科学技術のアネクドート

「食べきれるサイズなんて思わない」と思う人も


製造業者が、製品を値上げすることがあります。おなじ製品を、それまでの値段より高く売るわけです。

いっぽうで、おなじ値段で、それまでの製品より量を減らして売ることもあります。こちらはよく「実質値上げ」などとよばれます。

製品の量が減ったことを文句で伝える企業もあれば、食品表示の内容量を変えるだけにとどめる企業もあります。

なかには、量がすくなくなったことを「食べきりサイズにリニューアル」とか、「食べごろサイズでお届け」とか、「消費者のみなさんにも便利でしょ」と伝えたげに記す企業もあります。

製品の説明のしかたにはさまざまあります。「食べきりサイズにリニューアル」という手の説明は、「客側の都合や便利さを、企業側が決めつけたもの」ととることができます。客側が「これは食べきれるサイズだ。都合がいいぞ」と思えばなにも感じないでしょうが、「食べきれるサイズなんて思わない。もっとたくさん食べたい」と思ってしまえば、その説明に違和感を覚えることになります。

記事の題でも、おなじようなことがいえます。記事をつくる側の記者や編集者が「すごい! 誰々氏、究極の何々理論を語る」という題を記事に打つことがあります。しかし、「すごい!」と感じるかどうかは、読者側の受けとめかたにもかかっています。読者が記事を読んで「すごい!」と感じればまあよいのでしょうが、「すごくない」とか「しょぼい」とか思えば、その題に違和感を覚えることになります。

日常会話で人は「食べきれる分だけつくってきたよ」とか「ねぇ、すごいことがあってさ」とか言うこともごく自然にあります。伝えたいことを相手に伝えたのだから目的達成です。製品にある「食べきりサイズにリニューアル」という説明や、記事にある「すごい!」という題は、その延長にあるものととれなくもありません。

しかし、製品への説明や記事の題は、日常会話より公共性が高いもの。受けとる人も多いため、“外した”ときの違和感の総体は大きなものになります。相手がそう感じるかどうかは相手次第といった主観的な表現を使わないほうが無難です。
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食料「不測の事態」の深刻度「レベル0」から3段階

写真作者:tamba sc

危機への対策には、その深刻さなどの程度により、いくつかのレベルを設けることがあります。たとえば、政府は、国民が日々摂っている食料について、「不測の事態」の深刻度を「レベル0」から「レベル2」までの3段階を設けています。

「レベル0」。これはみっつあるレベルでもっとも低いもの。農林水産省は「レベル1以降の事態に発展するおそれがある場合」のレベルと位置づけています。

具体的には、日本国内での大不作の予測、主要輸出国における大不作の予測や輸出規制の動き、主要輸出国における突発的な事件・事故などによる貿易などの混乱、安全性の観点からおこなう食品の販売などの規則、といった場合を想定しています。

「レベル1」。これはみっつあるレベルで中程度のもの。「特定の品目の供給が、平時の供給を2割以上下回ると予測される場合を目安」(農林水産省)としています。

具体的には、米の大不作の発生、それに主要輸出国における輸出規制の実施を想定しています。ここでいう「米の大不作」とは、1993(平成5)年にあった「平成の米騒動」ともよばれた米の不足に相当するもの。とくに東日本で米の不作が深刻で、北海道の作況指数は74、また東北全体の作況指数は56でした。当時の1000万トンのコメ需要に対し、収穫量が800万トンを下回り、政府はタイ、中国、米国から米を緊急輸入しました。

また、「主要輸出国における輸出規制の実施」の例とされているのは、1973(昭和48)年の大豆の価格高騰。前年の秋から農作物の国際市況が全体的に高騰し、調味料や加工食品が1973年2、3月に相次いで値上りするなどしました。

「レベル2」。これがみっつあるレベルのもっとも高いものとなります。「1人1日当たり供給熱量が2000キロカロリーを下回ると予測される場合を目安」(同)としています。日本人が一日に必要なエネルギー量は、活動量のすくない女性で1400〜2000キロカロリー、また男性で2200 ± 200キロカロリーとされています。必要なエネルギー量を摂るのが困難になった場合が「レベル2」ともとれます。

