画像作者:Mike Goad
10億分の1グラムで1個とすると、60キログラムで60兆個――ヒトの細胞の個数を求める(1)
英国に本部を置く「ヒト生物学会」(Society for Study of Human Biology)が2013年7月12日に発行した『ヒト生物学紀要』(Annals of Human Biology)に、「人体の細胞数の推定」(An estimation of the number of cells in the human body)という論文が掲載されました。筆頭著者は、イタリアのボローニャ大学の実験・診断・専門医学部に所属するエヴァ・ビアンコーニです。
リサーチゲートというサイトの情報によると、ビアンコーニの専攻は、生命情報学、分子生物学、遺伝学となっています。また、この論文にはビアンコーニのほかに11人の共同執筆者がいます。
論文には、冒頭に内容の要約がついています。多くの論文では要約は1段落ほどの文になっていますが、この論文では「背景」「目的」「結果」「結論」がそれぞれ端的に書かれています。要約の部分のみを訳します。
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背景
すべての生物は個々の識別できる細胞で構成されており、その細胞数は、大きさや種類によるが、組織の構造や機能を決めるおおもととなっている。下等生物の総細胞数はよく知られているものの、高等生物の総細胞数はまだはっきりと定められていない。とくに、報告されているヒトの総細胞数の範囲は、10の12乗個から10の16乗個までにわたり、明確な出典もなく流布されているものである。
目的
標準的な大人のヒトの体を構成する細胞総数を理論的に研究し、議論すること。
対象と方法
ヒトの体と組織の細胞総数の体系的計算が、書誌学的かつまた数学的な方法でおこなわれた。
結果
ヒトの細胞総数の現時点での見積もりが、体のさまざまな組織と細胞の種類について計算されて出た。個々のデータを合計すると、3.72×10の13乗個という総数になった。
結論
個々の器官と同様、ヒトの体の細胞総数を知ることは、文化的に、生物学的に、医学的に、そして比較モデリングの観点からして重要である。提示した細胞の数えあげは、全計算を完了する共通努力に向けての出発点となりうるものだ。
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ビアンコーニらは「結論」で、ヒトの総細胞数を数えあげたことは「出発点」(starting point)であるとし、断定するような表現をしていません。しかし、いっぽうで「結果」では、「3.72×10の13乗個」つまり「37兆2000億個」という具体的な個数を示しています。
「書誌学的かつまた数学的な方法」とはどのような方法でしょうか。論文の中身を見ていきます。つづく。
参考資料
Eva Bianconi et al. “An estimation of the number of cells in the human body”
https://www.researchgate.net/publication/248399628_An_estimation_of_the_number_of_cells_in_the_human_body
ResearchGate「Eva Bianconi」
https://www.researchgate.net/profile/Eva_Bianconi
2018.01.23 Tuesday
書誌学的かつまた数学的な計算法から、3.72×10の13乗個――ヒトの細胞の個数を求める(2)
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