科学技術のアネクドート

Cc:で「公開質問」、Cc:で「援護射撃願望」


いまに始まったことではありませんが、「カーボン・コピー欄」(Cc:)に多くの宛先が入ったメールというものは巷でよく存在するものです。メールを発信する人が、カーボン・コピー欄に多くの人の宛先を入れることには、どのような理由や心理があるのでしょうか。

まず、「多くの人に伝える必要があるから」という理由があることは、認めなければなりますまい。たとえば、上司から「私にメールするときは部署全員にCcで送っておくように」と言われた部下は、それをしなければなりません。1人の上司に10人の部下がいる部署であれば、カーボン・コピー欄には自分以外の9人を入れることになります。

上司から言われたからということだけでなく、たとえば同窓会の案内などでも、把握しているかぎりの名前を入れておく必要があります。カーボン・コピー欄でなく、ブラインド・カーボン・コピー欄を使う人もいますが……。

しかし、必要があるから、という理由だけではありますまい。

カーボン・コピー欄に多くの人の名前を入れることで、相手からの返事を促そうとしている人はいるのではないでしょうか。たとえば、なかなか返事をよこさない相手にメールで「本件どうなりましたか」と催促するとき、Ccの欄に相手の上司のアドレスを入れておけば、相手にとっては「上司に知られてしまった」ということになるから、早く返事をよこすだろうと期待するわけです。表現は悪いものの、いわば「ちくり」や「公開質問」のようなものです。

また、得意先に返事をするとき、カーボン・コピー欄に、自分の味方だと思っている自分のチームの関係者のアドレスを入れておくことで、その味方を巻きこもうと、意識的にか無意識的にか、考えている人もいるようです。後日、カーボン・コピー欄に入れた人物に、電話などで「先日、Ccで共有させていただいた件ですが、誰々さんも同席しませんか」などともちかけるわけです。いわば「援護射撃願望」のあらわれのようなものです。

しかし、自分がカーボン・コピー欄に名前を入れて「みなさんに読んでくれているだろう」と期待してるほど、カーボン・コピー欄に名前が入った人はそのメールを読まないものではないでしょうか。あるもの書きの人は「Ccの数が多いほど、Ccで受信した人がそのメールを読むことはすくなくなる」と言います。

日本の会社について外国人に「ここが変」と思われていることをまとめた新書では、タイ人の女性が「メールにCCが多いのは和の精神でしょうか」と疑問を呈したといいます。たしかに「情報をみんなで共有したい」という、ある種の和の精神もあるのでしょうが、上にあるような「公開質問」や「都合のよい援護射撃」を目的とした意味あいのほうが大きいのではないでしょうか。

参考資料
ダ・ヴィンチニュース 2013年12月24日付「『日本はCCメールが多すぎる!』外国人が感じる“日本企業の弱点”」
https://ddnavi.com/news/176461/a/
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