科学技術のアネクドート

「ついに」に期待、「ようやく」に不満


世の中では、不祥事や問題行動が明らかにされた人に対して「その役職を辞めろ」という圧力のようなものが加わります。「辞めるべき」と評価されてしまった人がなかなか辞めないでいると、「さっさと辞めたら」といった圧力が強くなります。そして、いざその人物が役職を辞めることになると、「ついに辞めたか」「ようやく辞めたか」といった世間の意見が聞かれるようになります。

そうした世間のありかたについてはさておき、「ついに」と「やっと」はよくにた副詞です。では、どちらにどんな意味あいがともなうでしょうか。

「あの人、ついに辞めたか」
「あの人、ようやく辞めたか」

「ついに」のほうは、期待が高まりつづけた末に、その期待が現実のものになり、達成感を得られたような語感があるのではないでしょうか。「辞めてほしい」という期待が強まる一方だったなかで、「ついに辞めたか」というわけです。

いっぽう、「ようやく」については、こちらも期待をしつづけていたことがあるけれど、それがなかなか実現しないため、期待が不満が募っていたところ、その期待が現実のものになり、溜飲を下げることができたような語感があるのではないでしょうか。「辞めてほしい」のに辞めないという不満が強まる一方だったなかで、「ようやく辞めたか」となるわけです。

つまり、実現されていなかったことに対する心の状態が「期待」か「不満」かでいえば、「ついに」は「期待」のほうであるのに対し、「やっと」は「不満」のほうであるというわけです。

ほかの例でも、「ついに」と「ようやく」の意味あいのちがいがうかがえます。

「彼は、ついに成功をおさめた」
「彼は、ようやく成功をおさめた」

なお、「ついに」は「終に」「遂に」「竟に」などと書き、「とうとう」と極めて意味が近いとされます。ただし、「ついに」のほうは、期待していたことが達成されるだけでなく、達成されなかった場合にも使うのに対し、「とうとう」のほうは、達成された場合のみにも使われる傾向があるといったちがいはあるようです。

また、「ようやく」は「やっと」と極めて意味が近いとされます。どちらも「漸く」「漸と」のように、「漸」の漢字が使われます。

参考資料
デジタル大辞泉「ついに」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/146107/meaning/m0u/ついに/
デジタル大辞泉「ようやく」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/226831/meaning/m0u/ようやく/
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寺の境内に神輿


東京・浅草の界隈で「三社祭」がおこなわれています。2018年は、5月17日(木)から始まって、20日(日)の夜までくりひろげられます。

数々の神輿が街をめぐったあと雷門の前へ。それぞれの神輿のまわりでは三々五々に三本締めの乾いた音が空に響き、そして、すべての神輿で一斉に三本締め。そして、天井に上げられて傘の短くなった大提灯の下を通り、仲見世通りを進んでいきます。このまま進んで浅草寺境内へ。

こうした風景は、いかにも日本の祭という印象をあたえます。しかし、よくよく考えると、「あれ、ちょっと不思議だな」と感じる人もなかにはいるかもしれません。

浅草寺は「寺」です。ご本尊は、聖観世音菩薩。つまり観音様。仏教の世界で存在の欠かせない菩薩です。いっぽう、御輿を担いでの祭というものは、一般的に神様を奉るもの。広い意味での神話の世界での神々が主役となるはずです。

三社祭では、仏教の寺の境内で、神を奉る神輿が進んでいくわけです。

では、三社祭で奉られる神々は、どこの神々なのか。三社祭で担がれる主となる神輿は「浅草神社」に奉納されているもの。浅草神社は、浅草寺のすぐ北東にあります。

では、浅草寺と浅草神社の関係はどうなのかというと、1400年ほど前、海から漁師たちが引きあげた観音像を奉ったのが浅草寺とされます。そして、その観音像を引きあげた3人の漁師を神として建立された神社が、浅草神社であるとのこと。

「三社祭」の「三社」は、この3人の神、つまり漁師たちに由来するものとされます。

三社祭の主催者は浅草神社。しかし、浅草神社と浅草寺はほど近く、浅草寺の境内は浅草を象徴する“広場”のひとつ。浅草寺の境内に神輿を入れることなく三社祭をおこなうことは、むしろおかしなことになるのかもしれません。