具体的には、穀物や大豆および関連製品の輸入の大幅な減少を想定しています。「レベル2」になると、小麦や大豆の増産、また熱量効率の高いいも類への生産転換などの対策をとることになります。

「レベル1からレベル3」でなく「レベル0からレベル2」までとしているのにも、「レベル0」と「レベル1」のあいだには相当な隔たりがあるといったふくみをもたせているのでしょう。

参考資料
農林水産省「食料の安定供給と不測時の食料安全保障について」
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/H26/pdf/140422_06_01.pdf
ウィキペディア「1993年米騒動」
https://ja.wikipedia.org/wiki/1993年米騒動
内閣府「経済企画庁 昭和48年年次経済報告」
http://www5.cao.go.jp/keizai3/keizaiwp/wp-je73/wp-je73-00301.html
農林水産省 実践食育ナビ「一日に必要なエネルギー量と摂取の目安」
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/required.html
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「これからはOODA」で、PDCAは廃れそう

写真作者:TANAKA Juuyoh

あらゆるものは変化し、生滅するものともいいます。ものごとの進めかたにも、おなじことがいえるのでしょうか。

近ごろ、仕事の進めかたは「PDCAからOODAへ」といった話がよく起きているようです。インターネットで[”PDCA” “OODA”]と検索すると、「『OODAループ』:PDCAでは生き残れない」「さらばPDCA!現場に強いビジネスメソッド『OODAループ』とは?」「OODAループはPDCAにとって代わるのか?」といった記事の見出しが検索されます。

PDCAとは、「計画」を意味するPlan、「実行」のDo、「評価」のCheck、「改善」のActionの頭文字をとったもの。この流れで事業を進め、その結果をつぎの事業にも活かしていく、といった方法が打ちたてられています。多くの職場や組織で、「PDCAを回していかなければ」などと考えられているのではないでしょうか。

いっぽう、OODAとは、「観察」を意味するObserve、「方向づけ」のOrient、「決定」のDecide、「行動」を意味するActの頭文字をとったものといいます。

まず「観察」の段階で、事業の対象となる現場や相手、また自己などをよく見て、その後の段階のための情報を得ることから始まります。

つぎに「方向づけ」。どのように事業を進めていけばよいか、方針を考えるわけです。

そのつぎは「決定」。いわば「よし。これでやりましょう」と決断すること。個人での仕事の場合は「決心」とも表現されているようです。

そして「実行」。観察し、方向づけて、決定したことを実際におこなうわけです。

PDCAが「PDCAサイクル」ともよばれるのとおなじように、OODAは「OODAループ」ともよばれます。つまり「実行」して状況に展開があったら、また「観察」をして、つぎのOODAループに入っていくというわけです。

OODAは、「欠点のあったPDCAに代わるもの」という文脈で説明されることが多いようです。たとえば、PDCAでは、「計画」と「実行」した結果に開きがあって場合、その後の「評価」でようやく、その開きがとりざたされるため、「改善」に向けた速度が遅いといった指摘もあるようです。また、作業現場を見ないで進めてしまうため、作業現場での実状と合わない事業がおこなわれてしまう、といった指摘もあります。このふたつは、おなじことをちがう視点でいっているものと考えられますが。

たしかに、PDCAよりOODAのほうが、手軽にすばやくおこなえそうな印象をあたえるのでしょう。

しかし、「ものごとを観察して、方向づけをして、決断して、実行する」といった過程は、意識しないでも、これまで人びとが暮らしのなかでつねにしてきたものです。

「チラシを見て今日はキャベツが安いと知り、ロールキャベツでもつくるかと考え、よしつくるぞと決断し、店でキャベツを買って料理する」

「顧客が必要としているサービスを調査して、新たなサービスの方向づけをし、サービスの実施を決定して、そのサービスを実際におこなう」

「いまの旬な話題はなにかと調べて、つくる記事のテーマを方向づけて、取材対象者を決めて、取材依頼して取材する」

つまり、OODAに対する評判は、これまで人びとがしてきた作業に名をあたえて、その作業の価値を高めようとするものとも捉えられそうです。

OODAの名声が高くなるにしたがい、PDCAの肩身はせまくなっていきそうです。人びとが「PDCAなんて古い。これからはOODAだ」と考えるようになると、これまで「大切だ」「ぜひわが部署でも回していこう」と重んじられてきたPDCAは捨てさられることになるかもしれません。

