科学技術のアネクドート

迷走する台風10号に対して擬人観

「台風10号」(ライオンロック)の2016年8月26日(金)正午現在の進路と進路予想
出典:気象庁ホームページ

人は、神話の時代から、自然のものに対して人の姿や性質を見いだすことをしてきました。こうしたことを「擬人観」といいます。たとえば、星座には、ポルックスとカストルのふたご座、ペルセポネの乙女座などの、ギリシャ神話に登場する人物(神)がよく出てきます。

日本でも、森羅万象のものには魂が宿るとするアニミズムの世界観が根づよくあります。月を「お月さん」とよんだり、落雷を「かみなりさま」とよんだりするのも関係しているでしょう。

インターネットでコメントを自由に書けるようになったことで、擬人観をことばで表す傾向は強くなっているのかもしれません。2016年8月、しきりに擬人的な表現がされているのが「台風10号」(ライオンロック)です。

8月19日(金)に伊豆諸島のはるか東で発生した台風10号は、通常の台風とは逆に、南東のほうへと進み、大東島地方に近づきました。そしてきょう26日(金)になり、進む方向を東に変えて、Uターンしはじめました。今後、本州のほうに近づいてくると予想されています。

この台風10号については、つぎのようなネット上のコメントが見られます。

「沖縄キャンプから帰ってくるんか」
「仲間はずれにされて戻ってきた怒りのライオンロック」

また、この台風の立場になって“心情”を代弁するようなコメントも見られます。

「台風10号『あぁ、忘れ物、忘れ物〜っ』」
「10号『お前らのために力をために行って来た!コロッケ買いに行く用意しとけ』」

気象学的には、日本の南の海上で真夏に発生する「モンスーン渦」とよばれる低気圧が台風の進路に影響しているのではないかとする専門家の見方などが報じられています。台風10号は、モンスーン渦の北のへりに沿って移動してきたとのこと。

しかし、多くの人は、擬人観で台風のことを見るのでしょう。とりわけ、通常とは進みかたが大きく異なる特徴的な台風に対しては、人間の行動にたとえずにはいられない人もいるようです。

台風10号は、これから東のほうに進み、さらにその後、北西のほうに進路をかえて、30日(火)から31日(水)ごろに本州にもっとも近づくことが予想されています。警戒が必要です。

参考資料
気象庁「台風情報」
http://www.jma.go.jp/jp/typh/16105.html
琉球新報 2016年8月21日付「モンスーン渦が進路に影響 例年より東側に」
http://mainichi.jp/articles/20160821/rky/00m/040/005000c
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「iPS細胞の何々」問題が記者を悩ます

写真作者:Jun Seita

京都大学の高橋和利さんと山中伸弥さんが執筆した「マウス胎児および成体線維芽細胞培養から特定因子による多能性幹細胞の誘導」(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)という論文が、米国の科学雑誌『セル』の2006年8月25日号に掲載されてから、10年となりました(電子版での発表は2006年8月10日)。

この論文で使われた「iPS細胞」ということばは、いまや社会であたりまえのように使われる科学用語のひとつとなっています。

しかし、10年が経っても、iPS細胞をめぐってなかなか定まらないこともあります。

この『セル』の論文では、山中さんらの研究チームが「iPS細胞」と名づけた多能性幹細胞をマウスからつくることができました、ということが書かれてあるわけですが、それをひとことで表そうとすると、どうなるでしょうか。

より具体的には、「iPS細胞の“何々”から10年」と表現しようとするとき、「何々」にはどんなことばを当てればよいか、という問題です。とくに、iPS細胞についての記事をつくる記者たちはかなり悩むようです。

「iPS細胞の作製から10年」でもよさそうではあります。iPS細胞をつくったのですから。しかし「作製」だけだと「初めてつくった」という意味あいがあまりでません。「自動車の作製から約250年」という表現にやや違和感があるのとおなじです。

すると……。

「iPS細胞の誕生から10年」が浮かんできます。しかし、「誕生」だと、iPS細胞が自然に生じるような意味あいが強まります。研究者の手によってiPS細胞がつくられたという語感を出すことができません。