しかし、浅草寺は、あくまで三社祭を“協力”する立場。「祭の場所を貸してあげている」
という見方もできます。実際、浅草寺側は、三社祭に対して、境内を出ていく「宮出し」の時刻について、早めてもらうよう要求を出しているという報道もあります。

ともあれ、「寺に神輿」の組みあわせに不思議さを感じるような人はあまりいないのかもしれません。日本人にとって、仏様と神様の区別はかなり曖昧なものです。

参考資料
浅草神社「三社祭とは」
https://www.asakusajinja.jp/sanjamatsuri/about/
ウィキペディア「浅草神社」
https://ja.wikipedia.org/wiki/浅草神社
Newsポストセブン 2018年5月16日付「浅草の三社祭が『今年で最後』の危機 浅草寺が時間と場所を制限」
https://www.news-postseven.com/archives/20180516_675056.html
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「遣る」「繰る」で「やりくり」


ふつうは、ひらがなで書かれているため、漢字で書かれると「そういう漢字が使われているのか」と気づかされることばがあります。そして、漢字での書かれかたを知ることで、そのことばの真の意味に近づけることもあります。

「やりくり」ということばがあります。あれこれと工夫をして都合をつけることをいいます。

「やりくり」を漢字も使って書くと「遣り繰り」。これは明らかに「遣る」と「繰る」ということばが連なったものとわかります。

「遣る」には、「子を大学へ遣る」のように、「そこに行かせる」といった意味がありますが、それ以外にもさまざまな意味があります。

そのなかのひとつに「どうにか生活する」という意味があります。たとえば「この給料では遣っていくのがむずかしい」のように使われます。また、物事をうまくなしとげるという意味でも「遣る」は使われます。よく人は「ついに、やった!」とうれしがりますが、これは「ついに、遣った!」ということです。

いっぽう「繰る」には、「細長いものをなにかに巻きつけたりまとめたりする」といった意味がありますが、意味はそれだけではありません。

たとえば、「送り動かして移動させる」といった意味があります。「数珠を繰る」や「雨戸を繰る」のように使います。いま、この意味で「繰る」を使っている人はそう多くはなさそうですが。

これらの「遣る」と「繰る」の意味からすると、「遣り繰り」の本来的な意味は、「どうにかうまくこなしたり、ものごとを動かしたりする」といったことになるでしょうか。

あるいは、「遣る」を「そこに行かせる」という意味で捉えれば、「ものごとを向こうに行かせたり、こっちに越させたりする」といった解釈もできそうです。こちらのほうが、「遣る」も「繰る」も「動かす、移す」という似た意味で並列的に使われているので自然な解釈かもしれません。

「やりくり」をするにしても、使える資源に限りはあるわけです。そのかぎられた資源を、まさに向こうに行かせたり、こっちに越させたりして、最大限に有効活用するというのが「やりくり」の本義となるでしょうか。

国語辞典には、「やりくり」は「不十分なものをあれこれ工夫して都合をつけること」とあります。

参考資料
デジタル大辞泉「やりくり」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/223364/meaning/m0u/
デジタル大辞泉「遣る」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/223431/meaning/m0u/遣る/
デジタル大辞泉「繰る」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/64277/meaning/m0u/繰る/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
サイズが揃っていても自分に合う服があるとはかぎらない


写真作者:Jonathan Mueller

世のなかには、とくに問題にとりあげられなくても、多くの人が「むずかしい」と感じているようなことはあるものです。たとえば、路線バスやローカル線の運賃の支払いかたなどはその典型でしょうか。

服の試着から購入までの一連の作業も、かなりの人が「むずかしい」と感じているのではないでしょうか。なにがむずかしいかといえば、「自分のからだの寸法に合った服を買うのがむずかしい」ということです。

人がスーツやジャケット、またビジネスパンツなどを買おうとするときは、たいてい試着します。自分の体型に合った服を買って着るため、あるいは自分の体型に合わない服を着ることになって嫌な思いをするのを避けるためです。

試着したときから、「これは自分にぴったりだ」と感じられれば幸運です。しかし、そうは問屋がおろしません。Mサイズを試着して「ちょっと袖が短いな」などと感じたら、ひとサイズ大きなLサイズを試着して「これだとちょっとぶかぶかだ」などと感じ、どちらにするか迷う、といった人も多いことでしょう。

