科学技術のアネクドート

蹴伸びで水の抵抗をすくなく


運動競技やその練習では「抵抗をすくなくする」ことが大切になる場面が多くあります。抵抗とは、運動している体に対し、運動と反対の方向に作用する力のこと。

体が受ける抵抗がすくないほど、その人は素早く動けるようになります。素早く動くというのは、ほぼすべての運動競技で利にかなうものなので、抵抗をすくなくすることは、基本的に大切なわけです。

水泳は、陸上の競技とちがって、空気でなく水の抵抗を受ける競技です。水の抵抗は空気の抵抗の10倍から40倍あるとされるため、とくに泳者は水の抵抗をできるだけすくなくして前に進むことが求められるわけです。

そこで、練習の「定石」となっているのが「蹴伸び」です。プールの側面を両脚で蹴り、両腕を前のほうに伸ばして、前へと進む動作をさします。かんたんにいえば、体のかたちを「一文字」にするわけです。すると、体のなかで水の抵抗を受ける部分が減ることに。

蹴伸びの姿勢には、いくつかの要点があるといわれています。

まず、耳と腕をぴたりとつけること。肘が曲がると水の抵抗を受けやすくなるため、それを避ける姿勢が耳と腕をつけるということになります。腕が耳のうしろにきているくらいがよいという解説もあります。

つぎに、みぞおちを意識すること。すると、足が浮いてくるのだそう。これも、体を一文字にすることにプラスとなります。

蹴伸びの姿勢を体感して、自分の体に覚えさせるには、陸上での練習がものをいうともいいます。立ったまま両手を天井に向けて上げ、背中などの体の裏側を壁にできるだけぴたりとつけます。この姿勢を直角に倒せば、水中での蹴伸びの姿勢になります。

水の抵抗に逆らわないために、自分の体の姿勢をふだんはしないくらい不自然に真一文字にするというのは、すこし矛盾めいたものように感じられます。しかし、自分の体の姿勢を水の流れに合わせるという点では、蹴伸びは理にかなった動作といえます。

参考資料
合屋十四秋「水泳の基本動作『けのび』の巧拙と習熟過程に関するバイオメカニクス的研究」
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/3/30918/201410161801006018/diss_otsu4065.pdf
兵庫県健康財団「水中運動」
http://www.kenkozaidan.or.jp/health/2010/07/post-52.html
Place for the Fun of Sports「ストリームラインを作るための4つのポイント」
http://lapulem.jp/ストリームラインを作るための4つのポイント/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< May 2018 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで (JUGEMレビュー »)
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
数学の大難問「フェルマーの最終定理」が世に出されてから解決にいたるまでの350年。数々の数学者の激闘を追ったノンフィクション。
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
amazon.co.jp
Billboard by Google
モバイル
qrcode
PROFILE