
「たとえば、田中太郎さんがライターだとして、『田中太郎“フィーチャリング”アルバート・アインシュタイン』といった著者名の本が出たら、みなさんどう感じるでしょうか。実際、よく売れる本のつくりかたの7割はそのようなつくりかでされています。『なんであの(ライターの)人の名前が出ないのか。実力者なのに』という人の顔が何人か浮かびます。そうしたことをなんとかするような環境は、こういうことから始まるのかなと思います」
「僕がこの本を書けたのは、海部さんが忙しかったからだろうと思います。海部さんの活動をすべて知っている人は極めてすくなく、僕は割と知っているほうですが、それでもまだ発見することが多々あります」
「(僕は)サイエンス・ジャーナリズムはやがて溶けてなくなればいい、つまり(サイエンス・ジャーナリズムが)特別なことでではないと思う人が増えればいいと思っていますが、海部さんはそれを体現するようなことをしており、壁を崩しつつあります。日本では、考古学と人類学は、かたや理系、かたや文系でトレーニングされた人が別々に学のルートをつくってきました」
「海部さんは、考古学者たちと人類学者たちがいっしょになってものごとをやるようなしくみを大きくつくっています。そういうエキサイティングなことを考えている人に取材させていただきました」
「今回は、アジアの人類進化というテーマにフォーカスして書かせていただきました。いまだにだれも書いたことがないからです。アジアの猿人、たとえば21世紀になってから見つかった『ホビット』つまりフローレス原人などについて、いちばんよく知っている人が日本にいたりするのです。そういうところからの情報がまとまっていない状況がありました」
「僕は『ナショナルジオグラフィック』でインタビュー記事を連載していますが、海部さんと何度かお会いするうちに『おもしろいネタがある。川端さん、書きませんか』と言われました。そう言われたら書くではないですか。幸運な仕事をさせていただきました」
講談社による『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』の紹介ページはこちらです。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784065020371