たいていの売られている服は、「その人」の体型でなく、「人びと」の体型を考えてつくられるもの。かならずしも「その人」のからだにぴったりくる服ばかりではありません。たとえば、試着したLサイズのスーツの胸まわりはまあ合っていそうだけれど、腕と手にくらべて袖が長いため、手を下ろすと袖が手の甲まで達してしまうといったこともあるわけです。

自分の体型がその服にほんとうに合っているのか。それを、試着というほぼ”一瞬”の機会に見さだめて、買うかどうか、あるいはどのサイズを買うかを選ぶわけですからむずかしい。ほんとうは、丸一日ぐらい着てみて、ようやく自分の体型に合っているかがわかってくるものであるはずなのに。

しかも、試着するとき、かならずしも店員が味方になってくれるとはかぎりません。たとえば、客がLサイズの服かMサイズの服かで迷っているとき、その店にLサイズしか在庫がなければ、多くの店員は「このような服は、若干余裕をもたせて着るのが普通ですよ」などと言ってくることがあります。なかには「Lサイズだとちょっと大きいですね。あいにくMサイズがないので、ほかの店舗に在庫があるかお調べしましょうか」などと言ってくる親切な店員もいるでしょうが。

かならずしも、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ、XLサイズのようにサイズの種類が揃っていても、そのなかに自分の体型に合う服があるとはかぎらないわけです。どちらのサイズにするか迷っているときは、「うーん……、Lサイズで!」などと即決はしないで、「サイズが微妙なので、ちょっと考えます」と、買わずに立ちどまっておくほうが無難かもしれません。

| - | 18:51 | comments(0) | trackbacks(0)
空の“車検”、年一度の更新が不要になる場合も

写真作者:rurinoshima

自動車を定期的に検査しなければなりません。「車検」といいます。道路運送車両法という法律で定められています。車検の結果、その自動車が保安基準に適合したときは、「車検証」という証明書があたえられます。

自動車とおなじく、航空機も乗りものです。「車検」とおなじように、検査によって安全性を保つしくみがあります。これを「耐空証明」といいます。航空機に対して、安全性のほか、騒音や発動機からの排出物にかかわる基準に適合していることを、国土交通大臣が証明するのです。耐空証明があたえられない航空機を航空に使うことはできません。これらは「航空法」という法律で定められています。

自動車の車検では、車検証の有効期限は新車登録から2、3年ほどで、それ以降は2年となっています。いっぽう、飛行機の耐空証明の有効期限は、通常は1年と定められています。

ただし、耐空証明の有効期限については例外的な措置もあります。それは、「連続式耐空証明」とよばれるもの。

過去に国土交通省は、航空機安全課長から「航空運送事業の用に供する航空機の耐空証明の有効期間について」という通達を、航空業界に向けてしています。この通達に書かれているのは、航空機とそれを使う航空会社の整備体制が一定の基準を満たせば、耐空証明の有効期間を「航空運送事業者の整備規定の適用を受けている期間」と
定める、というもの。この連続式耐空証明があたえられることにより、1年に一度、更新する必要がなくなるのです。

これは航空会社にとっては意味の大きなもの。通常どおり耐空証明を得るとなると、1機につき年間3日から4日、そのために航空機を飛ばせなくなるからです。

航空会社は、航空機を使えない期間をできるだけ短くすべく、連続式耐空証明を得ようとしてきました。従来、連続式耐空証明は大手の航空会社にあたえられるものでしたが、近ごろは大手だけでなく、格安航空会社や地方都市間航空会社なども連続式耐空証明を得ることに成功しています。

連続式耐空証明を得るということは、高い安全性などが認められたことも意味します。航空会社にとっては、年一度の更新をせずに済むし、整備面などでの安全性を高らかに宣伝できるし、よいことがたくさんあるわけです。