いままで大切にしてきたPDCAが、これから、いともかんたんに人びとに捨てられてしまうとしたら、PDCAはなんという幻想だったのでしょう。

「何々の時代はもう終わった。これからは何々の時代だ」と説かれるものに、人びとは弱いものです。これから、PDCAが廃れ、OODAがさかんに取りざたされることになるでしょうか。その後また、PDCAの再評価は起きるでしょうか。

参考資料
IT用語辞典「OODA」
https://www.weblio.jp/content/OODA
起業.tv 2018年9月24日付「まだPDCAで消耗してるの? 注目の意思決定理論『OODA(ウーダ)ループ』とは」
https://kigyotv.jp/news/ooda/
ZUU online 2017年11月23日付「PDCAとOODAの違いとは?新たなループの考え方」
https://www.msn.com/ja-jp/money/news/pdcaとoodaの違いとは?新たなループの考え方/ar-BBFwsZC
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「昔から日本人は、そういう『初物』を楽しむことが好きだったんだと思うんです」


写真作者:Tatsuo Yamashita

ワインの「ボジョレーヌーヴォー」の解禁日は11月の第3木曜。2018年の解禁日である15日(木)まで、あと2日とすこしということになりました。

かつてほどの勢いではないでしょうが、世界のなかでもとりわけ日本は、ボジョレーヌーヴォーの解禁に対して、盛りあがりを見せるといいます。

ボジョレーワインの原産国フランスはおいておいて、ボジョレーヌーヴォーを世界一輸入している国は日本だという話もよく聞きます。

なぜ、日本人はボジョレーヌーヴォーを好きなのでしょうか。

この国民性について、「ボジョレー騎士号」の称号ももつ、落語家の春風亭昇太さんが、発売中の雑誌『東京人』2018年12月号の記事で、つぎのような論をくりひろげています。

「昔から日本人は、そういう『初物』を楽しむことが好きだったんだと思うんです。江戸時代にも毎年『初鰹』が魚河岸に入ると、みんな『どんな努力をしてでも食べてやる』と飛びついたっていうでしょ。『この季節にはこれを口にしておく』っていう風習が、日本にはもともとあった。だから、ボジョレーヌーヴォーについても『今年もできたてを飲んでおかなきゃ』という気持ちになるんでしょうね」

かつての日本人は、鰹のほかにも、鱒、鮎、鮭などの魚、また、茄子、瓜、筍などの野菜の「初物」を得ることに勤しんでいたともされます。

「初物七十五日」といったことばもあります。これは、初物を食べると寿命が75日伸びるという言い伝え。初物にはご利益があると考えられてきたわけです。

こうしたことばが生まれるのも、日本人が、とりあえずの流行に乗っかることを厭わないからこそかもしれません。まわりのみんなが行動を起こしはじめれば、自分も行動を起こすわけです。今日日そのきっかけづくりは、もっぱら大衆だけでなく、企業やマス媒体が強くすることにもなってはいます。

日本でも、ボジョレーヌーヴォーの消費量が頂点だった2004年からすると、最近の消費量は半分ほどに落ちついてきているといいます。まわりのみんなが「飲まなくなる」という行動を起こしはじめたため、自分もそれに乗るという人がすくなからずいるのかもしれません。

