科学技術のアネクドート

「組織」が集まって「器官」、「器官」の種類のなかに「臓器」

写真作者:Eric Villalba

からだを構成する、ある程度のまとまりを指して、「器官」や「臓器」や「組織」などといいます。「器官臓器組織」などと並べると、かつてあった雑誌『蛋白質核酸酵素』の誌名みたいです。それぞれ、なにを意味しているのでしょうか。

「器官」と「臓器」については、使われている漢字に注目すると、関係性が見えてきます。

どちらも「器」が使われていますが、「器官」は1文字目であるいっぽう、「臓器」は2文字目。「臓器」という熟語を分解すると「“臓”の“器官”」といった解釈ができます。

すると「臓」とはなんなのかが問題となりますが、これは「腸」と書く「はらわた」ということばに近いもよう。国語辞典の「臓」の項目には「はらわた」とあります。「はらわた」とは、「大腸」や「小腸」などの総称です。また「五臓」ということばは「肝臓」「心臓」「脾臓」「肺臓」「腎臓」のことを指します。

これらから、「臓器」は、とくに、大腸や小腸などの腹腔や、心臓や肺臓などの胸腔などにある器官を指すものといえそうです。

つまり、「臓器」と「器官」では、「器官」のほうがより多種類なものを指し、「臓器」はその器官のなかでの限られた種類のものを指すことになります。どちらかといえばですが。

では、「組織」はというと、これは国語辞典によっては、明確に「さらに集まって器官を構成する」とあります。つまり、「組織」は「器官」の一部あるいは構成要素といえるわけです。

以上をまとめると、「『組織』が集まると『器官』になるが、その『器官』のうち、とりわけ腹腔や胸腔などにあるものは『臓器』とよばれることがある」といったことになります。

なお、英語では「組織」は“tissue”、「器官」は“organ”、「臓器」は“internal organs”などといいます。

参考資料
デジタル大辞泉「器官」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/50756/meaning/m2u/器官/
デジタル大辞泉「臓器」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/128231/meaning/m2u/臓器/
デジタル大辞泉「組織」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/130515/meaning/m0u/組織/
| - | 19:52 | comments(0) | trackbacks(0)
子育て中の親ツバメは夜、巣の近くで寝る

写真作者:coniferconifer

今年も夏が近づき、ツバメが子育てに励む季節になりました。

ツバメは渡り鳥。春になると南のほうから北のほうへと渡り、そこで子どもを生み育て、そして秋にまた南のほうと渡っていきます。子どもを生み育てる「北のほう」が、日本列島にあたるわけです。日本には人里や人も多いため、天敵のヘビなどから襲われにくく、ツバメにとっては日本は好都合な土地かもしれません。

昼間、親ツバメはがむしゃらなまでに餌を取ってきては子ツバメたちにあたえつづけます。子ツバメのいる巣から離れていることが多いわけです。では、子育て期間の夜には、親ツバメはどこにいるのでしょうか。

卵から孵って間もないころは、まだ子ツバメは毛が生えていないため、体温が奪われがち。そこで親ツバメも夜に巣に入り、子ツバメたちを温めるといいます。

しかし、餌をあたえられた子ツバメの成長は著しいもの。だんだんと大きくなっていくと、親ツバメが巣に入れないくらい手狭になります。

でも、この段階までいくと、子ツバメの体には毛が生えていて、親に体を温めてもらう必要はなくなります。

そうなると、親は子ツバメのいる巣のけっこう近いところで夜は寝て過ごすようです。

人間でいったら、子どもが大きくなって家が狭くなり、親は家の外に出ざるをえなくなり、庭先に布団を敷いて寝るようなものでしょうか……。いいえ、そういう悲しい状況ではないようです。

卵を生むころになると、巣の近くで寝るようになる親ツバメは多いようです。そんな親ツバメからしてみれば、子育て中も巣の近くで夜を寝て過ごすというのは普通の生活といえそうです。なかには、子ツバメを生む前後のころ、子ツバメ用の巣に入って寝る親ツバメもいるそうではありますが……。

子ツバメに巣立ってもらうために、親ツバメは献身的なまでに毎日を過ごす。ツバメにとってみれば、そのように生きることは体に叩き込まれたしくみと化しているわけです。しかし、そうした姿をはたから人間が見ると、人間の目には愛おしく感じられるものです。