参考資料
国土交通省航空局航空機安全課 2008年4月「航空運送事業の用に供する航空機の耐空証明の有効期間に関する通達の改正について」
http://www.mlit.go.jp/common/000014143.pdf
フジドリームエアラインズ 2018年4月6日発表「独立系リージョナルエアラインとしては日本初となる連続式耐空証明の取得について」
http://www.fujidream.co.jp/company/press/doc/180406_new.pdf
トライシー 2015年10月23日付「ピーチ、連続式耐空証明を日本の航空会社として最速で取得 毎年の更新検査不要に」
https://www.traicy.com/20151023-17
ウィキペディア「耐空証明」
https://ja.wikipedia.org/wiki/耐空証明
JAFクルマ何でも質問箱「車検の有効期間は何年ですか?」
http://qa.jaf.or.jp/car/carinspection/01.htm
| - | 20:33 | comments(0) | trackbacks(0)
(2018年)5月18日(金)は「リスコミセッション」


催しものの案内です。

(2018年)5月16日(水)から18日(金)にかけて東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開かれる「第23回国際食品素材/添加物展・会議」において、最終日の18日(金)15:30より、展示会場内セミナーのひとつとして「リスコミセッション」がおこなわれます。主催は「くらしとバイオプラザ21」。

「リスコミ」とは「リスクコミュニケーション」のこと。一般的に、健康への影響が心配されることがらについて、それに携わる人たちが情報を共有し、意思疎通をはかって対策を進め、リスク低減にとりくむことをさします。

主催のくらしとバイオプラザ21は、社会全体のバイオテクノロジーへの理解を深め、バイオテクノロジーの健全な発展を促進し、社会全体の公益の増進に寄与することを目的とする特定非営利活動法人。この目的のために、一般の人びとに、科学的でわかりやすく、生活者の視点からバランスのとれた情報発信をおこない、また一般の人びとと双方向のコミュニケーションをおこなっています。

例年、同会は「リスコミセッション」を開催していますが、2018年の今回の中心テーマは、遺伝子組みかえ食品。基調講演がふたつあります。

ひとつは、「気になる食品表示制度改正のポイント 遺伝子組換え表示と添加物表示の今後」(仮)という講演で、フード・コミュニケーション・コンパス代表の森田満樹さんが登壇します。

消費者庁は、遺伝子組みかえ食品の表示についての検討を重ねてきました。早ければ、2018年度に食品表示基準が改正されるといいます。検討会は、これまで、遺伝子組みかえ食品の混入率が重量比で5パーセント以下であれば「遺伝子組換えでない」と表示できていたのを、「不検出」に厳格化する報告書をまとめるなどしています。

森田さんのおもな研究領域は、食品表示、食品安全、リスクコミュニケーション。専門家の観点から、食品表示制度改正のポイントが語られそうです。

もうひとつは、「知っておきたい海外の遺伝子組換え食品関連の規制」(仮)という講演で、名古屋大学大学院環境学研究科教授の立川雅司さんが登壇します。

遺伝子組みかえ食品についての規制をめぐっては、「新しい育種技術」とよばれる技術が遺伝子組みかえ技術にふくまれるのかをめぐって、各国が判断を下しはじめているところ。「新しい育種技術」とは、分子生物学的な手法を組みあわせた品種改良技術のことで、代表例はゲノム編集です。

立川さんは、バイオテクノロジーなどの技術が農業・食料に対して及ぼす影響について、農業・食料社会学的観点から研究している人物。2016年にはJBpress「食の研究所」の取材にも応じています。前篇はこちら後編はこちら

新たな制度や技術というものは、関心をもっていないと、自分の知らぬ間に始まり、気がつけば暮らしのなかに入っているようなもの。このような食をめぐるリスクコミュニケーションの催しものに参加することから、自分の関心が高まっていくということもあるのではないでしょうか。

くらしとバイオプラザ21主催の「リスコミセッション」は、5月18日(金)15:30から16:50まで、東京国際展示場「第23回国際食品素材/添加物展・会議」の「食の安全・科学ゾーンセッション会場」でおこなわれます。聴講は無料ですが、展示会に入るには入場料または招待券が必要です。

「くらしとバイオプラザ21」のフェイスブックによる「リスコミセッション」の案内はこちらです。
https://www.facebook.com/events/314611179063894/