けれども、半分ぐらいの人は、やはり「初物」に対する根づよい愛着があるのでしょう。

参考資料
春風亭昇太「ボジョレーヌーヴォーは一期一会。」『東京人』2018年12月号
http://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin.html
東京カレンダー 2017年11月16日付「11月16日解禁! なんとボジョレーの全生産量の半分は、日本に輸入されている!?」
https://tokyo-calendar.jp/article/11147?
食育博士の辛口レクチャー 2014年3月17日付「日本食の伝統54 江戸っ子の初物好き」
https://www.mealtime.jp/shokublog/naohashi/2014/03/post-186.html
BIZTIPS 2017年11月27日配信「『ボジョレー・ヌーボーの輸入量』をウォッチ!」
https://biztips.ohmae.ac.jp/biz-topics/20171127watch

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読書の時間帯、実態と理論に隔たり

写真作者:Hernán Piñera

さまざまな団体が「読書の実態調査」をしています。このところでは、2018年2月に全国大学生活協同組合連合会が公表した学生生活実態調査の結果で、1日の読書時間が「ゼロ」と答えた学生が53パーセントだったことがわかり話題になるなどしました。

読書の実態調査では、「1日に何分、本を読むか」や「1か月に何冊、本を読むか」などがよく聞かれるようです。

いっぽうで、「いつ読書をするか」、つまり読書の時間帯については、さほど調査で聞かれることはありません。関心はさほどないということでしょうか。本を読まない人にとってはあまり関係ないことですが。

読書の時間帯を聞く実態調査はすくないながらも、あります。たとえば、熊本商工会議所が2008年に熊本市内の会員事業所の135人を対象におこなった調査では、読書をする時間帯も聞いています。

それによると、複数回答可で、「早朝」が10.5パーセント、「午前中」が3.2パーセント、「午後」が13.7パーセント、「夕方」が9.5パーセント、「夕食後」が12.6パーセント、そして「就寝前」が65.3パーセントだったとのこと。「就寝前」が圧倒的に多いという結果でした。

この「読書の時間帯は就寝前」という向きは、一般の人びとにもだいたい当てはまるものではないでしょうか。ほかにやるべき仕事や家事などをすべて済ませ、「あとは寝るだけ」という状況のなかで本を読む、というものです。

この実態調査とは対照的に、読書の“効果”を考えた理論では、だんぜん「朝の読書が効果的」とする論が強いようです。いわく、朝は交感神経が優先され、達成意欲や前向きな気分が生じやすい時間だとか、朝の時間帯は脳の情報が整理されているため、夜より3倍も読書の効率が高まるとか。

たしかに、朝の時間帯は多くの人にとって、作業効率が高くなっていることでしょう。作業効率が高くなっている時間帯に読書をすれば、より文章が頭に入ってくるかもしれません。

しかし、「朝の読書が効果的」というのは、あくまで「読書をするならどの時間帯が効果的か」という疑問に対して答えたもの。おなじ理論でいえば、「朝の仕事は効果的」「朝の勉強は効果的」「朝の創作は効果的」となります。

作業が効率的になるとされる朝の時間帯に、読書をするか、それとも仕事をするか。多くの人は、仕事や勉強を優先するのではないでしょうか。朝の時間帯に、仕事をさしおいて読書するのは、もったいないと感じるからです。朝から片づけるべき仕事があるなかで読書をしても、あまり頭に入ってこない、ということもありえます。

こうした心理から、一日のこなすべきことをいちおう済ませてから読書をするというのが、多くの人にとっての現実的な生活のしかたとなっているのでしょう。

さまざまなものごとをこなさなければならない生活のなかで、自分にとってむりのない時間帯に読書をするというのが、効率的かはべつとして、最適な読書のしかたといえるのではないでしょうか。

参考資料
全国大学生活協同組合連合会 2018年2月26日発表「第53回学生生活実態調査の概要報告」
https://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
熊本商工会議所「なんでも調査 読書編 結果発表」
http://www.kmt-cci.or.jp/pdf/nandemo_dokusyo_0806.pdf
BOOK・OFF Onlineコラム「効果的な 読書の時間帯とは」
http://pro.bookoffonline.co.jp/book-enjoy/reading-skills/20180310-dokusyo-koukateki-jikantai.html
くらしのワンシーン 2018年7月14日付「本を読むタイミングはいつ? 読書時間を確保するコツ! 時間帯で効果が違う?」
https://senkokugoshochi.com/koharu/book-when-to-read/
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「伝えたい」という気もちをつくる