参考資料
大阪市立自然史博物館「大阪府下のツバメの集団ねぐら」
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/Roost/swallowroost.html
Yahoo!知恵袋「ツバメについてです。親鳥は夜はヒナと一緒に巣の中で寝るんですか?」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13130307173
| - | 22:48 | comments(0) | trackbacks(0)
ゴルフの素振りは見かけるが、相撲の立ちあいのしぐさは見かけない


駅のホームで、ゴルフの素振りのようなしぐさをする人がいます。スマートフォンが普及したため、電車が来るまでの定番は「スマホいじり」になってはいる化もしれません。しかし、いまも傘が必要な天候の日などには、パターがわりなのかアイアンがわりなのか、傘を両手に持って振っている人はいます。

ゴルフの素振りほど多くないものの、野球の投手が球を投げるときのように、片手を肩のところまで上げてから前のほうへ下ろすようなしぐさをする人もたまにいます。たいていは、斜め上の角度から投げおろす「スリークォーター投法」くらいの投げかたです。小林繁や仁科時成のような「下手投げ」のしぐさをする人はさすがに見かけません……。

こうした運動競技のしぐさを駅のホームでする人の多くは、実際その競技をしているのでしょう。そして、電車を待っているとき、つい手持ち無沙汰で、体が動くのでしょう。まわりの人に迷惑をかけるほどの行為は慎むべきでしょうが、体が動くということは基本的には健康でよいものといえます。

ゴルフの素振りや投手の投球のまねをする人がいるのであれば、ほかの運動競技をしている人がその競技のからだの動きをしたとしても、理論的には不思議ではありません。

たとえば、水泳をしている人が、駅のホームで首を前かがみぎみにし、両方の腕と手を回しはじめたとします。この人はクロールで泳ぐ自分の腕や手の動かしかたをホーム上で確かめているのでしょう。さらに、両手を同時にまわしたり、両方の手のひらを合わせたあと手を離して水平に回したりしていたら、この人は個人メドレーの泳ぎしているのでしょうか。

また、相撲をとっている人は、駅のホームで四股を踏むかもしれません。さらに、立ちあいをもっとよくしたいと考えている人は、四股を踏んだあと両拳をホームの地面についてから、前へ前へとすり足で前進するかもしれません。

柔道をしている人は、駅のホームに背中から倒れこみ、そして両方の手のひらをホームの地面にぴしゃんと叩くかもしれません。その人は、受け身の練習をとにかくどんな場所でもしたかったのでしょう。

しかし、水泳のクロールも、相撲の立ちあいも、柔道の受け身も、駅のプラットフォームでしている人を見ることはめったにありません。四股を踏む人はたまにいるかもしれませんが……。

どうして、ゴルフの素振りや投手の投球のまねをする人はホーム上にいて、ほかの運動競技のしぐさをする人はそう多くはないのでしょうか。

競技人口には競技によって多さ・少なさがあるもの。ゴルフや野球などの競技は、そうしたしぐさをしても、自分で「ここでやるのは場ちがいだ」と感じたり、まわりから「この人おかしいのでは」と思われたりしないくらいに浸透しているということでしょうか。べつの言い方をすれば、駅の風景に溶けこむくらい、そうしたからだの動きを人びとは見なれているということでしょうか。
| - | 23:28 | comments(0) | trackbacks(0)
「椿の湯」に「十年の汗を道後の温泉に洗へ」



愛媛・道後湯之町にある道後温泉には三つの共同浴場があります。1894(明治27)年より建てられた趣のある「本館」はよく知られるもの。いっぽう、最近では2017年9月に「飛鳥の湯」が完成し話題をよびました。

もう一つあるのが、飛鳥の湯のすぐとなりにある「椿の湯」。1953(昭和28)年に建てられ、1984(昭和59)年に改築されました。さらに、2017年12月に改修されています。

伝統の「本館」、真新しい「飛鳥の湯」にくらべると、やや影の薄い存在になってしまったものの、三つの館のなかではもっとも安い400円で入浴ができます(ロッカー使用量がべつに10円かかります)。

