科学技術のアネクドート

お地蔵に塩
東京都千代田区にはお寺がほとんどありません。説によると、江戸幕府が江戸城の外濠をつくったとき、濠より内側にあった寺をすべて外側に移したため、濠より内側にあるいまの千代田区には寺がほぼないとか。

すくない千代田区の寺のなかでも、麹町にある心法寺は東京三十三観音霊場のひとつに数えられるお寺。1590(天正18)年、三河国から徳川家康とともに江戸にきた然翁聖山和尚が開いたとされます。徳川家康に縁があるから濠の内側でも残されたということでしょうか。



境内はひっそりとしているものの、ひときわ目を引くのが「塩地蔵尊」。二体のお地蔵さんのからだに塩が塗られています。



塗られています。頭にてんこ盛り。がびがびです。

一般的にお地蔵さんは「地蔵菩薩」といいます。お釈迦さまが死んでから弥勒仏が現れるまで56億7000万年かかるため、その仏のいない時期に地蔵菩薩が人びとを救済するとされます。

地蔵に塩を供えると、自分や家族の病気が治ると伝えられています。寺の案内には「地蔵尊のお体に塩をぬってお参りをすることから塩地蔵尊と称されており、墓地内の『六地蔵』と並び二百年以上前の麹町の史料にも記されております」とあります。

やはり「塩をお供えする」という行為を具現化するとなると、塩を地蔵さんのからだに塗りつけることになるのでしょう。そのせいでしょうか、お地蔵さんの顔はすり減ってのっぺらぼうになっているようにも見えます。

参考資料
千代田区観光協会「心法寺」
http://www.kanko-chiyoda.jp/tabid/900/Default.aspx
東京都寺社案内「心法寺|千代田区麹町にある浄土宗寺院」
https://tesshow.jp/chiyoda/temple_kojimachi_shinpo.html
日本人名大辞典+Plus「弥勒菩薩」
https://kotobank.jp/word/弥勒菩薩-640508
日本ソルトマイスター協会「塩地蔵」
http://www.sal-mei.com/archives/1033
| - | 14:20 | comments(0) | trackbacks(0)
「わが家の裏にはごめん」はだれにも生じうる

東京都港区が児童相談所「子ども家庭総合支援センター」(仮)の整備について(2018年)12月14日(金)と15日(土)、区民などに説明会を開いたところ、施設を置くことに反対の声を挙げた区民がいたということで話題になっています。



建設予定地は、くすのき通りに面したところ。地下鉄の駅の地図を見ると、まわりをカタカナやアルファベットで表記された店がとり囲んでいることがわかります。



現場は更地の状態。地価の高い南青山では、広い土地が充てられるといってよいでしょう。



金網には、この土地が支援センターの用地であり、港区が所有・管理していることを示す看板と、話題になった説明会を案内する看板が掲げられています。

児童相談所は、児童の生活全般について、保護者や学校からの相談に応じ、必要な指導や措置をとることを役割とする施設です。根拠となる法律は、児童が健やかに生まれ育つことをめざした「児童福祉法」です。

自分の家族以外の子どもが健やかに過ごすことをよいことと思うか、また、そのための施設があることは大切だと思うか、と聞かれれば多くの人は「はい」「はい」と答えるでしょう。

しかし、その施設が自分の住んでいる地域につくられることを受けいれられるかと聞かれれば「はい」と答える人は減ってしまうでしょう。社会的に大切だという考えるより、自分の暮らしに影響するのではという不安を抱く人が多くなるからです。

「わが家の裏にそうした施設をつくるのはごめんこうむりたい」という感情や態度は、NIMBYとよばれることがあります。“Not In My BackYard”の頭文字などをとったものです。今回の「反対の声」は典型的なNIMBYであるという見かたもあります。

ただし、NINBYについては、港区の一部の住民でなくても、人であれば起こりうる感情です。それが明らかに反対表明する程度のものか、心のなかで不満を抱く程度のものかはべつとしても。

今回の「反対の声」は、お金もちが多いと見なされがちな港区民(の一部の人)が発言していること、さらにその発言が「土地の価値を下げないでほしい」「まちのブランドイメージが傷つく」などの明らかな反対表明であることなどから、社会の大多数が反感をもったようです。

