直流のほうが電流の向きも電圧の大きさも一定で、単純明快な印象をあたえます。しかし、交流の利点があるからこそ、交流が広く使われているわけです。
交流の大きな利点は、電圧を変えられる点にあります。家などに電力が送られるとき交流が方式として使われていますが、これは、発電所から家に電気が届くまでに、変圧器という装置を入れることで、電圧を高められ、効率よく送電することができるから。電圧を高めると、電流を低めることができ、電流を低めると、むだな熱が生じにくくなるのです。
「高圧電線」とよばれる電線があちらこちらに張りめぐらされているのは、電圧を高くした電気が送られている証拠です。
交流では、電流の向きが切りかわるわけですが、どのくらいの早さで切りかわっているかというと、多くのところでは1秒間に50回または60回。1秒間における1周期の振動数をヘルツといい、1秒間での切りかわりが50回であれば50ヘルツ、また60回であれば60ヘルツとなるわけです。
1秒間に50回といえば、0.02秒に一度、電流の向きが切りかわっているわけです。1秒間に60回となれば、0.016666秒に一度。そのくらいひんぱんに電流の向きが変わっているとは、直感的には理解しづらいものがあります。
しかし、たしかに電流の向きがすばやく変わっているということを感じられることがあります。デジタルカメラなどで、1コマの数を多くして、蛍光灯を撮影すると、コマごとに蛍光灯の光が明るくなったり、暗くなったりしているのを確かめられます。
蛍光灯
写真作者:Tamaki Sono
蛍光灯には電極があり、つねに電流は一方向に流れるので、交流の電流を流すと、単純な計算で半分の時間は、電流が流れていないことになります。電流が流れていない時間、じつは蛍光灯は消えているのですが、あまりにも早すぎてヒトの肉眼と脳では蛍光灯が暗くなっていると感じられないのです。しかし、デジタルカメラの高速コマ撮りでは、たしかに蛍光灯が暗くなっていることが撮影されます。敏感な人であれば、肉眼でも蛍光灯がちらついているのを感じることでしょう。
ただし、50ヘルツまたは60ヘルツの交流電流の方向の切りかわりを、その1000倍ほどの20キロヘルツから70キロヘルツぐらいまで早めたインバータ方式という蛍光灯では、すくなくとも肉眼ではちらつきが感じられなくなります。
参考資料
NHK高校講座物理基礎「なぜ交流を使うのか 直流と交流」
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/butsurikiso/contents/resume/resume_0000001959.html
電気事業連合会「直流と交流」
https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/denki/index.html
京都教育大学 沖花研究室「蛍光灯の光はちらちらして見えるって知ってた?」
http://natsci.kyokyo-u.ac.jp/~okihana/trivia/keikoutou/index.html
パナソニック「インバータ式(電子式)点灯回路とは」
https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/109681/~/《用語解説》インバータ式%28電子式%29点灯回路とは