そこで……。

「iPS細胞の樹立から10年」ではどうでしょう。「樹立」とはしっかりつくり立てること。実際「iPS細胞の樹立」は使われることもありますが、「樹立」はさほど頻出することばでないことや、細胞という生々しいものに対して使うことが一般の読者に通じるか不安なことなどから、ためらいをもつ記者はいるようです。

視点を変えて……。

「iPS細胞の発表から10年」とする手もあります。または「iPS細胞の論文発表から10年」とも。「iPS細胞をつくったと発表した」のですから、これでもよいわけですが、「つくった」の意味あいはやはり薄くなります。

となると……。

「iPS細胞の開発から10年」になるでしょうか。実際、この表現はよく使われています。しかし、国語辞典では「開発」に「役立つようにすること」や「実用化すること」の意味をもたせています。たとえば「ロケット開発」といえば、ロケットという新たなものを考えだして、実用化することとなります。『セル』に論文が発表された2006年8月の時点では、iPS細胞をつくっただけであり、実用化まではしていません。

最後に……。

「iPS細胞から10年」のように、なにも入れない場合もあるようです。ぼんやりとしますが、意味は伝わるので、これでよしとする人もいるのでしょう。

グーグルでの検索では、次のようになりました。

「iPS細胞の発表から10年」:1940件
「iPS細胞の開発から10年」:785件
「iPS細胞の誕生から10年」:6件
「iPS細胞から10年」:4件
「iPS細胞の論文発表から10年」:3件
「iPS細胞の作製から10年」:2件
「iPS細胞の樹立から10年」:1件

今後も「iPS細胞の“何々”」問題はつづきます。なにを伝えるかを考えて、場面ごとにもっともふさわしいことばを選ぶというのが、現実的な解決策といえそうです。
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新聞での書きかたを外の人びとに示す


企業がもっている仕事の進めかたを、その企業の外側の人びとに提供あるいは還元することがあります。きちんとしたかたちで提供するとなれば、たいていはお金で買ってもらうことになりますが。

通信社の共同通信社が出している『新聞用字用語集 記者ハンドブック』もその一例といえます。

これは、共同通信社の記者たちが、自分で原稿を書いたり、ほかの人の原稿を編集したりするときの「書きかたの基準」が書かれたもの。1956年に出版されました。そして2016年3月に13版がでました。改訂が12回おこなわれたことになります。

本の中心となるのは、書名にもある「用事用語集」。つまり、文字やことばの使いかたが示されている一覧です。

たとえば、「いま」ということばに対しては、「いま・今 今時分、今しも、今どき、今なお、今に・いまに、今にして、今風、今もって、今や・いまや、今様、今を時めく 〔注〕「いま一度、いま一歩、いまひとつ」などは平仮名書き。」と記されています。一般的に「いま」をひらがなで書く人も、漢字で書く人も両方いますが、共同通信の記者たちは、上記のように用いているわけです。

新聞に載る記事をつくる記者に向けてつくられた本なので当然ですが、「新聞」を意識した項目もあります。冒頭のほうにあるのは「新聞記事の大原則」。「新聞記事は、日常一般に使われる標準的な分かりやすい口語体を使い……」といったことが書かれてあります。

四つある「大原則」のなかには、通信社や新聞社に寄稿する立場のもの書きなどにもかかわるものもあります。

「社外執筆者の署名原稿については、本社の原則によることを要請するが、筆者が強く希望する場合は例外的表記を認める」

よっつのうちのひとつにこれが掲げられているということは、社外執筆者の書きかたをかなり尊重していることがうかがえます。

さらに、つぎのページの「記事の書き方」という項目には「記事では、結論を先に盛り込むなど、重要な要素から順に書いていく『逆三角形』の文体とするのが大前提となる」といったことも書かれています。

ときに「マニュアル」というものは、使う人にマニュアル以外のことをさせなくさせるとして批判の的になります。ただし、それはその現場での臨機応変な接客などをする場合でのこと。記者が書くときに使うこうした「ハンドブック」に、その批判が当てはまるかというと、そうはなりますまい。記事が載る新聞などの媒体においては、表現が統一されていればいるほど、読者にとって読みやすいものになるからです。