写真作者:clement.stenac

新聞、雑誌、ウェブニュースといった、不特定多数の人が読む記事では、「どれだけ多く読まれるか」が、その記事の価値尺度のひとつとなります。もちろん、多く読まれさえすれば、記事の価値が高まるといったものではありません。けれども、なにかを伝えることを目的とした記事がだれにも読まれなければ、記事の価値はないといえます。このことからすると、多くの人に読まれる記事には一定の価値があるといえます。

多くの人に読まれる記事をつくる方法に王道があるわけではありません。王道があるなら、みんなそれを実践して確実に多くのページビューを得ているでしょうし、出す本はかならずよく売れているでしょう。そうはなかなかうまくいくものではありません。

けれども、多くの人に記事を読まれるために、やっておいたほうがよいといった必要条件のようなものはありそうです。

そのひとつが、書く人が原稿をつくり終えるまでのあいだ、「この記事でこれを伝えたい」という気もちをつくっておくこと。気もちを高めるといってもよいでしょう。

記事をつくることを仕事としている人は、伝えたいことがあってその記事をつくっているのでしょうか。そういう場合もあるでしょう。でも、かならずしもそうとはかぎりません。伝えたいことがなくても「書いてと依頼がきたから」とか「つぎの締めきりが迫っているから」とかいったことで記事をつくることはあるものです。人によってはそういう場合ばかりかもしれません。

とはいえ、記事をつくるからには、多く読まれる記事をめざすべきもの。多く読まれて反響が高ければ、つぎの書く機会を得る可能性も高まります。

ですので、「書いてと依頼がきたから書く」とか「つぎの締めきりが迫っているから書く」といったときでも、「いまの自分の心のままに、やっつけに書く」のでなく、「伝えたいという気もちを、つくって書く」ことが大切になります。

では、そうした心をつくるにはどうすればよいのでしょうか。

原稿を書く段階よりずっと前にできることもあります。取材で相手の話を興味ぶかく聞く素ぶりをするのです。相づちを大きく打ったり、声を出してうなずいたり。意図的であっても、体がそのような反応をしていると、だんだんその話にほんとうに興味がわいてくることがあります。

原稿を書く直前にもできることがあります。いまから自分がつくる記事は、なにを伝えることにすればよいのか、それにはどんな意味があるのか、といったことを考えるのです。そして、それを文として書きだします。ことばとして、その記事でめざすことを表すことが、「こう書かないとな」と、自分に納得させることにつながります。

だれかと会って接しているときも、相手に「なぁ、こないだびっくりしたことがあってなぁ……」とか、「ちょっと聞いてよ! じつはさ……」とか言われれば、「なにがあったん」「どうした」と、聞こうとするもの。相手の伝えたいという意思を感じたわけです。

記事でも、「伝えたい」という気もちがこもっていれば、それは読者を惹きつける要素になるはずです。記事をつくるとき、「伝えたい」という気もちがなければ、「伝えたい」という気もちをつくるしかありません。
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花づくりを抑える遺伝子のはたらきが低温で鈍り、花が咲く

シロイヌナズナの花
写真作者:EfrenAve

草木が花を咲かせるかどうかには温度がおおいにかかわっています。たとえば、アブラナ、シロイヌナズナ、またキャベツなどをふくむアブラナ科の植物では、しばらくのあいだ低い温度を経験することで花が咲くということがわかっています。温かい日がつづくと花が咲くという印象がありますが、逆なのですね。