「第23回国際食品素材/添加物展・会議」の公式サイトはこちらです。
https://www.ifiajapan.com

参考資料
JBpress 2018年2月23日付「『遺伝子組換えでない』と言える混入率は何%まで?」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52404
毎日新聞 2018年3月14日付「遺伝子組み換え食品『なし』表示、来年度にも厳格化」
https://mainichi.jp/articles/20180315/k00/00m/040/063000c
| - | 15:52 | comments(0) | trackbacks(0)
「科学ジャーナリスト賞2018」特別賞の森裕美子さん「科学コミュニケーションをする人は、まちがえているときがあるのでは」
「科学ジャーナリスト賞2018」では、「特別賞」が、「理科ハウス」の館長をつとめる森裕美子さんに贈られました。“世界一小さな科学館”の設立・運営に対してです。同賞で特別賞が贈られるのは、2015年に東京理科大学近代科学資料館代表の大石和江さんに贈られて以来、2度目のこと。

理科ハウスは、神奈川県逗子市にある私設の科学館。館長の森さんと、学芸員の山浦安曇のふたりで運営しています。贈呈式では、ふたりが壇上にあがり、スピーチと実演をしました。下記はその一部抜粋です。


山浦さんと森さん

「きょうはどうもありがとうございました」

「来週(2018年5月)16日、理科ハウスは創立10周年を迎えます。こんなよいタイミングでこの賞をいただけるのは、ほんとうにうれしいことです。理科ハウスを始めたときの目標が『10年続ける』だったので、目標が達成されてよかったなと思いましたが、この賞をいただいて『(運営を)やめるわけにはいかない。続けていかなければ』と思っています」

「理科ハウスでやっている展示を持ってきましたので、みなさんいっしょにどうぞ」

「丸い箱に、ピンポン玉が、白いのとオレンジ色のが合わせて10個、入っています。オレンジ色の球が何個あるかを当ててください」

「方法は、箱から1個とりだして、色を確認したら、箱にまた戻し、これを10回やるというものです。白いのが何回、オレンジ色のが何回出たかで、オレンジ色の球の数を予想するのです」

「ひとりだと、なかなか当たる確率がすくないものです。家族や親子など3人ぐらいでやると、ちょっと正解に近づくかなと」

「たとえば、3人でやって、つぎのような結果になったとします。Aさんは白いのが6個、オレンジは4個。Bさんは白8個、オレンジ2個。Cさんは白6個、オレンジ4個。全員あわせると白が20個で、オレンジが10個。オレンジは何個、入っていると考えたらよいですか」

「3個だと思う人、手をあげてください。では、4個だと思う人、手をあげてください。それ以外と思う人、手をあげてください……」

「私は、平均値を計算する練習いこれはいいかなと思って、『3個と答えてくれるだろう』と思ってやっていました。そうしたら、来館者の人ほとんどが『3個』とは言わないんですね。普通に計算すれば『3個』なのに。『どうして(3個ではないの)』と聞くと、『取るときに偏って取ったから』とか『(出題するのは)理科の人たちだからなにかあるにちがいない』とか、すごくいろいろな理由を言います」

「私はびっくりしました。人は、科学的なスイッチが入って科学的に答えてくれるものだと思っていましたが、ぜんぜんちがったのです。『科学的なスイッチが入るということはないのだ。科学コミュニケーションをする人は、まちがえているときがあるのでは』と自分自身、反省しました。『これはいかん。みんなの意見を聞かないと。答を先に言ってはいけない』と思ったのです」

「理科ハウスのだいたいの展示には答が書かれていません。さきに来館者の意見をどんどん聞くようにしていますが、そういう形での展示がほとんどです。科学的な考え方をいつもみんながやっているわけではないというのを、逆に私が教えてもらいました」

「(このピンポン玉の展示を)やっているときに、STAP細胞のニュースがありました。(展示を使って)『科学的な考え方とはこういうこと』と説明できたのでばっちりでした」

「理科ハウスは、お客さんとのやりとりのなかで展示が進化していきます。私たちも勉強させてもらい、変化していく、おもしろい場です」

「理科ハウス」のホームページはこちらです。
http://licahouse.com

日本科学技術ジャーナリスト会議「『科学ジャーナリスト賞2018』が決まりました」のお知らせはこちらです。
https://jastj.jp/info/20180425/

大賞、賞、特別賞それぞれの受賞者みなさん、おめでとうございます。
| - | 13:50 | comments(0) | trackbacks(0)
「科学ジャーナリスト賞2018」安部康之さん「彼らは『儲かるからやる』と」
「科学ジャーナリスト賞2018」では、日本放送協会(NHK)政治・国際番組部ディレクターの安部康之さんと、同番組部チーフプロデューサーの相沢孝義さんにも「賞」が贈られました。テレビ番組「クローズアップ現代+」の2017年12月4日放送分「中国“再エネ”が日本を飲み込む!?」の番組に対してのものです。

