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中学・高校のすべての主要教科が理系進路に深く関わる


中学校や高校での教科には、国語、数学、理科、社会、英語があります。これらは「主要教科」ともよばれ、授業の数も多め。中学生や高校生のなかには、「どうして、これらを習わなければならないの」と、ピンとこないまま授業を受けている人、あるいはそんなことを考えるまでもなく授業を受けている人もいるかもしれません。

とくに、高校卒業後、理系の路へと進むことを考えると、これら主要教科のすべてが、直接的あるいは間接的に役立つものとなります。大学で卒業研究にとりくんだり、さらにその先、就職先での理系職に就いたり、あるいは大学院で研究を続けたりするするうえで、どの教科もなにかしらの形で活かされるわけです。

まず、数学と理科は、大学以降の理系の学びや仕事を、直接的に支えることになる教科といえます。

数学については、大学以降の理学、工学、医学、薬学、農学といった理系のあらゆる分野で使われる場面が出てきます。もちろん分野によって使われる数学の中身はちがってきます。しかし、高校までの数学は、数学全体のなかでは基礎的な部分なので、中学・高校で学ぶ内容の多くが、大学以降でも活かされると考えてよいでしょう。

理科については、高校では物理、化学、生物、地学の科目があり、理系コースでは2教科以上を習うことになるのではないでしょうか。その後、大学で物理学を研究する学部に進めば、当然、高校物理の知識は活かされますし、化学でも化学が、医学や生命科学でも生物が、地球科学でも地学が活かされます。加えて、大学には「物理化学」「生物化学」「生物物理学」「地球物理学」「地球化学」のような、高校での科目をまたぐような名前の講義や研究分野があります。高校で選んだ複数の科目が、大学以降に活きてくることは大いにあるわけです。

間接的ながら、国語で学ぶことも大学以降の学びや仕事でとても重要となります。研究したことを発表するにしても、知りたい情報を得るにしても、言語を介してすることになります。「この資料はどういう展開がなされているのか」「著者の伝えたかったことはなにか」。高校の国語を深く学んでおけばおくほど、自分がものごとを伝えたり、自分がものごとを受けとったりするとき活きてくるでしょう。この点では、古典や漢文より、現代文のほうが重要になりますが。

おなじように英語も重要です。論文に載っている知識を得ようとするとき、日本語の論文だけでなく、英語の論文まで読みあさることができれば、得たい知識にたどりつく確率は高まります。また、学会などでは研究成果が英語で発表されることもあります。研究の段階が進めば、自分が論文を書いたり、学会で発表したりするときにも「英語で」という条件があたりまえのようになってきます。高校までの英語で習うことが、かならずしも理系の研究をするときの英語での意思疎通に対応しているわけではないものの、“無駄になることが確実な内容”はなさそうです。

社会という教科は、主要教科のなかではもっとも理系の学び、研究、仕事から遠い存在に思われがちかもしれません。しかし、多くの理系の研究は、時代が進むにつれて、社会との結びつきが重視されてきています。「研究を進めるうえで守るべき法律にはどのようなものがあり、どういう経緯でそれがつくられたのか」「研究者は研究に必要なお金を、どういうしくみのなかで得ているのか」「外国の研究者が、日本人には考えにくいような研究に突き進むことには、どういう国民性があるのか」。そうした、研究にかかわる「背景」の多くを、社会という教科で得ておくことができます。

主要教科に入らなくても、「情報」という教科は、理系の情報工学系の分野には直結するし、授業でパーソナルコンピュータに触れておくことは、大学以降でレポートや論文を書いたりという点で役立つことでしょう。

ひとつひとつの教科は、すべて大学以降の、とくに理系での学び、研究、その後の仕事に深くかかわっているものと考えることができます。また、そう考えて中学校や高校の授業にのぞむほうが、実のある時間を過ごせることになります。
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