どうして、しばらくのあいだ低い温度を経験すると、アブラナ科のような植物は花を咲かせるのか。それには、やはり開花を調節する遺伝子がかかわっています。

「花成抑制遺伝子」(FLC:Flowering Locus C)とよばれる遺伝子があります。研究でよく使われるモデル植物であるシロイヌナズナから見つかったもの。アブラナ科の植物のほか、ヒルガオ科のアサガオなどもこの遺伝子をもっています。

よび名に「花成抑制」とつくように、花成抑制遺伝子は花を咲かせるのを「抑える」遺伝子です。花を咲かせることにかかわる下流の遺伝子に対し、花を咲かせないように命令を出すわけです。たとえば、日が長くなることで開花を促すFTという下流の遺伝子のはたらきを抑えつけるなどします。

つまり、花成抑制遺伝子が活発にはたらいているときは、植物は花を咲かせることを許してもらえないわけです。このとき植物は、花を咲かせるかわりに葉をつくります。

ところが、摂氏4度ほどの低い温度がつづくと、この花成抑制遺伝子のはたらきが鈍くなっていきます。花を咲かせないような命令が出なくなってくるわけですから、下流の開花をつかさどる数々の遺伝子ははたらくようになります。植物は束縛から解かれたように花を咲かせることになるわけです。

一般的に、植物が低い温度をしばらく経験することで花を咲かせるのは、低い温度が休眠を打ちやぶる刺激となっているからと説明されます。この休眠打破というしくみは、よくサクラの開花で話題になりますが、シロイヌナズナなどの植物も休眠打破を経験していると考えられています。

参考資料
工藤洋「季節を測る分子メカニズム」
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/179447/1/6_23.pdf
新潟大学 アサガオの生理学「花成生理学序論」
https://www.sc.niigata-u.ac.jp/biologyindex/wada/p11/p11-6-1.html
山口礼子、阿部光知、荒木崇「花芽をつくるときを決める制御システム」
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2006&number=5105&file=q4enW6ZGHWLA7XX8HlqUjQ==
藤倉潮ら「シロイヌナズナ種子における低温刺激応答性と休眠打破機構の分子解明」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspp/2004/0/2004_0_310/_article/-char/ja/
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「倍」になり進化が進む

元写真作者:Michael Coghlan

ある子どもが、前日、親に買ってもらったレゴブロックをいろいろ組みあわせて遊んでいます。さまざまなかたちのブロックを組みあわせてお家をつくったりしています。

しばらく経ったある日、親が「レゴブロック、さらに買ってきたよ」と言って、先日買ったのとおなじレゴブロックを子どもにあたえました。これで、レゴブロックは2倍の多さに。この子どもは大よろこびで、こんどはお城をつくりました。ブロックの数が2倍になって、かんたんな家のほかに、込みいったお城をつくることができました。

生きものの世界でも、生きもののかたちや特徴をつくるおおもとの材料が“倍”になるというできごとがあります。

生きものの歴史のなかでは、ごくまれに「ゲノム倍加」とよばれるできごとが起きます。ゲノム倍加とは、まさに字のごとく、その生きもののもっている「ゲノム」つまり遺伝子をふくむ染色体の全体が「倍」になること。ある生きもののゲノムひとつの総量が100だったとすると、ゲノム倍加によって200になるわけです。おなじゲノムがそっくりそのまま倍になるため「ゲノム重複」ともよばれます。

ゲノムが倍加すれば、遺伝子の数も2倍になります。たとえば、パン酵母という菌類では、過去にゲノム倍加を経験したことが知られていて、もともと5000個ほどだった遺伝子が1万個ほどに増えたといいます。

ただし、ゲノム倍加のあと、そのまま遺伝子の数がもとの倍のままがつづくというとそうともいえず、2倍の数から減っていくようです。その過程では、重複した遺伝子のいっぽうが失くなるなどして、ゲノムの再編成が起きるようです。パン酵母の遺伝子の数は、いまでは5600個ほどといいます。

植物ではさらに、ゲノムが2倍でなく、3倍になる「ゲノム三倍加」を経験している種もあるといいます。たとえば、アブラナ属のすべての種がゲノム三倍加をかつて経験したとされます。また、ナス属の系統にいたっては、ゲノム三倍加を2回つづけて経験したということがわかっています。