安部さんによる受賞スピーチの一部抜粋です。


安部さん(左)その右横がもう一人の受賞者の相沢さん

「歴史と名誉のある賞をいただき、たいへん恐縮しています」

「僕は文系で、科学とはななか縁遠い人間でした。(中国の再生可能エネルギーという)このテーマに出会ったのは、昔の仲間との飲み会です。気象予報士が、『じつは中国の人が気象データを買いにくる。風力発電をやりたいんだよね、と』と言ったので、『それ、なに』となり企画を考えはじめました。私はNHKの福島放送局出身で、福島に行ったことや気象予報士の話を聞き、企画がふくらみ、番組まで行きつきました」

「中国に行き、再生可能エネルギーの現場や企業で取材をすると、善し悪しはべつにして、彼らは『儲かるからやるんだ』と言っています。『再生可能エネルギーには未来がある。いまは安い。なぜ選択しないんですか』と」

「この番組をつくって、いろいろな反響がありました。印象的なのは、聞いたところ、霞が関に衝撃が走ったという話です。送電線の系統の接続問題は、いろいろある問題のひとつと言われていましたが、すごく大事なことなのだと認識されるようになったのは、やりがいがあったと思います」

「私たちが勇気をもって一歩を踏み出せるかは、じつは3・11のときに私たちに突きつけられた宿題だったのではないでしょうか。いろいろな選択肢がありますが、以前のとおりのことをやっていて本当によいのか、真剣に考えなければいけないと思いながら、番組を制作してきました」

NHKクローズアップ現代2017年12月4日(月)放送分「中国“再エネ”が日本を飲み込む!?」の番組ページはこちらです。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4072/
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
「科学ジャーナリスト賞2018」川端裕人さん「アジアの人類進化、だれも書いたことがないから書いた」
日本科学技術ジャーナリスト会議主催の「科学ジャーナリスト賞2018」では、「賞」が、きのう(2018年)5月11日(金)付のこのブログで紹介した佐々木芽生さんのほか、文筆家の川端裕人さんに贈られました。川端さんが講談社ブルーバックスから上梓した著書『我々はなぜ我々だけなのか』に対してです。

この本は、アジアの人類に光を当てて、「我々」サピエンスだけが残った理由や経緯などに迫るもの。国立科学博物館人類研究部に所属する海部陽介さんが監修をつとめています。

下記は川端さんのスピーチの一部抜粋です。


川端裕人さん

「このたびは栄えある賞をいただき、戸惑いつつも大いに感動しています。プロの書き手として評価されたのは、かれこれ20何年(のキャリア)でたぶん初めてとなります。ありがとうございます」

「今回、監修の海部陽介さんと密に連絡をとりあってきたこともあり、僕のなかではこの本は『海部さん本』でした」

「僕の(著者としての)名前で、海部さんから聞いたというかたちで本として出ることは、日本ではめずらしくあります。僕の知っているサイエンスライターには、ゴーストライターが数々います。宇宙本などのハードなサイエンス本を出している有名な先生の下で、専門的な原稿を書いている人がけっこういます。聞き書きで書いているわけです」

「たとえば、田中太郎さんがライターだとして、『田中太郎“フィーチャリング”アルバート・アインシュタイン』といった著者名の本が出たら、みなさんどう感じるでしょうか。実際、よく売れる本のつくりかたの7割はそのようなつくりかでされています。『なんであの(ライターの)人の名前が出ないのか。実力者なのに』という人の顔が何人か浮かびます。そうしたことをなんとかするような環境は、こういうことから始まるのかなと思います」

「僕がこの本を書けたのは、海部さんが忙しかったからだろうと思います。海部さんの活動をすべて知っている人は極めてすくなく、僕は割と知っているほうですが、それでもまだ発見することが多々あります」

「(僕は)サイエンス・ジャーナリズムはやがて溶けてなくなればいい、つまり(サイエンス・ジャーナリズムが)特別なことでではないと思う人が増えればいいと思っていますが、海部さんはそれを体現するようなことをしており、壁を崩しつつあります。日本では、考古学と人類学は、かたや理系、かたや文系でトレーニングされた人が別々に学のルートをつくってきました」