通信社が「ハンドブック」を出すことの利点は、社会的には多くの媒体でことばづかいの統一がはかられうること、社内的には本として出版して利益を得られることといえましょう。

参考資料
共同通信社『第13版 新聞用字用語集 記者ハンドブック』
https://www.amazon.co.jp/dp/4764106876/
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「科学ジャーナリスト賞2017」推薦作品を募集中


日本科学技術ジャーナリスト会議は「科学ジャーナリスト賞2017」の推薦作品を募集しています。

科学ジャーナリスト賞は、科学技術に関する報道、出版、映像などで優れた成果をあげた人を表彰するもの。前回の「2016」では『生命の星の条件を探る』(文藝春秋)を著した東京大学理学系研究科准教授の阿部豊さんに大賞が贈られました。

受賞者は原則として個人(グループの場合は代表者)で、新聞、テレビ、ラジオ、出版といったマスメディアでの活動だけでなく、ウェブサイトや博物館での展示などまで幅広くとらえ、また、優れた啓蒙書を著した科学者や科学技術コミュニケーターなども対象としています。

また、「日本科学技術ジャーナリスト会議が設けた賞であることから、社会的なインパクトがあることを重視して選考されます」とのこと。

推薦のあった作品は、日本科学技術ジャーナリスト会議の会員複数名によって査読などの審査がなされて評点がおこなわれ、一次選考会の参考にされます。そして、一次選考を通過した作品10点ほどが、二次選考会へと進みます。二次選考会では、科学ジャーナリスト賞の外部選考委員と内部選考委員が選考し、最終的に大賞や賞が贈られる作品が決まります。

「科学ジャーナリスト賞2017」の対象となる作品は2016年1月から2076年1月末までのもの。推薦のしめきりは2017年1月31日となっています。

過去には、青山学院大学教授の福岡伸一さんや作家で医学博士の海堂尊さんなども受賞しています。

応募のしかたなど、詳しくは科学技術ジャーナリスト会議の「科学ジャーナリスト賞」ホームページをご覧ください。こちらです。
http://jastj.jp/jastj_prize
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海の資源を活かすとりくみ多く――ご当地エネルギーとりくみ事情(九州・沖縄編)


各都道府県でのエネルギーについてのとりくみを紹介してきました。最終回は、九州・沖縄編です。

福岡県では、豊前市内の九州電力豊前火力発電所で、蓄電システムの実証研究がおこなわれています。九州電力がおこなうもので、ナトリウム・硫黄電池の入ったコンテナ252台を並べ、世界最大級の30万キロワット時を供給します。

佐賀県では、唐津市沖の海上で、浮体式潮流・風力ハイブリッド発電の実証事業が2012年度から2015年度にかけておこなわれました。三井海洋開発が事業としておこなったもので、潮流発電と風力発電を組み合わせた発電方法です。

長崎県では、五島市の前山漁港の沖で浮体式洋上風力発電の実用化がなされました。2016年4月、戸田建設の小会社の五島フローティングウィンドパワーと五島市が発表したもので、出力規模は2メガワットです。浮体式洋上風力発電の実用化は国内初とされています。

熊本県では、天草市内に藻類からバイオ燃料をつくるための研究施設が置かれています。デンソーが2016年7月に開所したもので、培養技術を2018年には確立する予定とのこと。

大分県では、佐伯市でスマートコミュニティの社会実験がおこなわれています。「大分県エネルギー産業企業会 電力自由化ワーキンググループ」の活動事業で、電力需要のシミュレーションと、HEMS(Home Energy Management System)を使ったサービスの実証実験を目的としています。

宮崎県では、えびの市で地熱資源の調査が進んでいます。アストマックス・トレーディングが石油天然ガス・金属鉱物資源機構の「地熱資源開発調査事業費助成交付事業」に採択されたもの。2016年7月から2017年2月までに坑井掘削、物理探査、温泉モニタリング調査などをします。