男湯の浴室の大理石でできた湯口に刻まれているのは、松山市出身の俳人・正岡子規のつぎの句。

「十年の汗を道後の温泉(ゆ)に洗へ」

野球を愛していた正岡子規。「草野球をしつづけて10年も経験を積んだら、道後温泉で汗を洗ってさっぱりしなされ」とでも言わんとしているのかというと、そうではないようです。

この句は1896(明治29)年、子規が30歳のときに詠んだもの。子規の2年後輩で、おなじ松山出身で言語学者の小川尚義(1869-1947)が、台湾から帰国しました。小川は同年、東京文科大学を卒業後、台湾総督府学務部につとめました。

この句が記されている『寒山落木』には、句の前につぎのような文もあります。

「小川氏大學を卒へて帰國するよし聞きて申遣す」

日本に帰ってくる小川に対して、道後温泉に入って「十年の汗」を洗え、とことばを贈っているわけです。子規と小川が親しくなったのは1887(明治20)年。この年、小川は第一高等中学校予科に入学しています。1889(明治22)年には脚気を患って休学したことも。大学の卒業までに至るおよそ10年の小川の労苦をねぎらったようにもとれます。

子規自身も、この句を詠む前年の1895(明治28)年、帰国途上船中で喀血して入院するなどし、病を抱える身でした。句を詠んだ年には脊椎カリエスと診断されています。

「10年かけてかいた汗」でなくとも、子規から疲れた体を「温泉に洗へ」と言われたと考えると、ちょっと癒やされた気もちになるでしょうか。温泉はぽかぽかですから、夏場などは湯あがりに結局また汗をかくことになりますが……。

参考資料
吟行ナビえひめ「十年の汗を道後の温泉尓洗へ」
https://www.iyokannet.jp/ginkou/spot/detail/kuhi_id/554
愛媛県生涯学習センター「データベース『えひめの記憶』」
http://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:1/5/view/1017
正岡子規会「正岡子規 略年譜」
https://matsuyamashikikai.jimdo.com/正岡子規の略年譜/
WebM旅「十年の汗を道後の温泉に洗へ」
http://www.webmtabi.jp/201009/famous/mshm29026402.html
ウィキペディア「小川尚義」
https://ja.wikipedia.org/wiki/小川尚義

| - | 16:13 | comments(0) | trackbacks(0)
青で「出発」赤茶で「到着」、長距離ながら疲れづらく


成田空港内の格安航空会社による航空機の出発と到着の出入口がある「第3ターミナル」が開業したのは2015年4月。3年が経ちます。

京成電鉄やJRの成田空港駅から第3ターミナルまでは数100メートルあります。駅により近い第2ターミナルと第3ターミナルのあいだに連絡バスも通っているようですが、かなりの人は徒歩で第3ターミナルへ向かいます。

よく使っている人にとってはあたりまえの光景になっているかもしれませんが、第2ターミナルから第3ターミナルまでの通路の地面は、陸上競技場の競走路とおなじ仕様です。もちろん陸上競技場とちがってS字の曲線などもありますが、最近の陸上競技場の競走路とおなじ青色の舗装と、かつての陸上競技場とおなじ茶色の舗装がされています。



この競走路的通路の設計に携わったのはパーティー・クリエティブ。第3ターミナル全体の建築事業を、成田国際空港、日建設計、無印良品とともにおこない、第3ターミナルは2015年度のグッドデザイン賞を受賞しています。

競走路的通路を紹介する記事によると、舗装の色にも意味があるのだそう。青色の舗装は出発口に向けたものですが、空の色に近い色で出発が象徴されているといいます。逆に到着口からの赤茶色の舗装は地球色を意識したものといいます。もし、出発口への色が赤茶色で、到着口からの色が青色だったら、利用者は「なにかがへんだな」と違和感を覚えていたかもしれません。

グッドデザイン賞の資料によると、競走路には「足の負担を軽減する機能」も備えさせたといいます。実際、歩いてみるとアスファルトやコンクリートの地面とちがって弾力性があります。本物の競走路とおなじ素材か、それに近い素材が使われているのでしょう。疲れづらい。