しかし、「あまりに利己的な人たちだ」「高慢な態度だ」と批判しているだけでは、反対住民を改心させることはむずかしそうです。

当事者になればだれの心にもNIMBYは生じうるものであるということを前提にして、その影響をいかに小さくするかを考えていくことが、より現実に即した対処法となります。

参考資料
日テレNews24 2018年12月17日付「南青山に児相…反発『区民を愚弄するのか』
http://www.news24.jp/articles/2018/12/17/07412022.html
厚生労働省「児童相談所の概要」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01-01.html

| - | 22:43 | comments(0) | trackbacks(0)
NHK午前3時48分の“あれ“は「インターミッション」という番組


テレビジョンやラジオなどの放送は「視よう」「聴こう」と思わなくても、スイッチを入れっぱなしにしていれば聞こえてくるものです。そして、なにとはなしにでも、幾度となく聞いていれば記憶に残るものです。

夜更かしをしたり、夜型の生活を送ったりしている人にとって「NHKのあれ」はそのひとつではないでしょうか。

午前3時48分から、若葉、蝶、滝、広葉樹、落ち葉、樹氷といった映像が映されます。そして音楽は、崇高な感じも抱かせる歌なしの器楽曲。

ほどなくして、3時49分になると、テレビ画面は日の丸のはためく映像に変わり、「パパパパーン」と、これからなにかが始まるような感じを抱かせるファンファーレ調の曲になります。

さらにテレビ画面は、青色の背景で「JOAK-DTV NHK 東京デジタルビジョン」の文字が映されたものに変わり、NHKの渡邊あゆみアナウンサーが「JOAK-DTV NHK東京総合デジタルテレビジョンです」と、呼びだし符号を読みあげます。

ここまでの展開は2分。何度も耳に入ってくると、やはり脳から離れなくなります。

これらの映像や曲がどんなものか。インターネットでは調べられています。

まず、午前3時48分からの1分強の映像もひとつの「番組」で、「インターミッション」とよばれるもの。そして、映されている自然の風景は白神山地のブナ林のようです。さらに、器楽曲についてもわかっており、「2002(トゥーサウザンドトゥー)」という音楽家による「Suddenly Yours(サドンリー・ユアーズ)」という曲とのこと。

ちなみに、過去には「インターミッション」に、子犬たちがたわむれる映像が流れていたことがあります。このときの背景曲も、何度も聞こえてくると脳から離れがたくなるもの。クラリネットのどこか麗らかで眠たげな曲調です。こちらはジャズクラリネット奏者の藤家虹二(1933-2011)による「恋わずらい NUTTY PINE」という曲とのこと。

非公式には、これらの映像で映される自然や子犬は、それぞれ「調整森」「調整犬」とよばれているそうです。

なお、日の丸のはためく映像に切りかわった時点で、すでに「インターミッション」の番組は終わり、「区切り映像」という番組になっています。つまり、日の丸のファンファーレ背景曲「パパパパーン」は「Suddenly Yours」とは別ものです。

しかし、もはやこの映像を聞きなれている人は、一体化した音楽として認識しているのではないでしょうか。

参考資料
NHKアーカイブズプレゼンツ「番組タイムマシーン」
https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/timemachine/index.html
ウィキペディア「インターミッション(テレビ番組)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/インターミッション_(テレビ番組)
ウィキペディア「藤家虹二」
https://ja.wikipedia.org/wiki/藤家虹二
Youtube「Suddenly yours - 2002」
https://www.youtube.com/watch?v=jQn4U-IxDL8
ウィキペディア「渡邊あゆみ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/渡邊あゆみ
| - | 17:10 | comments(0) | trackbacks(0)
「交付金」を「補助金」はふくむ


原稿などのものを書くときは、「おなじことばで表現できるなら統一すべし」という原則があります。おなじ物事を指しているのに、異なることばがいくつか使われたら、読み手が「おなじものではない」と考えてしまうおそれがあるからです。

「交付金」と「補助金」についてはどうでしょうか。

たとえば新聞記事では、「改正入管法の施行 外国人受け入れで全国に交付金」のように「交付金」が使われている記事も、「特別養護老人ホームとは 自治体の補助金で建設」のように「補助金」が使われている記事もあります。