鹿児島県では、薩摩川内市に属する上甑島で、電気自動車を蓄電池に利用して電力を賄うとりくみがおこなわれています。日産自動車と住友商事が共同出資するフォーアールエナジーが2016年3月から実施している事業で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを蓄電して、島内の系統とつないでいます。

沖縄県では、久米島町で海洋温度差発電の実証研究が進められています。沖縄県海洋深層水研究所が2013年4月から稼働させているもので、表層水と深層海水を使って発電し、実際の系統に連携させています。

九州は四方を海に囲まれていることもあり、海の資源を活かしたとりくみが多く見られました。これらのとりくみは、5年後、10年後、どのように実を結んでいるでしょうか。

参考資料
朝日新聞 2016年3月4日付「蓄電システム、実験開始 世界最大級、九電・豊前発電所内」
佐賀県「三井海洋開発株式会社」
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00331570/3_31570_12_modec.pdf
戸田建設 2016年4月15日発表「国内初の浮体式洋上風力発電設備を実用化」
http://www.toda.co.jp/news/2016/20160415.html
新電力おおいた「スマートコミュニティ社会実験in佐伯市」
http://www.pps-oita.com/scsis_info.html
スマートジャパン 2016年7月29日付「宮崎県えびの市で地熱発電の調査が開始、調査井を掘削へ」
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1607/29/news043.html
朝日新聞 2016年5月16日付「小さく始め、普及ねらう 再生エネ、EV電池に蓄電」
IHIプラント建設、ゼネシス、横河ソリューションサービス 2015年3月「平成36年度海洋深層水の利用高度化に向けた発電利用実証事業 業務報告書」
http://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/seisaku/kiban/oceanrenewableenergy/documents/h26houkokusyo1.pdf
| - | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0)
ため池や、みかんの搾りかすをエネルギーづくりに活かす


各都道府県のエネルギーについてのとりくみを紹介しています。今回は、中国・四国編です。

岡山県では、美咲町にある岡山県農林水産総合センタ􏰀ー畜産研究所に、畜産バイオマス利活用実証展示施設が置かれています。同センターと岡山大学環境生命科学研究科が共同研究しているもので、家畜の糞尿や生ごみなどのバイオマス資源を活用してメタン発酵によるバイオガスの発生や、そのガスを利用した燃料電池の開発などにとりくんでいます。

鳥取県では、鳥取市内の鳥取ガスで水素エネルギーの実用化に向けた実証実験がおこなわれます。2016年1月に県が鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスと「水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト」の協定を結んだもの。水素ステーションなどを設けたり、スマートハウスを整備したりします。

広島県では、大崎上島町に石炭ガス化複合発電の実証施設がつくられ、試験が行われています。大崎クールジェンが2012年よりとりくんでいる「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」で、石炭をガス化してガスタービンで発電し、さらに熱から水蒸気をつくって水蒸気タービンでも発電。さらに過程で登場する水素を使って燃料電池による発電もくみあわせることをねらっています。

島根県では、西ノ島町でハイブリッド蓄電池システムの実証事業がおこなわれています。2014年から中国電力がとりくんでいるもので、ナトリウム・硫黄電池と、リチウムイオン電池という異なる種類の蓄電池をくみあわせ蓄電システムを設置します。隠岐諸島全体で8000キロワットの再生可能エネルギーの受けいれをめざしています。

山口県では、山陽小野田市に竹バイオマス発電所がつくられる予定です。藤崎電気(阿南市)が2017年1月に操業を始める予定で、竹を燃やすことで電気を生み出します。一般家庭4680世帯分の年間電力量に相当する電力を発電する予定です。

香川県では、高松市内のため池に日本最大級の水上太陽光発電が設置されました。ウエストエネルギーソリューション(広島市)がため池25万平方メートルの一部を借りて、水面に太陽光発電パネルおよそ1万枚を浮かべます。

徳島県では、石井町の施設でイカダモを育てて、藻類バイオマス燃料をつくるための研究がおこなわれています。四国大学短期大学部教授の西尾幸郎さんらが研究しているもの。水温40度から氷が張るほどの低温まで、温度変化に強いのがイカダモの特徴ということです。