通路の途中には、天井にも「Terminal3 110m」などといった情報が視覚で認識できるようになっています。



いよいよ第3ターミナルに入ると、レーンが4つに増え、直線路と曲線路が融合するような意匠に。海外旅行者などにも斬新に感じられることでしょう。

ただし、この青い競走路的通路の先にある保安検査場には、時間帯によって長蛇の列が。第3ターミナルへの到着が、航空機の出発時刻直前になると、保安検査場から搭乗口までのかなり長い距離を選手よろしく駆けぬけていかなければならないため余裕をもった行動が大切になります。

参考資料
マイナビニュース 2015年4月8日付「成田空港第3ターミナルに陸上トラックが現れた理由は? クリエイティブラボPARTY・伊藤直樹が仕掛けた『空港のデザイン』」
https://news.mynavi.jp/article/20150408-lcc/
グッドデザイン賞2015「空港[成田国際空港 第3旅客ターミナルビル]」
http://www.g-mark.org/award/describe/42995
| - | 18:45 | comments(0) | trackbacks(0)
路面に投影して注目される


ものの影をなにかの表面に映すと、光の部分と影の部分の明るさの対比によって模様が生じます。夕日が沈みかけているときに砂浜に立てば、自分の姿が影となって見えるでしょう。

この光と影の物理的なしくみによる模様を意図的に映しだす技術もあります。しかも、歩道などの路面に。その装置は「路面投影機」とか「路面プロジェクタ」とかよばれています。

路面投影機の製造業が用途として紹介しているのは、一般的に道路上の「安全性」高めるためというもの。たとえば、鹿島道路という企業は、路面投影で「この先電線共同溝工事中 注意!」という文字と工事作業者のピクトグラムを光の部分で表現した路上投影を写真で示し、「夜間における歩行者の注意喚起への認識度を向上させる事ができます」と説明しています。

同社製の路面投影機の照明には、最近では発光ダイオードが使われているのだそう。影と光のもととなるスライドは「現場に即したデザインが可能」とのこと。また「カラー化も可能」とのこと。

投影機という装置そのものは1927年にドイツのリーゼカングという企業に発明されたもの。歴史は古いものがあります。

その投影先を路面にしたという点に、ひとつの発想があるといえましょう。人はどこを向いて歩いているかといったら、「真正面を見ながら」という人はさほど多くなさそうです。むしろ「前方ななめ下を見ながら」という人のほうが多いでしょう。地面のうえを歩いていれば、その地面の先になにがあるかを注目しようとするものです。

それにつけても、公道の路面上に店などの看板を掲げるのとおなじような目的で路面投影をしてもよいものなのでしょうか……。すくなくとも、路面をペンキで塗るような行為にくらべれば許されているようです。人は、塗料や顔料による模様よりも、光と影による模様のほうが慣れているということでしょうか……。この手の路面投影は一般的に、許可を得ているものものか、黙認されているだけのものなのか……。

参考資料
鹿島道路「路面プロジェクタ KRスポット」
http://www.kajimaroad.co.jp/technology/detail.php?pcat=2&cat=30&seq=104
日刊建設工業新聞 2017年8月2日「鹿島道路/路面への画像照射による安全喚起装置改良/省エネ・長寿命化し設置容易に」
http://www.decn.co.jp/?p=93183
ウィキペディア「オーバーヘッドプロジェクタ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/オーバーヘッドプロジェクタ
| - | 18:15 | comments(0) | trackbacks(0)
嫌気がさしているのに売られている商品はそれだけ

写真作者:Luca Sartoni

ドラッグストアなどには、衛生や健康にかかわる商品がたくさん売られています。そして、そうした商品のいくつかには、「マイナスイオン」が含まれていることを思わせるような表示のものがあります。

たとえば、髪を洗うときに使う、とあるブラシの商品には、つぎのような文言が書かれています。

「ブラシ部に練り込んだ、天然鉱石が放射するマイナスイオンの効果で、髪と地肌をリフレッシュします」

「マイナスイオン」は国語辞典にも載っています。「イオンの一種とされる物質。森林中や滝の水しぶきなどに多く含まれ、健康によいとされるが、科学的根拠はない」とあります。さらに「学術用語ではなく、統一された定義をもたない。陰イオンとは異なる」といった補説もあります。