ゲノムが2倍や3倍になれば、遺伝子の数が増えたり、ゲノムの再編成が起きたりします。よって、その後の進化のしかたは倍加するまえより複雑になりえます。つまり倍化により、その種の分化や多様化がより進んでいくことになると考えられています。

参考資料
杉野隆一「遺伝子の並び順の進化と非コードDNA」
http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~jnakayam/_src/sc772/83j8385815B83X838C835E3C_ncDNA-48D860612.pdf
青木考「果菜のモデルとしてのトマト」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscrp/50/2/50_KJ00010115792/_pdf
nature 2012年5月31日付「遺伝:トマトのゲノム塩基配列から得られる多肉果の進化の手がかり」
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/485/7400/nature11119
nature genetics 2016年10月1日付「アブラナ属:Brassica rapaおよびBrassica oleraceaではサブゲノムの並列選択が形態型の多様化および収斂的な作物栽培化と関係する」
https://www.natureasia.com/ja-jp/ng/48/10/ng.3634/
大熊康仁の進化爆発「脊椎動物の全ゲノム倍加と遺伝子発現調節メカニズムの進化」
https://ameblo.jp/832d-d-s/entry-12240027911.html
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「新語・流行語2018」自然災害を受けての候補語も


「ユーキャン新語・流行語大賞2018」の候補語が、(2018年)11月7日(水)発表されました。『現代用語の基礎知識』を出版する自由国民社と大賞事務局が選んだものです。

2018年の候補語から、科学・技術にかかわるものを挙げてみます。

「eスポーツ」。コンピュータ上での対戦型ゲームを指すもの。運動競技として捉えることから、このようによびます。「e」は「エレクトリック」(electronic)の頭文字とされます。

2018年8月にジャカルタで開かれたアジア競技大会では、サッカーゲームの「ウイニングイレブン2018」、トレーディングカードゲームなどの要素をもつ「クラッシュ・ロワイヤル」、戦闘型ゲームの「リーグ・オブ・レジェンド」などが競技種目となりました。着実に「スポーツ」のひとつの分野として浸透しつつあるようです。もともと「スポーツ」の語源は、「気晴らし、遊び」といったものなので、原義からすればeスポーツもスポーツとなるでしょうか。しかし、運動競技としてのスポーツとはおもむきが異なるところから、「eスポーツをスポーツにふくめてよいのか」といった反対論もあるようです。

「計画運休」。台風などの風水害が予想されるため、旅客会社があらかじめ企てて鉄道やバスの運行をとりやめることをさします。2018年には、9月の台風21号に対してJR西日本が、また、おなじく9月の台風24号に対して、JR西日本やJR東日本が実施しました。

台風が近づいたとき、これまで鉄道やバスは路線ごとに、その都度、間引き運転をしたり、運休をしたりして対応してきました。いっぽう、計画運休では、事前に人びとに知らせたうえで、広い範囲の路線をぼ全面的に運休させます。鉄道会社の方針や判断とはべつに、マス媒体や人びとのあいだで、どちらのほうが都合がよいかが論じられています。

「災害級の暑さ」。災いや被害がおきるほどの暑さをいいます。気象庁気象情報課の職員が7月23日の記者会見で「命の危険があるような暑さ」「一つの災害と認識している」と表現しました。

日本では2018年、全国的に記録的な高温となり、6月から8月の平均気温は、関東甲信、東海、北陸で平年より1.7度高くなりました。これは1946年の統計開始以降、最高。西日本でも平年より1.1度高くなり、統計開始以降、2位の記録となりました。

国語辞典によっては「災害」を「地震・台風・洪水・津波・噴火・旱魃かんばつ・大火災・感染症の流行などによって引き起こされる」としています。今後、これらの要素のなかに「猛暑」も入ってくるのかもしれません。