「海部さんは、考古学者たちと人類学者たちがいっしょになってものごとをやるようなしくみを大きくつくっています。そういうエキサイティングなことを考えている人に取材させていただきました」

「今回は、アジアの人類進化というテーマにフォーカスして書かせていただきました。いまだにだれも書いたことがないからです。アジアの猿人、たとえば21世紀になってから見つかった『ホビット』つまりフローレス原人などについて、いちばんよく知っている人が日本にいたりするのです。そういうところからの情報がまとまっていない状況がありました」

「僕は『ナショナルジオグラフィック』でインタビュー記事を連載していますが、海部さんと何度かお会いするうちに『おもしろいネタがある。川端さん、書きませんか』と言われました。そう言われたら書くではないですか。幸運な仕事をさせていただきました」

講談社による『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』の紹介ページはこちらです。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784065020371
| - | 19:36 | comments(0) | trackbacks(0)
「科学ジャーナリスト賞2018」佐々木芽生さん「正義の反対は悪ではなく、べつの正義」
「科学ジャーナリスト賞2018」では、「賞」が、ドキュメンタリー映画監督・プロデューサーの佐々木芽生(めぐみ)さんに贈られました。集英社から出版した著書『おクジラさま ふたつの正義の物語』に対してです。

『おクジラさま』は、2017年8月に出版されました。ほぼ時をおなじくして、佐々木さんが監督をつとめた同題のドキュメンタリー映画が2017年9月から全国で公開されました。佐々木さんは、映画を作るとともに本を作ったわけです。

佐々木さんは米国在住ながら、この期に来日して賞の贈呈式にのぞんだとのこと。下記は佐々木さんのスピーチの一部抜粋です。


佐々木芽生さん

「名誉あるしょうをいただき、心から感動しています」

「私にとって、映画は3本目、書籍は初の書きおろしでした。この本を書きあげられないんじゃないか。途中で苦しくて逃げようか。消えてしまいたいというくらい辛い思いをしました。しかし、(編集担当の)集英社クリエティブの(聡平)さんはじめ、みなさんに支えてくださり、辛抱強く我慢強くおつきあいくださったので完成して、たいへんな賞をいただくことができました。ありがとうございます」

「書籍のお話をいただいたのは2015年でした。映画(の「おクジラさま」)の制作中でした。2010年には映画『ザ・コーヴ』が発表されました。私は米国に30年住んでいて、議論をよぶ映画にはかならず賛否両論があるのに、捕鯨問題のテーマだけは捕鯨反対の意見しか出ません。この映画を観たときはあまりに衝撃的で、『このままではまずいのでは』となりました。喉に突き刺さる魚の小骨のようにずっと気になっていたテーマでしたが、『ザ・コーヴ』を見たとき、この『おクジラさま』を作る決意をしました」

「クラウドファンディングで資金集めをしていましたが、いろいろなニュースにとりあげていただき、そのとき森山さんが映画のことを知ってくださり、『書籍にしてみませんか』とメールを頂戴しました。映画だけでもたいへんだたので、書籍なんてとんでもないからお断りしようと思って集英社に向かいましたが、みなさんに説得していただき、(集英社を)出るときは『書きます』と返事してしまいました」

「取材を始めたころは、怒りでいっぱいで、『ザ・コーヴ』や反捕鯨に反論してやるという気持ちがありましたが、取材をして映画で6年、書籍を入れて7年、『これはちょっとちがうんじゃないか』と考えるようになりました。どっちが正しくて、どっちがまちがっているという問題ではない。正義の反対は悪ではなく、べつの正義である、と。それぞれの正義をうち負かそうとするのではなく、嫌いながらも共存していかなければならない。排除するのでなく共存するという考え方が大事なのではということを『おクジラさま』から学ばせていただきました」

「科学では割りきれないのではないかというメッセージなのに、科学ジャーナリスト賞をいただき光栄に思っています。ありがとうございました」

佐々木さんの著書『おクジラさま ふたつの正義の物語』の集英社による紹介ページはこちらです。
http://gakugei.shueisha.co.jp/kikan/978-4-08-781608-2.html

映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」の公式サイトはこちらです。
http://okujirasama.com
| - | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0)
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