国語辞典にも当たってみます。

「補助金」については、「1 不足を補うために出す金銭」という一般的な意味のつぎに、「2 国または地方公共団体が、特定の事業・産業や研究の育成・助長など行政上の目的・効果を達成するために、公共団体・企業・私人などに交付する金銭。補給金・助成金・奨励金・交付金などの名称がある」とあります。

「交付金」については、「国または地方公共団体が特定の目的をもって交付する金銭。事業や事務を他の者に行わせるときに、その財源として交付する場合が多いが、補償・助成を目的とすることもある」とあります。

このふたつからすると、「補助金」を指すときの名称のひとつに「交付金」がある、といった関係であることがうかがえます。

さらに、図書館利用者の問いあわせに司書が答える例として、つぎのような説明が見られます。
_____

『現代法辞典』p919に
補助金とは「国又は地方公共団体が、一定の事業や行為を促進するために奨励的に交付する金銭をいう。助成金、奨励金、負担金、交付金等の名称で呼ばれることもある。」
『経済学大辞典1 第2版』p710に
「中央政府(国)から地方政府への交付金や負担金などの支出金も広く補助金とよび、」
ともあり、「補助金」に「交付金」も含まれるとの広い定義もあるようだ。
_____

これらからすると、迷ったときには「補助金」を使うほうが無難とはいえそうです。ただし、具体的な政府の制度などの名前に「交付金」がついているとすれば、やはりそれについては「交付金」を使うほうが、読者の混乱を招くおそれを減らせそうです。

参考資料
毎日新聞 2018年12月16日付「改正入管法の施行 外国人受け入れで全国に交付金」
https://mainichi.jp/articles/20181216/k00/00m/010/135000c
日本経済新聞 2018年12月16日付「特別養護老人ホームとは 自治体の補助金で建設」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38506760U8A201C1SHA000/
デジタル大辞泉「交付金」
https://kotobank.jp/word/交付金-170059
デジタル大辞泉「補助金」
https://kotobank.jp/word/補助金-133089
レファレンス協同データベース「交付金と補助金の違いは何か」
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000070138
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
「雪の壁」を街で疑似体験

立山黒部アルペンルート
写真作者:tsuda

富山県と長野県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」は「雪の壁」で知られています。この道路は1年のうち長いこと雪により閉鎖していますが、4月から5月に開通すると道路の部分だけ雪がとりのぞかれます。そのため、通行者たちは左側にも右側にも「雪の壁」を見るわけです。迫力のある光景です。

立山黒部アルペンルートに「雪の壁」を見にいくのはなかなかたいへんですが、街のなかでも、ややそれに近い迫力感、あるいは圧迫感を得られるところはあります。

地下鉄などの駅では、従来、階段のところに、上りエスカレーターか下りエスカレーターが1本だけ置かれているものでした。階段の角度とエスカレーターの角度は微妙にちがうため、駅によっては階段を上っていくにつれて、エスカレーターとの仕切壁が高くなっていくことがあります。

さて、近ごろはつぎつぎと、階段と1本のエスカレーターがあるところに、もう1本のエスカレーターがつくられるようになりました。これで「上りエスカレーター|階段|下りエスカレーター」といった構図に。

新たに1本の下りまたは上りエスカレーターをとりつけても、階段とエスカレーターに使える全体の幅が広がるわけではありません。犠牲になるのは階段の幅です。

すると、写真のように、階段の左側も右側もエスカレーターとの仕切壁が高くそびえることに。


都営地下鉄新宿線の小川町駅

エスカレーターが上りも下りもあるので、健康を気にしている人や、エスカレーターは使わないと決めている人ぐらいしか階段を使いません。

加えて「雪の壁」を懐かしみたい人や、疑似体験したい人も、こうした階段を上り下りすると、ちょっとだけ目的達成に近づくかもしれません。
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
「させない原則」は、しうるから


写真作者:Jesper Rønn-Jensen

政府の「人間中心のAI(人工知能)社会原則検討会議」が、(2018年)12月13日(木)の第8回会議で、人工知能の活用に関する7つの「基本原則」を決めたということです。各新聞社などが伝えています。