「ブラックアウト」。ある地域の停電のことをさし、とくに、とても大きな規模での停電をいいます。9月6日(木)未明、北海道胆振地方を震源に起きた地震では、北海道全域で停電となりました。道内で、大きな量の電力をつくってきた北海道電力の苫東厚真火力発電所からの電力供給が止まり、これにより道内での電力の需要と供給の均衡が大きく崩れた影響で、ブラックアウトが生じたと考えられています。

この日から翌日にかけて、NHKラジオなどの報道では、停電のなかで過ごす人に向け、充電していた電気をなるべく費やさずスマートフォンを使うための方法を伝えたり、夜明けまであと何時間かを伝えて励ましたりしていました。

電力の需要と供給の均衡をとることの大切さとむずかしさがあらためて、浮きぼりになりました。

新語・流行語の大賞などは12月3日(月)に発表されるとのことです。


参考資料
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞
https://www.jiyu.co.jp/singo/
ファミ通APPvs 2018年5月29日付「第18回アジア競技大会eスポーツ競技スケジュール・結果まとめ」
https://appvs.famitsu.com/20180529_5728/
産経新聞 2018年7月23日付「暑さ猛烈、災害レベル 熊谷、東京消防庁、高校球児ら…記録的な1日に悲鳴『まるでサウナ』」
https://www.sankei.com/life/news/180723/lif1807230043-n1.html
ウィキペディア「2018年の猛暑(日本)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/2018年の猛暑_(日本)
大辞林第三版「災害」
https://kotobank.jp/word/災害-67717
デジタル大辞泉「ブラックアウト」
https://kotobank.jp/word/ブラックアウト-126191
自然エネルギー Next 2018年9月7日付「北海道のブラックアウト、なぜ起きた?」
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/031400070/090700076/
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文部科学省、先生たちに「自らプログラミングを体験することが重要」とよびかけ


2020年から、小学校で「プログラミング教育」が必修となります。文部科学省は「プログラミング的思考」を育むことなどをこの教育の目的としています。

文部科学省が、2016年段階での有識者会議をまとめたところによると、プログラミング教育とは、「子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むこと」とあります。

「プログラミング的思考」とはなんでしょうか。きょう(2018年)11月7日(火)文部科学省が公表した「プログラミング教育の手引き第二版」によると、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」としています。

こうしたプログラミン的思考を育むことのほか、文部科学省は「プログラムの働きやよさ、情報社会がコ ンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと」そして「各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること」を、プログラミング教育のねらいとしています。

「各教科等の内容を指導する中で実施する場合には」とあることから、各教科での授業にプログラミング教育をとりいれるといった教育のしかたが考えられます。「手引き」では、各教科での授業を想定しての、プログラミング教育のおこないかたの例を掲げています。

たとえば、6年生の理科では、電気の性質やはたらきを利用した道具があることなどを、プログラミングを通して学習する場面がありうるとしています。ここでは、コンデンサで蓄えた電気を夜の照明に使うとき、どのような条件で点灯させれば効率よく使えるか、問いを子どもたちに出すとのこと。

子どもたちはこの問いに対し、「電気を無駄なく使うにはセンサが人を感知するための条件をどう設定すればよいか」と疑問をもち、「センサを用いた通電の制御はどのような手順で動作するか」「命令をどう組みあわせればよいか」と考えたうえで、プログラミングをつくることになるといいます。子どもたちがみんな自発的にこのような過程を踏むわけではないでしょうから、先生がある程度、仕向けることにはなるでしょう。

ほかにも、音楽の授業での「音楽づくり」や、家庭の授業での「炊飯」などでも、プログラミング教育をとりいれられるとして、授業展開の事例を示しています。

「手引き」では、「何より、教師が自らプログラミングを体験することが重要です」と、先生たちに対してメッセージを発してもいます。先生たちが、体験をつじてプログラミングを学ぶことの大切さを知ることも、プログラミン教育の成否にはおおいにかかわってきそうです。

参考資料
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引き(第二版)」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/06/1403162_02_1.pdf
文部科学省 2016年6月16日発表「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm
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