科学技術のアネクドート

「本家 → 専門家たち → 本家」の手順で集団学習

写真作者:ben.gallagher

一人でなく、人が集まってみんなで学ぼうとすることがあります。学校での学びはその典型例といえましょう。そこでは、みんなが集まっているからこその学びの方法も考えられているようです。

1971年に米国の心理学者エリオット・アロンソ(1932-)は「ジグソー法」とよばれる集団での学習法を編みだしました。この方法は、端的にいうとつぎのようなものです。

ふたつの集団を用意する。まず、ひとつは「本家」としてまとめられる集団。たとえば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの4人で構成されるものとする。全体で16人いるときは、「本家」の集団はこの場合、4組あることになる。

「本家」の構成員でなにかを学ぶとして、全体のなかの学ぶ部分を、この4人で分担する。AさんはA’の部分を学ぶ、BさんはB’の部分、CさんはC’の部分、DさんはD’の部分、といった具合に。

いったん、「本家」の集団は離ればなれになり、もうひとつの集団である「専門家たち」の集団へと向かう(実際は部屋のなかで席替えをする)。「専門家たち」集団は、ほかの「本家」集団で、A’の部分を学ぶことを担当する人たち、B’の担当の人たち、C’の担当の人たち、D’の担当の人たちからなる集団。

ここで、たとえばAさんは、ほかのA’の部分を学ぶことを担当する人たちとともに、A’の部分のことについて情報を交換するなどして学びを深めていく。おなじようにBさんもCさんもDさんも、それぞれの担当の部分の学びを深めていく。

「専門家たち」集団による学びが終わったら、ふたたび「本家」の集団に戻る。そして、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがそれぞれ「専門家たち」集団で学んできたことを「本家」のほかの人たちに伝えていく。

このようなものです。どうでしょうか。

ジグソー法で学ぶ人たちにとっては、学ぶ対象の全体像を理解することが目的となります。しかし、学びを課す教育側の人たちにとっては、みんなで学ぶにあたり、協力することの大切さを身につけてもらうといったことが、ジグソー法での目的となるといいます。

たしかに、「本家」の集団で、A’の部分を学ぶのはAさんのみ。Aさんは、責任をもって「専門家たち」集団から情報を仕入れてこなければと考えることでしょう。聞こうとする姿勢が養われるわけです。

また、その裏かえしに、Aさんは、ほかのBさん、Cさん、Dさんから、頼られることになります。「本家」集団の学びのために自分が役に立てたという達成感や自尊心を得ることもできそうです。

ジグソー法は、みんなでジグソーパズルを解いて全体像を浮かびあがらせるような作業であることから、こう名づけられたといいます。学校の授業や企業の研修などでは、実際にジグソー法を採りいれた学びがおこなわれてもいるようです。

参考資料
熊本大学 基盤的教育論「ジグソー法」
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/3Block/10/10-3_text.html
友野清文「ジグソー法の背景と思想」
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170730224230.pdf?id=ART0010444625
白岡市立南中学校校長室通信 第9号「すばる小集団学習のすすめ」
https://www.fureai-cloud.jp/minamij/attach/get2/174/0
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