同会議のサイトによると、この会議は「人工知能をより良い形で社会実装し共有するための基本原則となる人間中心の人工知能社会原則を策定し、同原則をG7(先進7か国蔵相・中央銀行総裁会議)及びOECD(経済協力開発機構)等の国際的な議論に供するため、人工知能技術並びに人工知能の中長期的な研究開発及び利活用等に当たって考慮すべき倫理等に関する基本原則について、産学民官のマルチステークホルダーによる幅広い視野からの調査・検討を行うことを目的とする」もの。

人工知能よ、どうか短く要約してください。

伝えられている「7つの原則」はつぎのものです。

 1 「人間中心」基本的人権を侵さない
 2 「教育・リテラシー」正しい利用のための教育環境提供
 3 「プライバシー保護」望まない形での個人情報流出防止
 4 「セキュリティ確保」安全上の取り組み推進
 5 「公正競争確保」特定の国・企業に人工知能の資源集中させず
 6 「公平性、説明責任、透明性」人工知能利用で国籍や性別などの差別をつくらせない
 7 「イノベーション」国境を越えたデータ利用へ環境整備

人工知能にかぎった話ではないものの、こうした原則がつくられるということは、原則に反することが生じうることを意味します。原則に反することが生じえなければ、原則をつくる必要はほぼありません。

とりわけ、「させない」や「防ぐ」といった表現が使われている原則については、その逆の状況が起きうることを意味します。たとえば、基本的人権を侵すような人工知能の使われかたがされうるし、人工知能の使いかたによって個人情報が流出しうるわけです。また、特定の国や企業に資源が集中しうるし、差別がつくられうるわけです。

人工知能をめぐっては、ゆくゆく人が制御できなくなるほどに暴走し、人を支配するようになるのではないかと心配する人もいます。いっぽう、この原則は、人工知能「活用」のためのもの。つまり、人間が人工知能をどう使うかについての原則です。

「人工知能がみずから暴走し、人を支配して滅亡させる」といった悲観論は、空想科学小説じみているからか、よく話題にのぼります。

しかし「人工知能を悪用する人が人工知能を暴走させ、人を支配させて滅亡させる」といった話や「人工知能を悪用する人がほかの人びとを支配し、殺戮する」といった話は、さほど話題にはなりません。これらも、人工知能をもってしまった人間が生みだす危険です。

参考資料
内閣府「人間中心のAI社会原則検討会議」
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/humanai/index.html
ITmedia NEWS 2018年12月14日付「政府、『人間中心』AIの7原則 国際ルール作り主導へ」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/14/news067.html
| - | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0)
どちらも「オーケーです」の意味でも出どころは別々


メールなどの返事に「オーケーです」といった意味あいを伝えるとき、どのように伝えるでしょうか。たとえば、自分のほうからA案とB案を示して、相手から「B案のほうで進めたいのですが」とメールがきたとき、どう返事するでしょうか。

「B案で構いません」。あるいは「B案で結構です」。

こうした返事をする人はいるでしょう。

「構いません」のほうがやや愛想がなく、とくに目上の人には使うべきではないともされます。

ただ、そうした敬いの度はおいておいて「B案で構いません」でも「B案で結構です」でも、「B案でオーケーです」といった意味で伝わりはします。

そもそも、おなじ「構」の字が入っていながらも、「構わない」のほうは否定の意味の「ない」がつづくのに対し、「結構です」のほうは否定の意味の字がふくまれません。それでいて、「構わない」も「結構です」も「オーケーです」の意味になるわけです。奥ぶかい、というか複雑です。

「構いません」は、「気にかけて規制された状態になる」といった語感の「構う」を「ない」で打ちけすので、「構わない」は「私が気にかけるようなことはありませんよ。オーケーです」といった語感になりそうです。

いっぽう「結構」は、もともと漢語では、建てものを組みたてたり、文を構えたりするといった語感からきているといいます。「組み立て。構え。構成」といった意味を第一義にしている国語辞典もあります。

そして、そうした語感をもつ「結構」が、日本に入って「計画」や「準備」といった語感の名詞となったとのこと。

さらに、その「計画」や「準備」について、日本人は「立派だ」「よろしい」といった語感を抱くようになったといいます。「計画だ」が「立派だ」になったことに飛躍も感じられそうですが。

