2012.01.28 Saturday
ものごとを正確に測ることは難しい――不確定性原理の新展開(2)

ドイツの物理学者だったウェルナー・ハイゼンベルクは「物の位置と運動量の両方を正確に得ることはできない」と唱えました。運動量とは、重さと速さを掛けあわせた量のこと。
たとえば、Aさんという人が、電子くらいの大きさしかない小さな粒について「位置」と「運動量」を測ろうとしたとします。
粒の位置それに運動量は、その粒に光をあてて反射する情報から知ることができます。
そこでまずAさんは、電子くらいの小さな粒がどこにあるのか、その位置を測ることにしました。波長の短い光をその粒にあててみると、粒の正確な位置が測れることがわかりました。
しかし、この調子で粒の運動量も測ろうとすると問題が起きました。
波長の短い光というのは高いエネルギーをもつもの。この光をあてると、粒はひゅーんとスピードを上げて飛んでいってしまいました。粒を測るための道具である短い波の光が、粒の運動量を変えてしまったのです。
ならばということで、Aさんは、こんどは粒の運動量を測ろうとしました。さっきのように、光の高いエネルギーで粒が飛んでいってしまわぬよう、波の長い光を粒に当てました。
しかし、この調子で粒の位置も測ろうとすると問題が起きました。波長の長い光というのはきめ細かくありません。この光をあてても、粒のきちんとした位置までははかることはできないのです。
Aさんは思いました。「ハイゼンベルクの言うとおりだ……」。
そもそも「ものごとを正確に測る」ということはほんとうはむずかしいものです。
たとえば、「コップに入った水の温度を正確に測りなさい」という問題に対して、温度計をコップの水に入れて温度の値を見るとします。しかし、温度計がもっている熱が、コップのなかの水の温度を変えてしまうのは、かんたんに想像できます。
ハイゼンベルクは、「ものごとを測るということには限界があるのだ」という考えを物理学者たちに説明するために、この原理を式にして表しました。
「位置の測定誤差 × 運動量の測定誤差 ≧ プランク定数 / 4π」
大切なのは、この式が「≧」を境にした不等式で表されていることです。たとえば「x × y ≧ 1」という式を考えれば、xをいくら小さくしてもその分yが大きくなり、yをいくら小さくしてもその分xが大きくなることは明らかです。
おなじように、位置の測定誤差をいくら小さくしても運動量の測定誤差はその分だけ大きくなってしまい、逆に運動量の測定誤差をいくら小さくしても位置の測定誤差はその分だけ大きくなってしまう。このことをこの不等式は示しています。
こうしてハイゼンベルクの不確定性原理は確立されました。
この「あっちが立てば、こっちが立たず」を示す不確定性原理の式を書きなおしたのが、名古屋大学の小澤正直さんです。つづく。
参考記事
ウェブ論座 尾関章「教科書だって疑ってかかれ―不確定性原理考」
読売新聞 2012年1月16日付「不確定性原理に欠陥…量子物理学の原理崩す成果」








