科学技術のアネクドート

「科学ジャーナリスト賞2018」佐々木芽生さん「正義の反対は悪ではなく、べつの正義」
「科学ジャーナリスト賞2018」では、「賞」が、ドキュメンタリー映画監督・プロデューサーの佐々木芽生(めぐみ)さんに贈られました。集英社から出版した著書『おクジラさま ふたつの正義の物語』に対してです。

『おクジラさま』は、2017年8月に出版されました。ほぼ時をおなじくして、佐々木さんが監督をつとめた同題のドキュメンタリー映画が2017年9月から全国で公開されました。佐々木さんは、映画を作るとともに本を作ったわけです。

佐々木さんは米国在住ながら、この期に来日して賞の贈呈式にのぞんだとのこと。下記は佐々木さんのスピーチの一部抜粋です。


佐々木芽生さん

「名誉あるしょうをいただき、心から感動しています」

「私にとって、映画は3本目、書籍は初の書きおろしでした。この本を書きあげられないんじゃないか。途中で苦しくて逃げようか。消えてしまいたいというくらい辛い思いをしました。しかし、(編集担当の)集英社クリエティブの(聡平)さんはじめ、みなさんに支えてくださり、辛抱強く我慢強くおつきあいくださったので完成して、たいへんな賞をいただくことができました。ありがとうございます」

「書籍のお話をいただいたのは2015年でした。映画(の「おクジラさま」)の制作中でした。2010年には映画『ザ・コーヴ』が発表されました。私は米国に30年住んでいて、議論をよぶ映画にはかならず賛否両論があるのに、捕鯨問題のテーマだけは捕鯨反対の意見しか出ません。この映画を観たときはあまりに衝撃的で、『このままではまずいのでは』となりました。喉に突き刺さる魚の小骨のようにずっと気になっていたテーマでしたが、『ザ・コーヴ』を見たとき、この『おクジラさま』を作る決意をしました」

「クラウドファンディングで資金集めをしていましたが、いろいろなニュースにとりあげていただき、そのとき森山さんが映画のことを知ってくださり、『書籍にしてみませんか』とメールを頂戴しました。映画だけでもたいへんだたので、書籍なんてとんでもないからお断りしようと思って集英社に向かいましたが、みなさんに説得していただき、(集英社を)出るときは『書きます』と返事してしまいました」

「取材を始めたころは、怒りでいっぱいで、『ザ・コーヴ』や反捕鯨に反論してやるという気持ちがありましたが、取材をして映画で6年、書籍を入れて7年、『これはちょっとちがうんじゃないか』と考えるようになりました。どっちが正しくて、どっちがまちがっているという問題ではない。正義の反対は悪ではなく、べつの正義である、と。それぞれの正義をうち負かそうとするのではなく、嫌いながらも共存していかなければならない。排除するのでなく共存するという考え方が大事なのではということを『おクジラさま』から学ばせていただきました」

「科学では割りきれないのではないかというメッセージなのに、科学ジャーナリスト賞をいただき光栄に思っています。ありがとうございました」

佐々木さんの著書『おクジラさま ふたつの正義の物語』の集英社による紹介ページはこちらです。
http://gakugei.shueisha.co.jp/kikan/978-4-08-781608-2.html

映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」の公式サイトはこちらです。
http://okujirasama.com
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