こうしたことで、「組みたて」や「構え」からはじまった「結構」が、「よろしい。オーケーです」といった語感にまでなったわけです。

おなじ「構」の字が入っていて、ともに「オーケーです」の意味で通じても、「構いません」と「結構です」はなりたちが大きくちがうのですね。

なお、深掘りすれば、「B案で結構です」という返事は、自分が出した案について「立派です」と言っているようなことになります。ことばにものすごく厳密で敏感な人は、「B案で結構です」と返事がきたら「この人、自画自賛してるわ」と反応するでしょうか……。

参考資料
デジタル大辞泉「かま・う」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/44521/meaning/m0u/
デジタル大辞泉「結構」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/68255/meaning/m0u/結構/
語源由来辞典「結構」
http://gogen-allguide.com/ke/kekkou.html
| - | 23:46 | comments(0) | trackbacks(0)
人のもつ「時間尺」は人によりけり

写真作者:brewbooks

「時間尺」あるいは「タイムスケール」とよばれるものは、人それぞれのなかにもあるものではないでしょうか。

まず、現在から未来にかけての時間尺が人びとのなかにあります。「いまを生きるのに精一杯」という人の時間尺は「1日分」あるかないかでしょう。「東京五輪が開かれるまでにやらなければ」という予定のある人の時間尺は「1年」とか「2年」とかいったものになりそうです。

人がもつ時間尺は、現在から未来にかけての時間によってもたらされるのみではありません。現在から過去にかけての時間によってももたらされます。

たとえば、1998年生まれの20歳の人は、とりわけ歴史などに深い興味や知識をもっていなければ、長くて「十数年」の時間尺をもっているぐらいかもしれません。おもに生きてきたなかでの経験や体験の記憶が、その20歳の人の時間尺を定めるからです。

いっぽう、現代史を専攻している研究者は、自分が生まれる前の第二次世界大戦直後から現在に至るまでの歴史に詳しいでしょうから、数十年分の時間尺をもっているかもしれません。

林学を専攻している研究者は、森の木々の樹齢などにも目を向けていて、数百年前から生きている木のことに詳しいかもしれません。その人は数百年前から現在にいたるまでの時間尺をもっているかもしれません。

宇宙論を専攻している研究者は、宇宙が誕生したときのできごとであるインフレーションやビッグバンなどにも目を向けていて、それが現在の宇宙にどうつながったかを詳しく学んでいることでしょう。その人は、100億年以上前から現在にいたるまでの時間尺をもっているかもしれません。

十数年分ぐらいの時間尺をもっている人、数十年分ぐらいの時間尺をもっている人、数百年分ぐらいの時間尺をもっている人、100億年以上の時間尺をもっている人……。感覚の話なので、明確でも具体的でもありませんが、いろいろな時間尺をもっている人がいるわけです。それぞれの人が抱く、1日、1年、10年といった時間の長さに対する感じかたも、大きくちがうでしょう。

「人はさまざまな時間尺をもっている」という点も、いまよくいわれている「人の多様性」の要素のひとつになりうるのではないでしょうか。
| - | 19:31 | comments(0) | trackbacks(0)
2017年から2018年にかけての冬は寒かった



2018年も12月中旬になり、ようやく冬の寒さが全国的に訪れるようになりました。日本海側では大雪となっている地域もあります。

冬は毎年やってきます。昨期の冬はどんな冬だったでしょう。寒かったでしょうか、暖かったでしょうか。雨や雪は多かったでしょうか。

多くの人は、1年前の気候がどうだったかといったことを忘れがちです。2年前、3年前……となればなおさら……。

情報によると、2017年から2018年にかけての冬は「かなり寒かった」といえます。とくに西日本では12月、1月、さらに2月上旬ごろにかけて、平均気温を3度以上も下まわる日が多くありました。

西日本ほどではないものの、東日本も寒さがつづきました。ここ20年ほど、東京で「冬日」つまり氷点下を記録することはめったにありませんでした。しかし、2017年から2018年にかけては冬日が22日もありました。これほどの多さは1983年から1984年にかけての32回以来。とくに1月22日から29日にかけて、東京では8日連続の氷点下となりました。1月下旬、名古屋でも9日連続、大阪でも5日連続、氷点下でしたが。