愛媛県では、松山市の工場でみかんの搾りかすを原料とするバイオエタノールの実証プラントが稼働しています。「ポンジュース」でおなじみのえひめ飲料が2010年10月に、松山工場内で始めたものでつくったエタノールは、ジュースづくりのための燃料などに使われます。

高知県では、梼原町が自然エネルギーを活かす町づくりを進めています。風力発電、太陽光、木質バイオマスなどを導入しており、2050年にエネルギー自給率100パーセントをめざしているとのことです。

ため池やみかんの搾りかすの活用といった、ご当地ならではのとりくみも見られます。話題性があるためニュースなどでとりあげられやすいということもあるのでしょう。次回は、最終回、九州・沖縄編です。

参考資料
岡山県農林水産総合センタ􏰀ー畜産研究所・岡山大学大学院「畜産バイオマスからの新エネルギー・資源回収技術の開発」
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/457740_3161511_misc.pdf
鳥取県、鳥取ガス、積水ハウス、本田技研工業 2016年1月25日発表「『水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト』協定を締結」
http://www.honda.co.jp/news/2016/c160125b.html 
中国電力 2015年9月30日発表「隠岐諸島におけるハイブリッド蓄電池システム実証事業の開始について」
http://www.energia.co.jp/press/15/p150930-1.html
藤崎電気「バンブーバイオマス発電所」
http://www.fujisakikk.co.jp/bamboo
ウエストホールディングス 2015年11月18日発表「日本最大の水上メガソーラーを香川県高松市のため池に建設します」
http://www.west-gr.co.jp/news/detail.php?id=480
朝日新聞 2015年8月31日付「燃料源、藻のすごい力 太陽光と水使い、効率よく油成分生産 産学、各地で培養試験」
朝日新聞 2016年8月13日付「自然エネルギーを活用し町づくり 伊方3号機再稼働、矢野・梼原町長に聞く/高知県」
| - | 21:47 | comments(0) | trackbacks(0)
特徴的ながら小粒な印象も――ご当地エネルギーとりくみ事情(近畿編)



全国都道府県でのエネルギーのとりくみを紹介しています。今回は近畿地方編です。

滋賀県では、湖南市に新電力会社「こなんウルトラパワー」が2016年4月に設立されました。まずは3000キロワットを、市内の太陽光発電施設から調達するということです。

京都府では、日本海に面した地域での液化天然ガスのインフラストラクチャーの整備を府がめざしています。「北近畿エネルギーセキュリティ・インフラ整備研究会」が、舞鶴港を液化天然ガスの基地として整備する計画を検討中です。また、舞鶴市と兵庫県三田市にガスパイプラインを敷くことも検討しています。

大阪府では、府の事業として海水面における太陽光発電の実証実験をおこなっています。忠岡町と大阪市住之江区に、いかだのような足場に太陽電池を乗せ、発電量や塩害の影響などを調べるもの。府の事業です。

奈良県では、葛城市の「ラボラトリー・シティ構想」が注目を集めます。市とリコーが協定してとりくむもので、2015年10月から小水力の実証実験を開始。また、市内施設の照明や空調を自動制御するシステムの実証実験などもおこなわれています。

和歌山県では、和歌山市内で、下水道バイオマスからの電力をつくるシステムの実証研究がおこなわれています。2013年度の国土交通省下水道革新的技術実証事業のひとつで、和歌山市、日本下水道事業団、京都大学などが共同でとりくむもの。汚泥の脱水、エネルギーの回収、電気エネルギーへの変換といった技術の実証にとりくんでいます。

兵庫県では、神戸市の神戸空港島で、液化水素の運搬・貯蔵施設が建設される予定。川崎重工業、岩谷産業、電源開発が、新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素サプライチェーン構築実証事業」の助成により実証実験をおこないます。