商品の紹介文によると、このブラシは、天然鉱石が「マイナスイオン」を「放射」し、それにより髪と地肌を「リフレッシュ」するものだそうです。

しかし、国語辞典にも載っているとおり、「マイナスイオン」の健康への効果については科学的根拠がありません。

明治大学科学コミュニケーション研究所の「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」には、「マイナスイオン」の効果を科学的に検証した研究の結果が紹介されています。

2013年に『BMCサイキアトリ』という雑誌に掲載された「空気イオンと雰囲気結果:調査とメタ分析」という論文については、「マイナスイオンを浴びた場合の効果として、季節性気分障害患者に対する抑うつ作用は認められたが、(健康なヒトを含んだ他の対象への)不安(anxiety)、気分(mood)、リラクゼーション(relaxation)や睡眠(sleep)、個人的な快適さ(personal comfort)などの効果に関しては首尾一貫したデータが得られておらず、効果を認めるのに十分な根拠はないとしている」とあります。

また、おなじく2013年に『ジャーナル・オブ・ネガティブ・リザルト・イン・バイオメディシン』に掲載された「空気イオンと呼吸器機能の結果 包括的な調査」という論文については、「マイナスイオンによる身体的な効果(たとえば代謝機能、痛みの緩和、喘息症状など)はないと結論付けている」としています。

科学的に「マイナスイオン」の効果は認められていないに等しい状況ながら、街なかのドラッグストアには「マイナスイオン」の効果を思わせる商品が置いてあるわけです。

商品を買う人の選びかたはさまざまです。「マイナスイオン」という文言に惹かれて買う人がいるのも事実でしょう。

いっぽうで、「マイナスイオン」という文言があると嫌気がさし、買うことを避ける人がいるのもまた事実でしょう。そして、「科学的に認められていない効果を標榜するかのような商品が嫌な人は、買わなければいい」といった考えかたはなりたつのでしょう。

嫌気がさす人たちにとっての問題は、店先におなじ用途の商品が1種類しか置いておらず、それが「マイナスイオン」を謳った商品である場合があるということです。

もし、「マイナスイオン」が本当にその商品から放出されているとしても、おそらく体に対してよい効果もなければ、悪い影響もないのでしょう。「薬にも毒にもならない」わけです。

だれが「マイナスイオン」を謳う商品を買ったとしても、「マイナスイオン」による効果はないとして、もともとの「ブラシ」の役割は果たすでしょう。なので、「マイナスイオン」に嫌気がさす人がこの商品を買えば、「ブラシする」という目的はかなうことにはなります。

しかし、嫌気がさす人のなかには、「『マイナスイオン』と書かれてある商品はとにかく嫌だから買わない」という人もいるはずです。そうなると、要求を満たす商品は売っていても、それを買わずに店を出ることになります。

店が「マイナスイオン」と書かれてある商品を置くと、「嫌気がさす人たちに買われない」といった損が生じるはずです。しかし、それにもかかわらずそうした商品が置かれているということは、「嫌気がさす人に買われない」以上に、「信じている人たちに買われる」あるいは「嫌気がさすでも信じるでもない人びとに買われる」といった得のほうがやはり大きいという実状があるのではないでしょうか。

参考資料
デジタル大辞泉「マイナスイオン」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/206888/meaning/m0u/マイナスイオン/
明治大学科学コミュニケーション研究所 擬似科学とされるものの科学性評定サイト「マイナスイオン」
http://www.sciencecomlabo.jp/health_goods/negative_ion.html
| - | 16:49 | comments(0) | trackbacks(0)
乾燥機で品質よい干ししいたけをつくる


しいたけは「干す」ことによって日もちさせることができます。そのため昔から保存食としても重宝がられてきました。それに、干して乾かせば水分も減るため、持ちはこびも便利になります。

機械が発達していなかったころ、しいたけを干して乾かすには、太陽の光と熱を使った「天日干し」がおもな方法でした。いまも家庭でしいたけを干す場合は、天日干しをしている家は多いのではないでしょうか。