どうでしょうか。だんだんと昨期の記憶がよみがえってきたでしょうか。

今期はどうなるでしょうか。2018年から2019年にかけての冬は、東日本から西日本では暖冬になる可能性が高いという予報を気象庁は出しています。今期、ペルー沖の海水温が南東貿易風によって上昇する「エルニーニョ」が発生していることを踏まえての予報のようです。

とはいえ、実際に暖冬になったとしても、多くの人は来年、再来年と時が経てば、「2018年から2019年にかけての気候はどうだったけか。暖かかったんだっけ、寒かったんだっけ」と忘れてしまうのではないでしょうか。毎年、冬は来て、年によっては暖かい傾向はあっても、基本的には寒いものですし。

寒さや暑さといったものは、「初詣でコートを着なくてもよかった」とか、なにかべつの体験といっしょでなければ、なかなか留まりづらいものかもしれません。

参考資料
気象庁「地域平均気温経過図」
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/db/longfcst/regtemp.html
hana’s 2018年10月28日「2017年12月〜2018年2月 冬の寒さまとめ!平年より低温、西日本は32年ぶりの寒さ!」
https://hanasjoho.com/archives/13635​
気象庁天気相談所作成「東京における日最低気温0℃未満(冬日)の日数」
https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/kiroku/kiroku/data/60.htm
気象庁 2018年12月10日発表「エルニーニョ監視速報(No.315) 」
https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/elnino/kanshi_joho/kanshi_joho1.html

| - | 23:20 | comments(0) | trackbacks(0)
東京の鉄道「東西強・南北弱」の傾向これからも
東京にはいくつもの鉄道が走っています。それら鉄道の全体的な傾向としてよくいわれるのが、「東西方向の移動はしやすいが、南北方向の移動はしにくい」といったものです。つまり、東と西を結ぶ路線は多くあるのに対し、南と北を結ぶ路線はさほど多くないというわけです。

東と西を結ぶ路線といえるのは、JR中央総武線、JR京葉線、東京メトロ東西線、都営地下鉄新宿線、西武池袋線、西武新宿線、京王本線、小田急本線、東急東横線、東急田園都市線といった路線でしょうか。

いっぽう、南と北を結ぶ路線といえるのは、JR京浜東北線、JR埼京線、東京メトロ日比谷線、同南北線、都営地下鉄浅草線、同三田線、東武亀戸線、多摩モノレールといったところ。東西を結ぶ路線にくらべると、本数はほぼおなじものの、とくに都心と郊外を結ぶ路線のすくなさが目立ちます。

そうしたなか、1990年代、南と北を結ぶ新たな路線として期待され、開業したのが東京メトロ南北線です。


東京メトロ南北線
写真作者:Jet-0

しかし、当初の利用客数の見込みに対して、全線開業したときの実際の利用客数はおよそ半分にとどまったとのこと。「南と北を結ぶ路線があると便利」と考えられているものの、実際に鉄道を走らせるとなると、利用客数は伸びなやむといった状況もあるようです。あれば便利だと感じる人はいるけれど、そういう人は多いわけではない、といったところでしょうか。

そうなると、期待がかかるのは鉄道よりむしろバスということになるでしょうか。

たとえば、JR中央線、西武新宿線、西武池袋線の「三」の字を、南北につなぐバス路線は、かなり充実しています。乗りかえもありえますが、おもな経路としては、荻窪-上井草-石神井公園、吉祥寺-武蔵関-大泉学園、武蔵境-田無-ひばりヶ丘、武蔵小金井-花小金井-清瀬といったもの。

これらのバス路線は、いずれも郊外の駅どうしをつなぐもの。郊外駅から郊外駅までを鉄道でつなごうとしても、採算に合わないことが確実のようです。

これからも、鉄道はどちらかといえば東西を結ぶ傾向がつづきそうです。それとともに、南北方向の移動するのに難のある部分は、バスが担うという傾向もつづくことになりそうです。

参考資料
ウィキペディア「東京メトロ南北線」
https://ja.wikipedia.org/wiki/東京メトロ南北線
東洋経済Online 2016年10月2日付「都内を『タテ移動』で使えるバス路線はこれだ」
https://toyokeizai.net/articles/-/138379
教えて! goo「東京西部の南北の移動が不便ですが、鉄道の開発はないでしょうか?」
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9443617.html
| - | 23:44 | comments(0) | trackbacks(0)
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