大都市圏があるものの、近畿地方での各とりくみは、やや小粒な印象もあります。

参考資料
朝日新聞 2016年6月1日付「湖南市の新電力設立 滋賀県」
京都府「北近畿におけるエネルギー政策を国に提案」
http://www.pref.kyoto.jp/koho/dayori/201602/toku_01.html
大阪市「エネルギー関連の施策事業集(2016年度アクションプログラム)2」
http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000352/352036/2.pdf
奈良県葛城市・リコージャパン 2015年9月15日「葛城市とリコージャパン、地方創生に向けた連携協力に関する協定を締結」
https://www.ricoh.co.jp/sales/news/2015/pdf/20150915_1.pdf
国土交通省下水道革新的技術実証事業「下水道のバイオマスからの電力創造システムに関する技術実証研究」
http://www.nilim.go.jp/lab/ecg/bdash/pamphlet/h25_takuma.pdf
スマートジャパン 2016年2月3日付「水素サプライチェーンを2020年に神戸へ、発電用に大量の水素を輸送・貯蔵」
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1602/03/news049.html

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雪もエネルギー資源として利用――ご当地エネルギーとりくみ事情(甲信越・北陸・中部編)


各都道府県のエネルギーについてのとりくみを紹介しています。第3回は、甲信越、北陸、中部の県を一気に紹介します。

山梨県では、甲府市にある米倉山太陽光発電所に、超電導技術を使った円盤蓄電システムが2015年9月に完成しました。県や鉄道総合研究所の事業で、太陽光発電の電気エネルギーを、超電導磁気軸受けで浮かせたフライホイールの回転する運動エネルギーに変換して貯蔵します。

長野県では、小水力発電がさかんです。伊那市では、水田の広がる地域で伊那市春富土地改良区が運用する小水力発電書が2015年9月に開設し、2017年4月の発電開始をめざすなどしています。23キロメートルの用水路を利用します。

新潟県では、県沖の日本海の地下にメタンハイドレートが分布していることが確認されました。2015年には、県が「表層型メタンハイドレート研究会」を発足。商業利用への道を探っています。

富山県では、やはり小水力発電がさかんです。県内には30か所の小水力発電があり、県は「再生可能エネルギービジョン」を掲げ、2021年までに45箇所の整備をめざしています。

石川県では、下水汚泥から発生するメタンを発酵させて活用するモデルがつくられようとしています。金沢大学や土木研究所、日本下水道新技術機構や企業などが2013年度、「メタン活用石川モデル」をとりまとめました。下水処理場からの汚泥を脱水して集約し、またし尿などからのバイオマスを集め、メタンを発酵させることでガスのエネルギーを得ます。中能登町で2017年度の実機稼働をめざしています。

福井県では、雪を資源として考えるとりくみも。豪雪地域のある勝山市は、酒造会社、飲食店、市民団体、福井大学などと「市雪氷熱エネルギー利用促進協議会」をつくり、2015年1月から、雪室の実証実験をはじめています。雪冷房や雪中貯蔵の実用化をめざしています。

静岡県では、牧之原市が再生可能エネルギーの本格的導入を進めています。市は2012年から「エネルギータウン構想」をうちあげ、太陽光、風力、バイオガスなどのエネルギーを導入、または導入する予定です。背景には浜岡原子力発電所に対する反発もあるようです。

愛知県では、豊田市に「新エネルギー実証研究エリア」があります。常滑市から移設されたもの。県は、この実証研究エリアでの研究内容を募り、可搬式太陽追尾発電システム、小型バナジウムレドックスフロー電池、稲わら利活用バイオメタン生産などのシステムの実証実験が行われることになったことを2016年3月に発表しました。

岐阜県では、岐阜市内の集合住宅を使って、家庭用燃料電池と太陽光発電を組み合わせた場合の省エネルギー効果の実証実験が2012年よりおこなわれてきました。東邦ガス(愛知県)が手がけたもの。省エネルギーや二酸化炭素排出削減の効果が得られたといいます。

三重県では、NTNが桑名市内にある先端技術研究所に2016年4月「グリーンパワーパーク」が開所しました。同社が開発した垂直軸風車3基、小水力発電装置1基、風力と太陽光のハイブリッド街路灯3基を設置して、装置の実証実験をおこないます。