いっぽう、機械が発達すると「しいたけ乾燥機」といった、しいたけを乾かすことを用途とした装置が開発され、しいたけ栽培農家などに使われるようになりました。

しいたけ乾燥機のおおまかなしくみは、熱源をつくり、熱を風に乗せて、其の熱風を置いた数々のしいたけに通して、しいたけを乾かす、といったもの。

しいたけ乾燥機をつくり売っている機械製造業各社の情報によると、熱源には灯油、ガス、電気などのエネルギー源が使われます。

熱によりしいたけを乾かすため、エネルギー費用はそれなりにかかりそうです。しかし、製造企業によっては、乾かすのに使う熱風を機械のなかで循環させて再利用するしくみも開発されているようです。

機械の技術があるいっぽうで、それを使う人の技術もあります。しいたけ乾燥機をつくる企業のひとつ、黒田工業は「椎茸乾燥のポイント 儲かる乾椎茸づくりのために」という“虎の巻”を堂々と公開しています。

たとえば、採ったしいたけを載せて段々状に置く「エビラ」とよばれる棚の上下位置としいたけの大きさの関係性が記されています。地面近く1段目から3段目の下段には「葉」の大きなしいたけを、4段目から10段目の中段には中くらいのしいたけを、そして11段目から15段目の上段には小さめのしいたけを載せるとよいといいます。

熱風が下のほうから上へと昇っていくため、下段のほうが温度が高めになります。よって乾かすのに必要な時間がかかる大きな葉のしいたけを下段に置くのが適することになるわけです。

天日干しのほうがしいたけ乾燥機を使うより安く済むのはたしかなこと。しかし、しいたけ乾燥機を使えば短い時間で干しいたけをつくることができます。これは、色やつやの変化を防ぐことにもつながるといいます。しいたけを干すときは速さが勝負。品質を保つためにしいたけ乾燥機は大切な機械といえそうです。

参考資料
大紀産業「食品乾燥機シリーズ」
http://www.taikisangyo.co.jp/assets/files/pdf/syokuhin_kansouki.pdf
木原製作所「椎茸乾燥機Fシリーズ」
http://www.kiharaworks.com/product/shiitake.html
黒田工業「熱風乾燥機のしくみ」
http://www.kuroda-dryer.co.jp/sikumi.htm#tanashiki
黒田工業「椎茸乾燥のポイント」
http://www.kuroda-dryer.co.jp/shiitake-kannsonopoint.pdf
| - | 16:03 | comments(0) | trackbacks(0)
末端にいれば意思疎通の手間は減らせる

写真作者:Amphithoe

仕事において、意思疎通のために費やす手間は、金額になかなか換算されづらいものです。本来は1回で済んだはずの意思疎通が、2回も3回もかかれば、手間も2倍、3倍と増えていくわけですが、それをいちいち計算して「一連の意思疎通でかかった費用は人件費換算で2204円でした」などと割りだすことは、いまの社会ではあまりされていません。

しかし、意思疎通に費やす手間を軽視することはできません。1回で済むはずの意思疎通が2回、3回と増えると、作業時間が増えるだけでなく、べつの作業をしていた場合の中断による余計な作業時間がさらに増えたり、意思疎通がうまくいかないことへの精神的ストレスが増えたりしうるものです。

むだに思える意思疎通にも、それで仲が親密になるという場合もありますから、それは真にむだな意思疎通とはいえますまい。そうしたよい効果にもつながらないような、真にむだな意思疎通の手間をできるだけ省くための方法を、人びとはもっと考えてもよいのかもしれません。

いっそのこと、自分の立場を必然的に意思疎通に費やす手間がかからないものにして生きていく、といった方法もあるのではないでしょうか。

仕事の人材配置には「末端」とよばれるものがあります。たとえば、複数人が携わる作業について、Aさんが方向性を示して、Bさんがそれをもとに企画を立てて、Cさんが進行管理をして、Dさんが実作業をする、とします。

この編成では、Bさんは、Aさんから指示を受けて、Cさんに指示を出します。またCさんは、Bさんから指示を受けて、Dさんに指示を出します。Aさんも、あるいはさらに上層の社長や責任者から指示を受けて、Bさんに指示を出しているかもしれません。

