科学技術のアネクドート

工学部や理工学部のある大学に機械工作室


工学部や理工学部、あるいは理学部をもっている大学には、「機械工作室」とよばれる共用の部屋が設けられているところがあります。

大学によって異なりますが、回転させているものに刃を当てて前後左右に動かし、もの切削するための「旋盤」、フライスとよばれる切削工具を回転させて、テーブルを動かしてものを切削するための「フライス盤」、コンピュータ制御によりさまざまな加工を自動でおこなう「マシニングセンター」、金属などの材料の一部を溶かして継ぎあわせるための「溶接機」などの工作機械が置かれているところが多いようです。

大学が機械工作室を設ける目的はおもにふたつあるようです。

ひとつは、研究に必要な道具や装置を自分たちでつくるため。いまは事情がすこしちがうかもしれませんが、昔は道具や装置をそうかんたんには手に入れにくかった時代。そこで、自分たちで道具や装置をつくって、それを使おうとしたわけです。いまも、市販品ではしっくりこない、あるいは特注するのがむずかしいといった道具や装置をつくることがあります。

機械工作室には、工作を担当する職員が詰めており、大学内の研究者から「こういうものをつくってほしい」と要望を受けると、それに従って道具や装置をつくります。工作が得意な工学部の教授たちには、自分自身で道具や装置をつくってしまう人もいることでしょう。

もうひとつの目的は、学生への教育です。工学部の本分は「ものづくりを実現すること」にあるといわれます。しかしながら、今日日、大学生世代が自分で工作をするといったことは、昔にくらべて減りました。学生がみずから工作をすることで、材料の種類による性状の変化などを実感を伴って体験することができます。

ただし、昔にくらべて「工作実習」を課している大学の工学部は減ってきているともいいます。インターネットで検索したところ、工学部で工作実習がおこなわれているのは、富山大学の機械知能システム工学科など、兵庫県立大学の機械・材料工学科、東京理科大学の機械工学科、大阪産業大学の機械工学科、東海大学の機械システム工学科、近畿大学の機械工学科、東京都市大学の機械システム工学科などなど。やはり、「機械」と名のつく学科でおこなわれることが多いようです。

自分で部品を買ってきてラジオなどをつくることに興じていた世代の大学教員からすれば、いまの学生が工作の経験の乏しいまま工学部や理工学部に入学してくるのは心もとないかもしれません。しかし、そうした学生に対して、工作実習の授業で手を体を動かして学ばせることが“教育”として求められている時代なのかもしれません。機械工作室で工作を経験させるということです。

参考資料
富山大学工学部「授業科目(カリキュラム)」
http://enghp.eng.u-toyama.ac.jp/department/curriculum/
兵庫県立大学工学部「機械・材料工学科 機械工学コース カリキュラムマップ」
http://www.eng.u-hyogo.ac.jp/eng/kikai/pdf/map01.pdf
大阪産業大学工学部機械工学科「教育・カリキュラム」
http://www.osaka-sandai.ac.jp/fc/en/mech/curriculum.html
東海大学工学部「機械システム工学科で学べる科目一覧」
http://www.u-tokai.ac.jp/academics/undergraduate/industrial_engineering/mechanical_systems_engine/curriculum/
近畿大学工学部「機械工学科カリキュラム」
http://www.hiro.kindai.ac.jp/faculty/mechanical/curriculum.html
東京都市大学工学部「機械システム工学科 講義の紹介」
http://www.mse.tcu.ac.jp/faculty/lecture
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