各県にはやはりご当地の風土を活かした特色的なとりくみがあります。しかし、行政の力の入れようには温度差もあるのかもしれません。

参考資料
産経新聞 2015年9月15日付「メタンハイドレート商業化へ 県の産学官研究会発足 新潟」
http://www.sankei.com/region/news/150915/rgn1509150058-n1.html
石川県「メタン活用いしかわモデルについて」
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/mizukankyo/gesui/ishikawamodel.html
ふくい まち・エネおこしネット協議会 2015年8月9日発表「勝山市雪氷熱エネルギー利用促進協議会」
http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kankyou/matiene/tiiki_d/fil/002.pdf
牧之原市 2012年7月「牧之原市エネルギータウン構想」
http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/bg/kurashi/ent/429.html
愛知県 2016年3月24日掲載「新エネルギー実証研究エリアの実証研究実施者を決定しました」
http://www.pref.aichi.jp/soshiki/san-kagi/eria-kettei.html
東邦ガス2014年3月18日「スマートエネルギー集合住宅実証試験の年間実績について」
https://www.pref.gifu.lg.jp/sangyo/shokogyo/seicho-sangyo/11353/nj-house-meeting.data/3_2-3.pdf
NTN 2016年4月12日発表「自然エネルギーの循環型モデル『グリーンパワーパーク』を設立」
http://www.ntn.co.jp/japan/news/press/news201600027.html
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自治体により地産地消型も総合型も――ご当地エネルギーとりくみ事情(関東編)


全国都道府県のエネルギーのとりくみを紹介しています。今回は関東地方。都市人口の多い地域に、エネルギーのとりくみはあるのでしょうか。

栃木県では、県が「スマートビレッジモデル形成事業」を2016年より実施しています。2011年から再生可能エネルギーの地産地消を目指して5年間おこなわれてきた「スマートビレッジモデル研究事業」を受けつぐもの。水力発電で得たエネルギーを使って電気自動車を走らせて花を配送したり、電気自動車の電気を田んぼのまわりの草刈りに使ったりしています。

群馬県では、川場村が東京都世田谷区と「川場村における自然エネルギー活用による発電事業に関する連携・協力協定」を2016年2月に締結しました。第三セクターのウッドビレッジ川場が運営する木材コンビナート施設でバイオマス発電をおこない、電気を世田谷区の公共施設や区民に購入してもらうしくみということです。

茨城県では、つくば国際戦略総合特区「藻類バイオマスエネルギーの実用化」が注目されています。2016年7月に筑波大学が設立した藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センターが主導する事業で、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムという藻類2種を組みあわせて、藻類バイオマス産業の創出をめざします。

埼玉県では、県はさまざまな再生可能エネルギーの導入を拡大していくことをうちあげています。秩父地域の森林などから得た木質を熱分解して生じさせる「バイオオイル」という黒褐色の液体をつくり、その熱エネルギーを産業分野に使うといったモデルを構想するなどしています。

東京都では、2020年の東京五輪・パラ五輪とからめたエネルギー計画があります。晴海の選手村は大会後に住宅と商業施設として整備される予定ですが、そこに水素ステーションが置かれ、水素と空気中の酸素を反応させる方式の燃料電池で発電して電力を供給する「東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画」をうちたてています。事業協力者は、東京ガスが代表の「晴海エネルギーパートナーチーム」となりました。

千葉県では、成田市と香取市が洸陽電機と連携して2016年7月、「成田香取エネルギー」という会社を設立しました。成田市内の清掃工場のごみ火力発電や、香取市内の太陽光発電施設などでつくる電気を、固定価格買取制度より高く買い、学校など公共施設に安く売るということです。自治体どうしが連携して電力会社を設立するのは全国初。

神奈川県では、県が「かながわスマートエネルギー計画」をうちたてています。エネルギー・マネジメント・システムの導入を進めるため、鎌倉市玉縄地域や松田町がビジネスモデルとなることが2015年5月に決まりました。