となると、唯一Dさんが、Cさんから指示を受けるけれども、ほかのだれにも指示を出さずに作業することができる、ということになります。

単純に、指示を受けるときの手間と、指示を出すときの手間がおなじであるとすれば、Bさん、Cさんにくらべて、Dさんは合計の手間が半分で済むことになります。

「末端」というと、下働きをさせられているといった印象がもたれがちかもしれません。しかし、意思疎通の手間を減らすのに、これほど優位な地位は、社会構造においてはあまりないのではないでしょうか。ほかに組織の最頂点に立つ人も、指示を受けないのでかかる手間はおなじになりそうですが、責任の重さや、出す指示の多さは末端よりもはるかにありそうです。
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
タケの拡大、その場で自然に、遠くには人為的に


日本のタケの主要な種となっているモウソウチク(孟宗竹)やマダケ(真竹)の北限はそれぞれ、北海道の函館、そして青森あたりとされます。

しかし、東北大学、長野県、森林総合研究所、気象庁、東京大学、環境研究所
、総合地球環境学研究所が2017年10月に共同発表した内容によると、地球が産業革命以前にくらべて4度、上昇した場合、北限は500キロメートル進んで稚内まで到達するということです。

モウソウチクは18世紀、マダケは10世紀より前に、ともに中国から入ってきた種とされます。日本で育成してきたほかの植物より繁殖力は高く、生育に適した場所が拡大すれば、いかにこれらのタケを管理するかを考えることがますます大切になっていきます。

さて、東北大学などの共同発表には、つぎのような文言があります。

「モウソウチクもマダケも種子から定着して竹林になった報告はなく、人が植えなければ新たな土地に定着することはないと考えられます」

かなり多くの人はつぎのように考えていたのではないでしょうか。つまり、人がかねてから里山を保つなか、タケに対してもそれなりに管理していたものの、近年は放置林が増えたため、繁殖力の高いタケは自然に任すまま、つぎつぎ新たな土地に定着していき、生育域を拡大していった、といったものです。

しかし、上の共同発表からすると、そうしたことは考えられないということになります。

タケも植物です。ほかの多くの草木とおなじように、開花して種子をみのらせます。しかし、マダケが花を咲かせるのは120年に一度、モウソウチクについては67年に一度とされ、めったに種子をみのらせることはありません。

しかし、タケは地下の茎をたくさん伸ばすことで、もともと1本だったタケが竹林にまで成長するといいます。つまり、おなじ場所におけるおなじ種のタケは、クローンであるわけです。

そのため、かつて人が里山で管理していたタケが放置されると、種子を介して新たな土地に定着することはほぼ考えられないものの、地下の茎はつぎつぎと生えていき、その場では拡大するといったことはありえそうです。

とはいえ、青森のタケが地下の茎を伸ばして函館でタケノコとして出てきたり、函館のタケが地下の茎を伸ばして稚内でタケノコとして出てくるようなことは考えられません。竹林は放っておいた場合、年に最大で拡大するのは3メートルから4メートルほどとのことです。

つまり、モウソウチクやマダケをなにもせずに放っておくと、その場所を専有はするものの、遠くの場所に定着していくことは考えにくい、といったことになりそうです。上の「年に最大3メートルから4メートル」の拡大率でいうと、10キロメートル離れたところまで拡大するには、2500年かかる計算となります。

上記の共同発表では、「温暖化がある程度進んでしまった場合にも、外来種被害予防三原則である、入れない・捨てない(管理放棄しない)・拡げない(タケを新たな土地に定着させない)といった管理と対策を、地域住民と行政が一体となって進めることが重要です」としています。

参考資料
東北大学 2017年10月18日発表「タケ、北日本で分布拡大のおそれ」
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/10/press20171016-01.html
国立環境研究所 侵入生物データベース「モウソウチク」
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80740.html
academist Journal 2017年12月6日付 高野宏平、日比野研志、小黒芳生「外来種のモウソウチク・マダケが里山生態系を脅かす – 温暖化が進めば北日本でも分布拡大する可能性」
https://academist-cf.com/journal/?p=6586
農林水産省「特集1 竹のおはなし(2)」
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1301/spe1_02.html
鳥居厚志・奥田史郎「タケは里山の厄介者か?」
https://www.forestry.jp/publish/ForSci/BackNo/sk58/58.pdf
あれこれ それなりクラブ「竹の性質」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~waroh/plants/take-2.htm
| - | 20:36 | comments(0) | trackbacks(0)
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