2018.03.17 Saturday
「約束の日時よりも前に催促」の背景に信頼のなさ
写真作者:Clemson
きのう(2018年)3月16日(金)のこのブログの記事「“頼む・請けおう”の関係で『締めきり』はねじれ気味」は、仕事上の「締めきり」について、締めきりを設定するのは頼む側なのに、ことばどおりの「締めきる」という行為をしてもなんの得もないという話でした。
頼む側にとって「締めきる」ことに意味がなくても、仕事を頼んだ先の相手に対して「約束した日時までに納品させる」ことはとても重要なこととなります。約束の日時までに納品されないと、その後の予定がくるってしまうからです。
頼む側と請けおう側で、「何月何日何時までに納品してください」「はい、わかりました」と約束するとします。約束がなされたからには、請けおう側は、その「何月何日」までに納品をすることが必達事項となります。この約束からすれば、請けおった側は、その「何月何日何時」までに納品するものを用意して納品しなければならないし、納品するはずです。
しかし、こうした約束がなされたにもかかわらず、約束した日時よりも前の段階で、頼んだ側が請けおった側に対して、約束を果たさせることを強化するような行動をとることがあります。
たとえば、納品の約束日時の1週間前に、頼んだ側がつぎのような連絡をすることもあるみたいです。
「納品日が迫ってきましたが、いまの進み具合を知らせてください」
「用意ができたところから、提出していただけますか」
「できているところまでで結構ですので、送ってもらえますか」
「何月何日何時までに納品する」という約束のほか、「納品1週間前に進捗状況を報告する」とか「用意できた部分から順次、納品する」とか「納品前のある段階でできているところまでまず送る」とかいった約束もなされていれば、当然、請けおった側はその約束を果たさなければなりますまい。
しかし、そのような約束がなされていないのであれば、請けおった側は「そんな約束はしていませんよね」と、突っぱねることはできます。そういう態度をとって、つぎにまた仕事がくるかどうかはべつとして。
約束がなされた日時までに、納品が果たされれば、その約束は果たされたことになります。それにもかかわらず、その「何月何日何時」がくる前に、納品にかかわる連絡、いってしまえば催促がなされ、当初の約束とは異なる頼みごとが生じることがあるわけです。
たしかに、まだ約束の日時になっていないとしても、納品がなされていなければ、頼んだ側としては不安に思うのでしょう。「ちゃんと約束の日時までに納品されるのだろうか」と。だから、催促のような行動をとるのかもしれません。
では、なぜ頼む側は、請けおう側に「ちゃんと納品されるのだろうか」といった心配をするのでしょうか。
これは、請けおう側が信頼されていないからにほかなりますまい。「約束の日時までに絶対に納品される」と信じていれば、すくなくとも催促めいた連絡がされることはないでしょう。
では、なぜ、請けおう側が信頼されていないのでしょうか。
これはひとえに、これまでの社会で、請けおう側が約束の日時までに納品をしなかったという事例が数多くあったからではないでしょうか。たとえば、もの書きについていえば、「締めきり日時までに原稿を出さないことが多い」という通念が社会に広まってしまっているわけです。
「私はきちんと約束の日時までに納品をしているのに」と言いはれる人にとっては、せめて自分がそれをつづけることが、「ちゃんと納品されるのだろうか」と思われないためにとりつづけるささやかな手だてとなります。