自治体でのとりくみとしては、エネルギーの地産地消をめざすものから、総合的なものまでさまざまです。

参考資料
「スマートビレッジモデル研究事業からスマートビレッジモデル形成事業へ」『栃木県スマートビレッジ通信』2016年8月号
http://www.pref.tochigi.lg.jp/g02/documents/sumatodai5gou.pdf
東京新聞 2016年2月19日付「木質バイオマス発電事業 川場村、東京・世田谷区と協定」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201602/CK2016021902000186.html
筑波大学藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター「つくば国際戦略総合特区『藻類バイオマスエネルギーの実用化』
http://www.abes.tsukuba.ac.jp/project
東京都 2016年3月31日発表「東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画について」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/03/70q3v100.htm
建設通信新聞 2016年7月14日付「東京ガスグループに決定/東京五輪選手村エネルギー計画検討事業協力者 東京都」
http://www.kensetsunews.com/?p=69674
成田市・香取市・洸陽電機 2016年7月5日発表「全国初! 2市で取り組む地域電力会社誕生!」
https://www.city.narita.chiba.jp/DAT/000127620.pdf
神奈川県 2015年5月28日発表「平成27年度 地域課題対応型EMSサービス実証事業のビジネスモデルの決定について」
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/770767.pdf
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りんご、温泉……地元資源で発電――ご当地エネルギーとりくみ事情(北海道・東北編)


8月は高校野球の甲子園大会やお盆休みの帰省などもあり、なにかと「ご当地」への意識を高めさせる月です。そこで日本全国、北から南まで各地でおこなわれているエネルギーにかかわるとりくみを見ていきます。第1回目は北海道・東北です。

北海道では、北海道電力が「大型蓄電システム実証事業」をおこなっています。経済産業省が新エネルギー導入促進協議会を通じて募集した「大型蓄電システム緊急実証事業」に応募して採択されたもので、住友電気工業との共同事業です。2015年12月には安平町の南安平変電所内に大型蓄電施設が完成し、実証試験を行っています。

つぎに青森県では、津軽バイオマスエナジーという会社が、木質バイオマス発電の施設を平川市に建設し、2015年12月から売電をはじめました。津軽地方の間伐材や、りんごの剪定枝を燃料にバイオマス発電をするというご当地ならではの発電方法です。

おとなりの岩手県もみどりが豊富な県。野田バイオパワーJPという会社が、木質チップを燃料とするバイオマス発電所を野田町に建設し、2016年8月から商業運転をはじめました。同社や新エネルギー開発などの出資する会社です。

いっぽう秋田県では、大林組が「秋田県北部洋上風力発電事業」を計画し、県に協力を要請したと伝えられています。能代市、三種町、男鹿市沖にまたがる国内最大規模の洋上風力発電で、120〜150メートルの大きさの大型風車を91基、建てるという計画です。2023年の運転開始を目指しています。

洋上風力のとりくみが一歩進んでいるのは福島県。丸紅や三菱重工業などの民間企業と東京大学などからなるコンソーシアムが、「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」を2011年から進めています。浮体式の洋上風力で、すでに7メガワットの出力の1基がつくられ、2016年7月にはもう1基が兵庫県の洲本港から運びこまれています。

温泉も日本各地にある資源です。山形県では、山形大学と小野川源泉協同組合、それに神奈川県横浜市のアネスト岩田という企業が共同で、温泉の熱を発電に利用する実証試験を、米沢市の小野川温泉ではじめました。温泉の水を、融雪や農業にも使うことも視野に入れています。

やはり、北海道や東北では、北国の自然を活かした事業やとりくみが注目されています。つづく。

参考資料
北海道電力・住友電気工業 2016年7月発表「南早来変電所 大型蓄電システム実証事業について」
http://www.hepco.co.jp/energy/recyclable_energy/large_accumulator/pdf/demo_poject.pdf
津軽バイオマスエナジー「バイオマス発電スキーム」
http://www.tsugaru-be.jp/business.html
朝日新聞 2016年3月24日付「国内最大級の洋上風力発電 大林組が能代・三種・男鹿沖で計画」
福島洋上風力コンソーシアム「プロジェクト概要」
http://www.fukushima-forward.jp/gaiyou/index.html
朝日新聞 2016年7月3日付「洋上風車、洲本発福島行き」
山形大学 2015年11月17日掲載「本学等の共同研究で小野川温泉街に温泉発電所が開所しました(11/8)」
http://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/info/20151117_02/
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